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2026.07.06 Mon UP

実測と居住者アンケートからつくる室内環境ラベリング
―「快適な住宅室内空間」を見える化する新しい評価のかたち―

株式会社日本住宅保証検査機構
旭化成建材株式会社
東京理科大学

このたび、株式会社 日本住宅保証検査機構(代表取締役社長:角 直樹、本社:東京都千代田区、愛称/JIO(ジオ))、旭化成建材株式会社(代表取締役社長:前田 栄作、本社:東京都千代田区)および東京理科大学(学長:石川 正俊、研究責任者:高瀬 幸造 創域理工学部 建築学科 准教授、本部:東京都新宿区)は、「良質な室内環境の普及に向けた環境構築を目指した室内環境ラベリングサービスの開発」に関する共同研究について、研究成果を取りまとめました。

背景

地球温暖化、異常気象、超高齢化社会の加速などの社会環境の変化により、最も長い時間を過ごす住宅内において、ヒートショックや熱中症などの健康被害が増加しており、人の生命が奪われるケースも発生しております。また、多様な働き方やワークライフバランスの向上等、生活者がより安心して快適に生活できる住環境の実現に向け、これまでとは異なるアプローチにより、住まいにまつわるこれらの課題を解決する仕組みづくりが必要と考えております。

目的

本研究は、住宅内の実測や居住者へのアンケートを通じて、新たな視点で住宅の性能と実際の居住環境の関係を明らかにし、室内環境がもたらす価値(快適、健康、生活者の満足度向上、予防医療)を表現する指標を検討し、良質な住宅を供給する事業者が評価される仕組みの構築、日本の住まいにおける快適な暮らしの実現を目指しました。

実施概要

  1. 室内実測
    • 測定項目:室内温度、相対湿度、CO2濃度
    • 測定期間:夏期7日間(2025年7月~9月)、冬期5日間(2025年12月~2026年1月)
    • 測定場所:リビング、主寝室、脱衣室
    • サンプル数:21(戸建住宅:12、共同住宅:9)
  2. 居住者アンケート
    • 暖冷房・換気設備の使用状況
    • 設備の使用における「我慢」の有無、理由
    • 暑さ・寒さ・温度・空気質の関する主観評価
    • 「CASBEE住まいの健康チェックリスト」の活用
  3. 室内環境ラベリングの検討
    • 温湿度・CO2濃度の推奨値を基に点数化
    • 夏期・冬期それぞれの評価軸を設定し評価
    • 実測日数の違いによる影響を比較(夏期:7日 冬期:5日と3日での比較)

結果概要(実測・アンケート・ラベリングによる評価)

室内環境の実測データと居住者アンケートを組み合わせた分析を行い、同じUA・ηAC 値で判断した断熱性能等級(以降、「断熱性能等級」とする)でも住まい方や設備の使用状況などの要因によって、快適性は異なる傾向が伺えました。
従来の住宅性能表示制度だけでは捉えきれない実際の住まいの快適性や空気環境の実態について、複数の知見が得られました。
(温度 夏期:23℃~28℃ 冬期:20℃~27℃、湿度:40%~60%、CO2濃度:0ppm~1000ppmを本研究では快適の範囲とした。)

  1. 室内温熱環境(温度)について
    • 等級5または等級6の戸建住宅では、空調未使用時でも夏は涼しく、冬は暖かさを保つ傾向にあった。
    • 等級4以下の戸建住宅では、室温の日変動が大きく、夜間や空調未使用時の時間帯において不安定になるケースが多い一方、等級5以上の戸建住宅では、緩やかに安定していた。
    • 等級5の戸建住宅であっても、住まい方や建物条件によって、必ずしも快適な室温とならない事例が見られた。
    • 共同住宅では断熱性能等級と室内環境・主観評価の良し悪しの明確な傾向はみられなかった。
    (参考)代表住戸における時間軸から見た平均温度推移
    a.夏期
    a.夏期
    b.冬期
    b.冬期
  2. 湿度について
    • 夏期:等級4以下の戸建住宅で絶対湿度が高くなる傾向であった。
    • 冬期:戸建住宅の相対湿度に差がある場合において、絶対湿度の差は微差であり、断熱性能等級や換気設備の影響は見られなかった。また、同様の湿度分布においても、主観評価が分かれる事例も確認された。
    • 共同住宅では断熱性能等級と室内環境・主観評価の良し悪しの明確な傾向はみられなかった。
    (参考)断熱性能等級別「リビングFL+1.1m」相対湿度
    (参考)断熱性能等級別「リビングFL+1.1m」相対湿度
  3. CO2濃度・空気環境について
    • 冬期には、等級4以下の戸建住宅でCO2濃度が高くなる傾向が確認された。
    • 換気設備の運用(給気口の閉鎖、窓開け習慣の有無など)が、空気質に大きく影響している可能性が示唆された。
    • 共同住宅では断熱性能等級と室内環境・主観評価の良し悪しの明確な傾向はみられなかった。
    (参考)夏期・冬期におけるCO2濃度・ヒートマップ
    (参考)夏期・冬期におけるCO2濃度・ヒートマップ
  4. 暮らし方・アンケート結果
    • 等級4以下の戸建住宅では、光熱費への配慮から、暑さや寒さを感じても暖冷房の使用を我慢する傾向が見られた。
    • 等級5以上の戸建住宅では、快適性を優先して暖冷房を長時間・連続的に使用する傾向があり、「我慢しない暮らし方」が実現されていることを確認した。
    (参考)夏期エアコン 平日運転スケジュール
    (参考)夏期エアコン 平日運転スケジュール
    (参考)冬期エアコン 平日運転スケジュール
    (参考)冬期エアコン 平日運転スケジュール
  5. ラベリング結果
    • 実測日数が異なっても、判定結果に大きな差は生じないことを確認した。
      (夏期:7日 冬期:5日と3日での比較)
    • 「CASBEE住まいの健康チェックリスト」では、戸建住宅は断熱性能等級が上がると点数も上がる傾向が見られた。一方、共同住宅は断熱性能等級の差が明確に現れなかった。
    • 項目ごとの重みづけの見直しが今後の課題と考えられる。
    (参考)断熱性能等級別 ラベリング得点
        ※ ラベリング得点は140点満点で評価をしています。
    (参考)断熱性能等級別 ラベリング得点
    なお、本ラベリングにおける評価区分の閾値は現時点での暫定的な設定であり、今後のデータ蓄積や検証を踏まえ、ラベリング手法や基準の見直しを継続的に行っていく予定です。

考察と今後の展望

  1. 考察
    本研究から、「断熱性能等級が高い=必ずしも快適」とは限らず、同じ断熱性能等級でも住まい方や建物条件、設備運用が室内環境に大きな影響を与えることが示され、住宅性能表示制度を補完する視点が必要である事が示唆されました。
    断熱性能等級が高い住宅において、空気温度が比較的高い場合でも「暑さを感じにくい」ケースがあり、壁や窓などの周囲の表面温度が体感に影響を及ぼす放射環境が快適性に寄与している可能性が考えられます。
    暮らし方アンケート結果より、断熱性能等級が高い住宅ほど光熱費を過度に意識することなく快適性を優先していると考えられます。
  2. 今後に向けた課題
    • 放射温度の実測を行い、空気温度だけでは捉えきれない「体感」との関係性の明確化
    • 快適性と省エネルギーの因果関係の検証
    • 多くの住宅が同等の判定に集中し、住宅ごとの室内環境の違いを十分に表現できない、高断熱住戸のサンプルを増やして、その室内環境の実態を把握する
    • 住宅性能表示制度と実際の居住環境との関係性の明確化
  3. 今後の研究テーマ(上記②と一対一対応)
    • 放射温度の実測を行い、空気温度だけでは捉えきれない「体感」との関係性の明確化
    • エネルギー消費量や光熱費と室内環境の実測結果の関係性の分析
    • 居住者への影響が大きい要素に重み付けを行うなど、室内環境の指標の改善
    • 「住宅性能表示制度+実態性能」による新たなラベリングの仕組みの検討

会社概要

旭化成建材株式会社

所在地 :
東京都千代田区神田神保町1-105(神保町三井ビルディング)
代表者 :
代表取締役 前田 栄作
事業概要:
ALC事業、構造資材事業、ALC(軽量気泡コンクリート)、鉄骨構造用資材、杭基礎、断熱材などの分野で、先進性を追求した高付加価値な製品と施工技術を提供されています。

株式会社日本住宅保証検査機構

所在地 :
東京都千代田区神田須田町2-6 ランディック神田ビル4F
代表者 :
代表取締役 角 直樹
指定等 :
国土交通大臣指定住宅瑕疵担保責任保険法人
国土交通大臣登録住宅性能評価機関(登録番号 国土交通大臣 第7号)
国土交通大臣登録建築物エネルギー消費性能判定機関
住宅金融支援機構適合証明業務協定機関
住宅性能評価・表示協会 BELS評価機関
一級建築士事務所 東京都知事登録
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