Department of Chemistry

理学研究科 化学専攻

神楽坂キャンパス

自然界に存在する物質の成り立ちを理解し、
より良い社会の構築に繋がる新しい物質を創出する

化学専攻は、物質に関わる自然現象の真理を追究するための高度な知識をもった独創性豊かな研究者・技術者・教育者を育成することを目的としています。物質を探求する手段は日々進歩しており、伝統的な化学の研究手法にとらわれることなく、新たな展開を切り開くことを目指して、先端的な教育と研究を行います。

概要図
  • 化学専攻の特徴1

    修士課程では、学部における一般的・専門的教育の基礎の上に化学に関する深い学識を修め、持続可能な住みよい社会の構築に貢献することのできる能力を備えた人材を育成・輩出しています。

  • 化学専攻の特徴2

    博士後期課程では、化学に関連した卓越した専門性と国際感覚を身につけ、新たな学問領域や科学技術の開拓・開発を先導し、化学の最前線をさらに前進させるとともに、持続可能な住みよい社会の構築を主導することができる第一線の研究者・技術者・教育者を養成・輩出しています。

  • 化学専攻の特徴3

    学部3学科(第一部化学科、第一部応用化学科、第二部化学科)の27研究室から構成されており、化学における幅広い分野を横断的に学ぶことができるとともに、専門性を深く追求することができる体制となっています。学部からの進学率が高いことも大きな特徴です。

カリキュラム CURRICULUM

科目区分 専門分野(部門) 授業科目 単位 履修方法 履修年次
専門科目 無機及び分析化学有機化学物理化学 化学特別研究1 4 必修 1
化学特別研究2 4 必修 2
化学特別輪講1 2 必修 1
化学特別輪講2 2 必修 2
化学特別演習・実験1 2 必修 1
化学特別演習・実験2 2 必修 2
分子科学基礎 1 選択必修 1
分子科学特論1 2 選択必修 1又は2
分子科学特論2 2 選択必修 1又は2
分子科学特論3 2 選択必修 1又は2
分子集積化学基礎 1 選択必修 1
分子集積化学特論1 2 選択必修 1又は2
分子集積化学特論2 2 選択必修 1又は2
分子集積化学特論3 2 選択必修 1又は2
分子集積化学特論4 2 選択必修 1又は2
分子集積化学特論5 2 選択必修 1又は2
合成有機化学特論1 2 選択必修 1又は2
合成有機化学特論2 2 選択必修 1又は2
合成有機化学特論3 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論1 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論2 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論3 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論4 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論5 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論6 2 選択必修 1又は2
反応有機化学特論7 2 選択必修 1又は2
生体情報化学特論 1 選択必修 1
機能性材料化学特論 2 選択必修 1又は2
機能性高分子化学特論 2 選択必修 1又は2
光機能化学特論 2 選択必修 1又は2
有機材料化学特論 2 選択必修 1又は2
固体化学特論 2 選択必修 1又は2
生命材料界面化学 2 選択必修 1又は2
生体材料解析法特論 2 選択必修 1又は2
材料・デバイス科学特論 2 選択必修 1又は2
環境化学特論1 2 選択必修 1又は2
環境化学特論2 2 選択必修 1又は2
エネルギー変換化学 2 選択必修 1又は2
電気化学特論 2 選択必修 1又は2
環境分析化学 2 選択必修 1又は2
共通 化学特別講義1 1 選択 1又は2
化学特別講義2 1 選択 1又は2
化学特別講義3 1 選択 1又は2
化学特別講義4 1 選択 1又は2
一般教養科目 教養(共通) 知財情報科学 1 選択必修 1又は2
環境安全科学 1 選択必修 1又は2
科学者・技術者の倫理 1 選択必修 1又は2
知的財産特論 2 選択必修 1又は2
科学文化概論 2 選択必修 1又は2
サイエンス・ライティング 2 選択必修 1又は2
Academic English 1 2 選択必修 1又は2
Academic English 2 2 選択必修 1又は2
Presentation Skills 2 選択必修 1又は2
ウォーターサイエンス特論 2 選択必修 1又は2
物理学から見る理学の世界1 1 選択必修 1又は2
物理学から見る理学の世界2 1 選択必修 1又は2
物理学から見る理学の最前線1 1 選択必修 1又は2
物理学から見る理学の最前線2 1 選択必修 1又は2
物理学から見る理学の未来1 1 選択必修 1又は2
物理学から見る理学の未来2 1 選択必修 1又は2
実践的リーダシップを学ぶ 2 選択必修 1又は2
Japan's diplomacy in the context of globalization 2 選択必修 1又は2
理科探究学習論 2 選択必修 1又は2
教授メディア学習論 1 選択必修 1又は2
学校インターンシップ(アドバンス) 1 選択必修 1又は2

※コミュニケーション英語講座1/2、英語Writing講座、実践英語講座1/2は修了単位には含めない。

※科目の内容など詳細情報については「シラバス」からご覧いただけます。

※本専攻は「英語で実施する授業科目(*)」の単位修得のみで修了することが可能です。

 *日本語能力を有さない学生が授業を受講しても単位修得にあたり支障がない授業と定義します(「講義の一部を日本語で実施する」、「講義資料を英語とし講義は英語と日本語を混ぜて行う」等の工夫により、英語と日本語が混在する場合があります)。

2023年度 大学院要覧 修士課程修了要件
専門科目 一般教養科目
必修科目 選択科目 4 30
16 8

  1. 以下(1)~(3)を全て満たし、合計30単位以上修得すること。
    (1)専門必修科目16単位を修得すること。
    (2)専門選択必修科目を8単位以上修得すること。
    (3)一般教養科目4単位を修得すること。ただし、4単位を超えて修得した単位は修了所要単位に含めない。
  2. 研究科の定めるところにより、以下に掲げる授業科目を履修することができる。
    (1)所属専攻以外の専攻課程による授業科目
    (2)他の研究科の授業科目
    (3)他大学の大学院の授業科目
    (4)学部の授業科目

    (1)~(3)の授業科目において修得した科目の単位のうち、修了所要単位として含めることができる単位数は2単位までとする。なお、このうち教養(共通)科目については、修了所要単位として含めることができる単位は2単位までとする。

  3. 「理科探究学習論」、「教授メディア学習論」、「学校インターンシップ(アドバンス)」については教職課程登録者に限り履修することができる。

科目区分 専門分野(部門) 授業科目 単位 履修方法 履修年次
専門科目 無機及び分析化学有機化学物理化学 分子集積・分子科学研究1 10 選択必修 1
分子集積・分子科学研究2 10 選択必修 1~3
分子集積・分子科学研究3 10 選択必修 1~3
合成・反応有機化学研究1 10 選択必修 1
合成・反応有機化学研究2 10 選択必修 1~3
合成・反応有機化学研究3 10 選択必修 1~3
機能・生体材料化学研究1 10 選択必修 1
機能・生体材料化学研究2 10 選択必修 1~3
機能・生体材料化学研究3 10 選択必修 1~3
エネルギー・環境化学研究1 10 選択必修 1
エネルギー・環境化学研究2 10 選択必修 1~3
エネルギー・環境化学研究3 10 選択必修 1~3
一般教養科目 教養(共通) 知財情報科学 1 選択必修 1~3
環境安全科学 1 選択必修 1~3
科学者・技術者の倫理 1 選択必修 1~3
知的財産特論 2 選択必修 1~3
科学文化概論 2 選択必修 1~3
サイエンス・ライティング 2 選択必修 1~3
Academic English 1 2 選択必修 1~3
Academic English 2 2 選択必修 1~3
Presentation Skills 2 選択必修 1~3
ウォーターサイエンス特論 2 選択必修 1~3
物理学から見る理学の世界1 1 選択必修 1~3
物理学から見る理学の世界2 1 選択必修 1~3
物理学から見る理学の最前線1 1 選択必修 1~3
物理学から見る理学の最前線2 1 選択必修 1~3
物理学から見る理学の未来1 1 選択必修 1~3
物理学から見る理学の未来2 1 選択必修 1~3
実践的リーダシップを学ぶ 2 選択必修 1~3
Japan's diplomacy in the context of globalization 2 選択必修 1~3
英語プレゼンテーション講座 1 選択必修 1~3
コミュニケーション英語講座1 1 1~3
コミュニケーション英語講座2 1 1~3
英語Writing講座 1 1~3
実践英語講座1 1 1~3
実践英語講座2 1 1~3

※コミュニケーション英語講座1/2、英語Writing講座、実践英語講座1/2は修了単位には含めない。

※科目の内容など詳細情報については「シラバス」からご覧いただけます。

2023年度 大学院要覧 博士後期課程修了要件
専門科目 一般教養科目
30 4 34
  1. 以下(1)・(2)を全て満たし、合計34単位以上を修得すること。
    (1)専門選択必修科目から、自己の指導教員が担当する授業科目1~3を3科目30単位修得すること。
    (2)一般教養科目4単位を修得すること。ただし、4単位を超えて修得した単位は修了所要単位に含めない。
  2. 修士課程在籍時に単位修得している科目の履修は認めない。
  3. 研究科の定めるところにより、以下に掲げる授業科目を履修することができる。
    (1)所属専攻以外の専攻課程による授業科目
    (2)他の研究科の授業科目
    (3)他大学の大学院の授業科目
    (4)学部および修士課程の授業科目

    (1)および(2)の授業科目において修得した教養(共通)科目のうち、修了所要単位として含めることができる単位が4単位までとする。

  
   

研究指導・
研究室紹介
GRADUATE RESEARCH AND LABORATORIES

■無機及び分析化学
■有機化学
■物理化学
■青木 研究室

[専攻]物理化学 [指導教員]青木 健一 准教授 [キーワード]機能性高分子材料
[テーマ例]❶デンドリマーの大量合成法に関する研究 ❷デンドリマーの機能化に関する研究 ❸機能性ゲル化剤に関する研究

本研究室では、デンドリマーと呼ばれる球状の高分子化合物や、光を当てるとπ共役ポリマーを形成する機能性有機ゲルに関する研究をしています。デンドリマーの末端にさまざまな機能性部位を導入したり、π共役ポリマーの構造や物性を制御したりして、これまでにないナノ材料を創り出すことを目指しています。

■秋津 研究室

[専攻]無機化学 [指導教員]秋津 貴城 教授 [キーワード]錯体化学,物理無機化学
[テーマ例]❶機能性金属錯体の合成と性質 ❷金属錯体の結晶構造ー電子物性相関 ❸有機・無機複合ナノ機能材料や生物無機化学への応用

金属イオンと有機配位子からなる金属錯体を上手にデザインして合成し、X線結晶構造解析、物性測定、理論計算などの方法を用いて、構造と電子状態を明らかにしています。さらにこの原理を、有機・無機複合ナノ材料や生物無機化学も援用して、新奇な物性機能を引き出すために、分子磁性体、均一系触媒・金属酵素(モデル)錯体との複合体の創製や、新しい測定法の利用などの研究を行っています。

■榎本 研究室

[専攻]無機化学 [指導教員]榎本 真哉 准教授 [キーワード] 物性化学,錯体化学
[テーマ例]❶金属イオン、配位子、対イオン選択による磁気構造制御 ❷新奇配位高分子の開発 ❸錯体と有機物が複合した磁性体の開発

さまざまな機能性物質開発のためには、物質合成、物理的・化学的な性質の測定、得られたデータの解釈に基づく、さらなる物質開発へのフィードバックというプロセスが重要になります。特に物質の性質を決めるのに重要な役割を果たす“電子”の働きに注目して、さまざまな金属原子や有機配位子を用いて錯体などの分子集合体を構築し、集合体になることで単独のパーツでは現れない、磁性、伝導性、光物性、熱物性などが複雑に絡み合う、新たな物理的性質を持つ物質の開発を目指して研究を行っています。

■遠藤 研究室

[専攻]有機化学 [指導教員]遠藤 恆平 准教授 [キーワード] 有機合成反応,分子触媒の開発,元素戦略
[テーマ例]❶複数の金属原子を有する分子触媒の開発 ❷立体選択的な炭素—炭素結合形成反応の開発 ❸新規錯体触媒と有機合成反応の開発

有機分子は、生命の制御だけではなく、有機ELや有機太陽光発電などの有用材料の発展に貢献する、柔軟性のある重要な物質の1つです。本研究室では、それら有機分子を駆使して、原子と原子の相互作用を活用する新しい機能の創製に取り組んでいます。従来は「原子の個性」を引き出す研究に注目が集まっていましたが、現在では「原子の個性」という制約に逆に縛られるようになりました。その個性にはない機能を、有機分子を用いて原子と原子の相互作用で実現することが目的です。

■大塚 研究室

[専攻]物理化学、コロイド・界面化学 [指導教員]大塚 英典 教授 [キーワード]分子会合体,バイオコロイド,高分子界面,バイオマテリアル
[テーマ例]❶生体機能を補助する微粒子の合成と化粧品原料への応用 ❷高感度な診断・ ドラッグデリバリーシステム(DDS)用粒子の合成 ❸3次元培養法の開発と新薬スクリーニング・再生医療への応用

ナノスケールでの生体と材料との界面反応を解明し、積極的に生体機能を操作できる物質の創出を本研究室では目指しています。生体物質(細胞・ウイルス・毒素など)と材料との応答機構を明らかにすることによって、生体信号を的確に検知するシステムの構築や、免疫診断・再生医療への応用を目指します。また、大きさや形が制御されたナノサイズの金属・酸化物粒子・分子会合体を合成し、癌をはじめとする難病の検出・治療を可能にする、ドラッグデリバリーシステム(DDS)や高機能化粧品への応用を目指します。

■河合 研究室

[専攻]有機化学 [指導教員]河合 英敏 教授 [キーワード] 超分子化学,構造有機化学
[テーマ例]❶アロステリック会合を利用した情報増幅、高効率分子変換、自己増幅分子の開発 ❷イミン結合の動的共有結合性を利用したロタキサン分子など動的システムの開発 ❸高歪み芳香族性大環状分子および水素結合性格子構造の構築とその内部空間の化学

有機分子の中には、外部刺激に応じて形や運動性、色などを変える分子スイッチや分子マシン、ひとりでに規則正しい構造に組み上がる自己集合性分子、特定の分子を選んで捕まえるレセプター分子など、さまざまな物性を持った機能性分子が存在します。有機化学の力を使うと、多様な構造や物性を持つ化合物を独自に設計・合成することが可能になります。誰も作ったことのない未知の構造を作り出すことで、これまでにない新しい物性・機能性を持つ分子を開発(発見)し、新しい科学を切り拓いていきたいと考えています。

■川﨑 研究室

[専攻]有機化学 [指導教員]川﨑 常臣 准教授 [キーワード]キラル化学,不斉合成
[テーマ例]❶自己複製するアミノ酸の創製 ❷不斉の起源を用いたアミノ酸合成 ❸不斉ストレッカー反応の開発

生体に関連する代表的なキラル化合物である「アミノ酸」の起源に関する研究に取り組んでいます。キラル化合物とは、右手と左手のように実像と、それを鏡に映した鏡像の関係にある化合物のことです。アミノ酸を化学合成すると、鏡像関係にあるL型とD型が等量含まれた混合物が得られますが、地球上のあらゆる生命はL型アミノ酸のみを利用しています(生命のホモキラリティー)。生命誕生前の地球上でアミノ酸は、「ストレッ力一反応」によって生成したと考えられており、有機合成化学の手法でこの反応に取り組み、L型アミノ酸ホモキラリティーの起源解明を目指します。

■木村 研究室

[専攻]有機化学 [指導教員]木村 力 准教授 [キーワード]有機合成化学,有機金属化学
[テーマ例]❶金属カルベノイドの特異な反応性を利用する炭素-炭素結合形成反応の開発 ❷計算化学に基づく金属カルベノイドの解析 ❸硫黄原子のキラリティーを活用する不斉合成

有機化合物を効率的かつ高選択的に合成できる革新的な反応の開発に取り組んでいます。一つの炭素原子に金属とハロゲンが結合した「金属カルベノイド」は、特異な反応性を有しています。その反応性を利用して、さまざまな炭素-炭素結合形成反応を開発しています。金属カルベノイドの特異な反応性の起源や反応機構について計算化学を用いて研究しています。

■工藤 研究室

[専攻]化学、触媒化学、固体化学 [指導教員]工藤 昭彦 教授 [キーワード]人工光合成,光触媒
[テーマ例]❶水から水素を作る光触媒の開発 ❷二酸化炭素を資源化する光触媒の開発 ❸硝酸やアンモニアを分解する光触媒の開発

地球規模でのエネルギー・環境問題を根本的に解決する化学反応として、光触媒と太陽光を使った水分解によるソーラー水素製造が注目されています。この水の光分解反応では光エネルギーが化学エネルギーに変換されることから、人工光合成と呼ぶことができます。さらに、このソーラー水素と炭素源として二酸化炭素を用いることにより、さまざまな有用な有機物や、化学肥料に使われるアンモニアを合成することができます。本研究室では、この人工光合成の実現に向けて、水の光分解反応に高活性を示す粉末系半導体光触媒材料や光電極の開発を行っています。また、二酸化炭素を資源化する光触媒反応の研究も行っています。

■駒場 研究室

[専攻]無機化学、電気化学 [指導教員]駒場 慎一 教授 [キーワード]次世代蓄電池
[テーマ例]❶遷移金属酸化物の合成とインターカレーション機能 ❷ナトリウムイオン蓄電池およびカリウムイオン蓄電池用電極材料の研究開発 ❸酵素反応を利用した発電デバイスと電気化学センサ

21世紀の環境・エネルギー問題の解決に貢献できる、新物質の創製に取り組んでいます。90年代に実用化された高性能リチウムイオン蓄電池、将来型電池としてナトリウムイオン蓄電池、カリウムイオン蓄電池に注目し、それらの電極物質の合成と充放電(酸化還元)反応に関する基礎研究を行っています。次世代自動車や電力貯蔵技術に応用できるバッテリーを念頭に、高エネルギー・高出力・長寿命特性を示す新しい二次電池および電気化学キャパシタ用材料の応用研究に取り組んでいます。さらに、電気シグナルから物質を選択的に検出する電気化学センサ、酵素反応を発電に利用するバイオ燃料電池などの研究も展開しています。

■斎藤 研究室

[専攻]有機化学、有機金属化学 [指導教員]斎藤 慎一 教授 [キーワード] 超分子化学,構造有機化学
[テーマ例]❶新しい中員環構築反応の開発とその応用 ❷新規インターロック分子の合成―新しいナノサイエンス― ❸高周期元素の特性を持つ遷移金属錯体の合成と反応性の解明

7-9個の原子からなる環状の有機化合物(中員環化合物)は医薬品等によく見られる構造ですが、その合成は比較的困難です。本研究室ではこうした中員環化合物が簡単に合成できる新しい、環境に優しい(環境に対する負荷の少ない)反応を発見し、その応用について研究しています。また、インターロック化合物と呼ばれる、結合で結び付いていないユニークな構造を持った分子の合成やその物性について検討しています。さらに、金属触媒を用いる新反応についても研究を行っています。

■佐々木 研究室

[専攻]物理化学 [指導教員]佐々木 健夫 教授 [キーワード]分子組織体の光学,光化学特性
[テーマ例]❶液晶性高分子のフォトリフラクティブ効果 ❷強誘電性液晶のフォトリフラクティブ効果 ❸光分解性高分子の合成

有機物を使って、光に応答する物質の研究をしています。また、分子を設計して合成し、組み合わさってできる物質の光機能性をさまざまな角度から研究しています。分子間相互作用を制御した液晶性化合物や高分子物質を合成し、光化学反応や、非線形光学効果などを実際に測定する研究をしています。

■貞清 研究室

[専攻]無機化学、固体化学、錯体化学 [指導教員]貞清 正彰 講師 [キーワード]ナノ空間化学,イオニクス材料,物質変換材料
[テーマ例]❶超イオン伝導性を示す結晶性多孔体の開発と電池材料への応用 ❷金属−結 晶性多孔体複合体の新規合成法の開発と触媒応用 ❸ナノ空間中に包接された物質・イオンのダイナミクス解明

固体中のナノ空間を利用し、物質・イオン・電子を自在に動かすことにより、次世代のエネルギー・物質循環型社会に資する新たな機能性材料の開発に取り組んでいます。燃料電池・二次電池材料への応用を指向した超イオン伝導体の開発や、電力により選択的に物質変換を行う電解合成触媒の開発を行っています。

■佐竹 研究室

[専攻]有機化学・有機合成化学 [指導教員]佐竹 彰治 教授 [キーワード]超分子化学・光合成関連化学・機能分子化学
[テーマ例]❶ナノメートルサイズポルフィリンリングの構築と機能開拓 ❷超分子ポルフィリンワイヤーの化学 ❸光合成反応中心モデルを光増感剤とする光触媒反応

超分子とは複数の分子同士が比較的弱い相互作用によって自己組織化したものをいい、超分子を形成すると単独では見られない特有の機能を発現することがあります。本研究室では、光・電子機能性にすぐれた分子を集積した超分子を用いて分子変換触媒や光触媒の開発、光合成に関連する機能の創出を行っています。

■椎名 研究室

[専攻]有機化学 [指導教員]椎名 勇 教授 [キーワード]天然物化学,有機合成化学
[テーマ例]❶抗がん剤の人工合成 ❷光学活性な有機化合物の立体選択的合成 ❸低環境負荷を実現する不斉触媒反応の開発

近年の有機合成化学の進歩には目覚ましいものがありますが、最新の技術を駆使してさえなお構造解析ならびにその人工合成が困難な有機化合物も数多く知られています。これらの物質を大量に生産するためにはさらに効率良く各工程の反応を行うことが必要になります。本研究室ではこのような現代の有機化学の背景を踏まえ、テルペン、アルカロイドなどの天然有機化合物あるいは抗菌剤、抗ウイルス剤、抗がん剤などの生物活性化合物の立体選択的な全合成研究を主なテーマとしています。

■下仲 研究室

[専攻]生物化学 [指導教員]下仲 基之 教授 [キーワード] タンパク質による細胞機能制御
[テーマ例]❶卵胞発育を制御する細胞間情報伝達機構 ❷血管新生を調節するさまざまな因子の相互作用 ❸サイログロブリンによる甲状腺機能の調節機構

すべての多細胞生物の生命活動は、さまざまな機能を持つ細胞が協調的に働き互いに制御し合うことで成り立っています。その際に必要となるのが細胞間コミュニケーションです。細胞は、近くにあるもの同士だけではなく離れた場所にある場合も、多様な手段を用いてコミュニケーションを図っています。私たちの研究の目的は、そのような細胞間コミュニケーションに関わる新しいタンパク質を発見し、それがどのような方法で情報を伝達するのかを解明するとともに、生命活動維持に対する意義を明らかにすることです。

■田所 研究室

[専攻]無機化学 [指導教員]田所 誠 教授 [キーワード] 超分子錯体化学,分子機能化学
[テーマ例]❶分子性ナノ細孔に閉じ込められた巨大水クラスターの科学 ❷陽子─電子連動型錯体素子 ❸新規有機─無機分子性導体 ❹光─メカニカル・エネルギー変換 ❺人工メタンハイドレート

生物を作っているタンパク質や超分子化合物のような、自然に組み上がる性質を持つ分子を研究対象にしています。分子の持つ弱い水素結合や配位結合を使って、分子集積体のつながり方を制御し、ユニークな構造を持つ役立つ分子や結晶を作っています。例えば陽子と電子は結合すると原子になりますが、別々に動かすと分子のレベルで動かすスイッチになります。そして、これが集合体になると特殊な力を発揮して、生物に近い機能性が現れてきます。常温常圧で安定化された人工メタンハイドレートなど、水の関わる科学などを行っています。

■築山 研究室

[専攻]物理化学・光化学 [指導教員]築山 光一 教授 [キーワード] レーザー分光学,励起状態化学
[テーマ例]❶レーザー分光法による電子励起状態のエネルギー緩和ダイナミックス ❷イオンイメージング法による光化学反応ダイナミックス

分子が光を吸収してエネルギーの高い状態(これを励起状態といいます)になると、分子は光を放出したり、結合が切れたりと実に多様な挙動を示します。励起状態における分子の振る舞いは、物質とその変化を取り扱う化学において最も重要な研究領域の一つです。人工光源であるレーザー光をうまく利用すると、このような目で見ることのできないさまざまな事象を詳細に知ることができます。われわれはレーザーを化学の研究に持ち込み、励起状態における分子の不思議を理解することを目的としています。

■鳥越 研究室

[専攻]生物物理化学、構造生物学 [指導教員]鳥越 秀峰 教授 [キーワード]生体高分子,がん,老化,ゲノム
[テーマ例]❶3本鎖DNA形成による働いてほしくない(例えばがん化した)遺伝子の発現の人工的制御 ❷テロメア結合タンパク質やテロメラーゼによるテロメア調節機構・細胞がん化老化機構 ❸疾患への感染しやすさや薬の効きやすさなどの体質を左右する一塩基多型の検出

生命の設計図である遺伝情報は染色体上の遺伝子に書き込まれています。遺伝子から作り出されたタンパク質が生命現象で重要な役割を演じています。近年、さまざまな生物で、染色体上の全ての遺伝情報を明らかにするゲノム科学の研究が盛んです。この流れの中で、本研究室では、遺伝子の実体であるDNAや遺伝子から作り出されたタンパク質など生体高分子の3次元構造を明らかにし、生体高分子同士が結合する仕組みを明らかにする研究を行っています。この研究を通じて、精緻に構築されている生命現象の分子機構を明らかにするとともに、生命現象を必要に応じて人工的に制御する方法を生み出し、薬づくりなどに役立てることを目指しています。

■中 研究室

[専攻]物理化学 [指導教員]中 裕美子 准教授 [キーワード]機能性高分子,液晶化学
[テーマ例]❶構造精密制御高分子における空孔形成 ❷液晶性ビオロゲンの光応答

本研究室では、高分子化学、液晶、光化学を軸として、機能性高分子材料の研究を行っています。特に、星型高分子やブラシ型高分子など、特殊な構造をした高分子に着目し、新機能もしくは高性能な光応答性材料、液晶性材料、撥水撥油性材料の創製を目指しています。また、次世代材料に繋がる新物性の探索にも取り組みます。

■根岸 研究室

[専攻]物理化学 [指導教員]根岸 雄一 教授 [キーワード]ナノ物質化学,クラスター化学
[テーマ例]❶金属ナノクラスターに対する原子精度精密合成技術の確立 ❷高機能金属ナノクラスターの創製 ❸金属ナノクラスターの化学触媒、光触媒、太陽電池への応用

ナノテクノロジーは、機器やデバイスの小型化、高機能化、高分解能化、高効率化、省エネルギー化を実現し、それにより、材料、エネルギー、環境、情報通信、医療といった分野で多くの問題を解決すると期待されています。そうした技術を飛躍的に進展させるために、ナノスケールの大きさを持つ高機能な物質の創製が切望されています。金属原子が数個から数百個集まった金属ナノクラスターは、そのような高機能ナノ物質として大きな注目を集めています。本研究室では、特異な物性や機能を持つ金属ナノクラスターを生み出すこと、そしてそれらを化学/光触媒や太陽電池などに応用することを目指し、研究を行っています。

■古海 研究室

[専攻]物理化学 [指導教員] 古海 誓一 准教授 [キーワード]有機材料化学,ナノ物質化学,ソフトマター科学,フォトニクス
[テーマ例]❶セルロース誘導体による液晶の発現とフルカラーイメージングへの応用 ❷人工オパールの作製とレーザーや太陽電池への応用 ❸無機半導体・ナノ材料の精密合 成とオプトエレクトロニクスデバイスへの応用

光の世紀といわれる今世紀、光技術は目覚ましい発展を遂げ、発光ダイオード(LED)に代表されるように、光を発する、すなわち発光する材料や光源は、私たちの日常生活に溢れています。本研究室では、光と物質の相互作用を考究して、液晶やゲルといったソフトな有機材料を用いた新しいフォトニックデバイスを創り出す研究に取り組んでいます。さらに、原子スケールの無機ナノ材料と有機材料を高度に融合することで、独自の有機・無機ハイブリッドナノ材料に関する学理的探究を行っています。今日、私たちが直面している環境・資源問題や社会的ニーズにも考慮しながら、高感度な圧力センサー、ソフトなレーザー光源、高効率な太陽電池など次世代オプトエレクトロ二クスに応用できる新しい研究領域の開拓を目指しています。

■松田 研究室

[専攻]有機金属化学、合成化学 [指導教員]松田 学則 教授 [キーワード]遷移金属触媒反応,選択的合成
[テーマ例]❶遷移金属錯体を触媒として用いる有機合成反応の開発 ❷元素の特性を生かした反応の開発および機能性物質の合成 ❸不活性結合の活性化に基づく環境調和型分子 変換プロセスの開拓

有機合成化学は、入手容易な小分子からさまざまな機能・物性を持つ高付加価値分子を作り出す手法を開発する研究分野です。私たちの暮らしを豊かにしてくれる物質の多くは、有機合成化学の進歩によってもたらされています。また、現代社会において見過ごすことのできない環境・資源・エネルギー問題の解決にも、有機合成化学の果たすべき役割はますます増大すると考えられます。本研究室では、ライフサイエンスからマテリアルサイエンスまで幅広い分野を対象として、有機合成化学に関するさまざまな課題に取り組んでいます。特に、有機金属化学の立場から新反応の開発、有用物質の創製を目指して研究を展開しています。

■宮村 研究室

[専攻]無機化学 [指導教員]宮村 一夫 教授 [キーワード] 錯体化学,分析化学,界面化学
[テーマ例]❶走査トンネル顕微鏡による分子配列の観察 ❷長鎖アルキル鎖による分子配列構造の形成 ❸機能性金属錯体の分子結晶の育成と構造解析

金属イオンと有機物が化合した金属錯体や色素分子は構造が多様で、電気伝導性、磁性、発色などが特徴的です。これらの分子をアルキル基などを用いて巧みに並べ、新しい機能を持った材料を開発しています。分子の配列構造は複雑で、その微細構造(ナノ構造)は未解明のものも多くあります。そこで、構築したナノ構造を走査トンネル顕微鏡で直接観察したり、X線を使って解析したりしています。

■由井 研究室

[専攻]物理化学、分析化学 [指導教員]由井 宏治 教授 [キーワード] 分光計測,溶液化学,コロイド・界面科学
[テーマ例]❶局所空間の水、水中における脂質分子、多糖類、タンパク質の自己集合体の形成と機能の計測 ❷極短パルスレーザーと顕微鏡を組み合わせた非線形レーザー分光顕微鏡の開発 ❸レーザー光の特性を応用した水を含むようなソフトマテリアルや生体膜のレオロジーや深さ方向の非破壊顕微計測法の開発

物質表面や内部のナノメートルスケールの空間に存在する水は、自然界に普遍的に見られます。このような水は物質の性質や機能に大きな影響を及ぼしており、とりわけ生命はこのような水の構造や性質を巧みに利用して、その活動を維持しています。しかし局所空間における極微量の水の構造や物性を計測するのは一般に難しく、まだ分かっていないことが多く残されています。われわれは局所空間の水の構造や物性を計測できる新しい手法や計測装置を開拓し、局所空間の水の本質に迫ります。

■湯浅 研究室

[専攻]光化学、物理化学、有機化学、無機化学 [指導教員]湯浅 順平 准教授 [キーワード]発光材料,セキュリティー材料
[テーマ例]❶偏光性を示す有機発光物質の開発 ❷不斉希土類発光体の合成 ❸金属イオンを利用した有機物質の会合状態制御

有機、無機化合物の発光現象に着目した、新規発光性機能材料の開発に取り組んでいます。偏光性などの特殊な性質を持った光は一部の3Dディスプレイに利用されている他、次世代の光情報技術の基盤となることが期待されています。さまざまな有機、無機化合物を分子レベルでデザインすることで、このような特殊な性質を持った光を自発的に放つ発光材料の創成に取り組んでいます。さらに、これらの発光材料の偏光性を利用したセンサやセキュリティーについても研究を展開しています。

■渡辺 研究室

[専攻]物理化学、表面化学 [指導教員]渡辺 量朗 准教授 [キーワード] 表面物理化学,光化学
[テーマ例]❶金属表面上のナノ構造における化学反応の解明 ❷水素や貴ガスなどの表面化学反応

化学反応を加速することのできる触媒の働きは、その上で分子や原子がどのように振る舞うかを調べることで理解できます。私たちは、宇宙空間と同等の清浄な超高真空環境を作れる実験装置中で、電子や光をプローブとして用いて、分子や原子が個体表面上で起こす化学反応を調べています。例えば、重要な物質である水素、反応しにくい物質である貴ガスなどが、金属に接触することで起こす変化や反応を、追跡しています。

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