NEWS & EVENTS ニュース&イベント

  • プレスリリース
  • 研究
2022.11.17 Thu UP

数千℃の高熱にも耐える炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料の開発に成功
~航空機やロケットの耐熱性向上に寄与~

研究の要旨とポイント

  • 極超音速機は空力加熱(※1)により表面温度が2000℃以上にもなるため、それに耐えうる材料の開発が課題でした。
  • 本研究では、Zr-Ti合金をベースとした炭素繊維強化超高温セラミックス(C/UHTCMC)の開発し、アーク風洞試験(※2)などの各種解析と評価により、優れた耐熱性を有することを実証しました。
  • 本研究をさらに発展させることで、スペースシャトルやロケット材料など、過酷な環境下への耐性が求められる航空・宇宙分野での活用が期待されます。

東京理科大学大学院工学研究科 機械工学専攻の小出士純氏(2022年修士課程1年)、同大学工学部 機械工学科の井上遼講師、同大学先進工学部 マテリアル創成工学科の新井優太郎助教、横浜国立大学大学院工学研究院 システムの創生部門の長谷川誠教授、物質・材料研究機構(NIMS)の西村聡之博士(構造材料研究拠点 接合・造型分野 構造用非酸化物セラミックスグループ グループリーダー)らの研究グループは、ジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)合金をベースとした炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料(C/UHTCMC)を開発し、特性解析を行った結果、2000℃以上の超高温にも耐えることができることを確認しました。

マッハ5(時速約6200km)以上の極超音速で飛行する航空機の機体は、空力加熱の影響により数千℃にも達します。この過酷な環境に耐えうる材料として、超高温セラミックスと炭化ケイ素の複合材料が注目されてきました。しかしながら、極めて高温状態では、ケイ素を含む化合物の状態変化や化学変化に起因する材料の劣化が生じるため、代替となる新たな材料が模索されてきました。そこで、本研究グループは劣化の原因となるケイ素を含まない新規複合材料であるC/UHTCMCを溶融含浸法(※3)により合成し、その特性について詳細に明らかにしようと試みました。

本研究では、ZrとTiの含有率を変化させた3種類のC/UHTCMCsを作製し、表面構造解析やアーク風洞試験を行いました。その結果、Zrを多く含む材料が最も良い熱防御性を示すことを見出しました。また、材料表面に形成されたTiとZrの酸化物はTiO2固溶体、ZrTiO4固溶体、ZrO2固溶体であることを突き止め、これらの物質が複合材料のさらなる酸化を抑制できることも発見しました。本研究の成果をさらに発展させることで、航空機やロケットなどの超高温下でも使用可能な耐熱材料としての展開が期待されます。

本研究成果は、2022年10月27日に国際学術誌「Journal of Materials Science」にオンライン掲載されました。

数千℃の高熱にも耐える炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料の開発に成功 ~航空機やロケットの耐熱性向上に寄与~
図1 アーク風洞試験の様子

研究の背景

炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)は軽量で耐熱性のある材料として、スペースシャトルや極超音速機の部材に使用されてきました。しかしながら、高温環境下での耐酸化性が低く、用途が制限されることが課題でした。また、超高温セラミックス(UHTC)と炭化ケイ素の複合材料(ZrB2-SiC、ZrC-SiC、ZrB2-ZrC-SiCなど)が1700℃以上の高温でも優れた耐酸化性や耐熱性を示すことが知られていました。しかしながら、ケイ素を含む化合物をベースとした複合材料は、超高温環境下では共晶の形成やケイ素を含む化合物自身の酸化によって、材料が著しく劣化してしまうことが課題でした。

そこで本研究グループは、超高温環境下でも劣化しない新規材料として、ZrとTiを主成分とするC/UHTCMCに着目し、その有用性を評価することを目的として研究を進めてきました。そして、異なる合金組成で製造された3種類のC/UHTCMCsに対して、アーク風洞試験、表面分析、熱力学的解析を行い、その特性評価を行いました。

研究結果の詳細

まず、溶融含浸法によりZr、Ti、Cを主成分とする3種類のC/UHTCMCs(Z20,Z36,Z80)を合成しました。これらのZrとTiの組成比(at%)はそれぞれZr:Ti=20:80、36:64、80:20でした。そして、異なる3つ条件(A:ノズル間距離150mm、熱流束2MW/m2:ノズル間距離100mm、熱流束4.54MW/m2、C:ノズル間距離80mm、熱流束6.68MW/m2)でアーク風洞試験を行い、各材料の損耗評価を行いました。その結果、複合材料中のZrの含有量が増加すると、アーク風洞試験後の材料厚さが増加し、表面に形成される酸化物の融点も上昇することがわかりました。また、複合材料の表面に生成した液相が外表面に向かって流れることで複合材料の酸化がさらに促進されることを見出しました。さらに、Tiを多く含む炭化物に対して、Zrを多く含む炭化物の酸化が熱力学的に優先されるため、いずれの温度条件でも、複合材料の劣化が抑制されることを確認しました。

次に、表面分析や熱力学解析により材料表面に形成された酸化物の評価を行いました。材料表面に形成されたTiとZrの酸化物は主にTiO2固溶体、ZrTiO4固溶体、ZrO2固溶体であり、これらが複合材料のさらなる酸化を抑制できることを明らかにしました。特に、Z80では2000℃までZrO2固溶体と液相を維持し、2600℃以上では表面に液相のみが形成され、表面酸化物が消失することが確認されました。

以上の結果から、Z80が超高温環境下での減少量が少なく、耐酸化性も高いため、耐熱材料に最も適していると結論付けました。

本研究の成果について、研究を主導した井上講師は「私たちはセラミックスやその複合材料に関する研究に従事してきました。近年、2000℃以上の超高温に耐えうる材料について、複数の重工メーカーから相談を受けたことがきっかけとなり、本研究に取り組み始めました。これらの材料が実際に使用できるようになれば、超高速旅客機の実現が可能となり、私たちの生活がより豊かになります」と話しています。

※ 本研究は日本学術振興会の科研費(JP21K18782,JP22K14152)の助成を受けて実施されました。

用語

※1 空力加熱
航空機などが空気中を高速移動する際に、空気が圧縮されることで温度が上昇し、さらにその空気によって機体が加熱されること。

※2 アーク風洞
アーク放電によって作動ガスをプラズマ化し、アークジェットと呼ばれる高エンタルピーの気流をつくることで、大気圏突入時の環境を再現できる装置。

※3 溶融含浸法
炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)を溶融した金属に含浸し、材料中の空隙をそれらの金属で置換する方法。

論文情報

雑誌名

Journal of Materials Science

論文タイトル

Degradation of carbon fiber-reinforced ultra-high-temperature ceramic matrix composites at extremely high temperature using arc-wind tunnel tests

著者

Noriatsu Koide, Tomoki Marumo, Yutaro Arai, Makoto Hasegawa, Toshiyuki Nishimura, and Ryo Inoue

DOI

10.1007/s10853-022-07861-x

東京理科大学について

東京理科大学
詳しくはこちら