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2025.12.11 Thu UP

第64回電子スピン学会年会 SEST2025において本学大学院生が優秀ポスター賞を受賞

第64回電子スピン学会年会 SEST2025において本学大学院生が優秀ポスター賞を受賞しました。

受賞者
薬学研究科 薬科学専攻 修士課程1年 棚田 怜央
指導教員
薬学部 薬学科 教授 後藤 了
薬学部 薬学科 助教 槌田 智裕
受賞題目
ESR法及び紫外可視吸収分光法に基づく水溶性カロテノイド類クロシンの有機ラジカル及び一重項酸素への二重反応性
内容
生体では絶えず活性酸素が生成されており、過剰になるとタンパク質や脂質膜を酸化することで酸化ストレスを引き起こす。活性酸素には過酸化水素やスーパーオキシドラジカル、ヒドロキシルラジカル (OH) や一重項酸素 (1O2) 等が存在する。このうちOH1O2については酵素で消去する機構を持たないため、抗酸化物質(AOs)による消去が酸化ストレスの低減には注目されている。従来の方法ではAOsの活性について単一的な評価系での測定が行われていたが、活性酸素種によりその反応機構は異なる。そこで本研究では1O2とラジカルの二つを測定することでより、包括的な活性評価を行うことを目的とした。AOsには水溶性カロテノイドであり、古くから伝統医薬品として様々な用途があることで知られているクロシン(CRO)に着目した。
1O2消去活性についてはSOAC法と呼ばれる系が確立されている。1O2の発生試薬にはEndoperoxideを選択。一重項酸素と反応し分解する1,3-diphenylisobenzofran(DPBF, λmax=413 nm)とAOsの競合反応を紫外可視吸収スペクトルにて経時測定した。AOs濃度依存的にDPBFの分解は抑制されたがDPBFとAOsの吸収波長が重なると、純粋なDPBFの分解を追跡することができない。従来法では413nmにおける吸光度の時間分解について一次式が成立する範囲(5-60分)にて解析を行っているが、本研究では特異値分解によりDPBF成分を分離することに成功した。その結果0-120分にて一次式にてfittingすることができた。AOs1O2の反応速度定数を算出すると1O2消去剤として知られるアスタキサンチン、βカロテンはに対しラジカル消去剤として知られるαトコフェロールやトロロックスが1/12程の強度であったのに対し、CROは1/4倍の強度を維持した。ラジカルと非ラジカルのROSではその反応性が異なることが知られているため、有機ラジカルである1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl Free RadicalとGalvinoxyl Free radicalに対し種々の濃度のAOsを添加した際のESR測定を行った。EC50を算出した結果αトコフェロールやトロロックスに対し、CROは1/10倍ほどの強度を維持していた反面、アスタキサンチンβカロテンは活性を示さなかった。本研究の結果は CRO が広範な ROS を中和できる多機能な抗酸化物質として作用し得ることを示しており、ラジカル捕捉能と 1O2 消去能の双方が求められる 食品、化粧品、医薬品製剤などの応用において、有望な候補であると考えられる。
受賞日
2025年11月22日

関連リンク
第64回電子スピン学会年会 SEST2025
電子スピンサイエンス学会

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