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プラスチック微粒子の質量を精度よく推計
プラスチック微粒子の質量と投影面積の幾何学的関係を解明
愛媛大学
東京理科大学
ポイント
- 国内17河川35地点において5-25mmのメソプラスチック及び5mm未満のマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)を4390個採取して、それら個々の粒子の質量を計測しました。
- プラスチック微粒子の質量と投影面積に有意な幾何学的な関係があることを明らかにしました。
- この関係を用いてプラスチック微粒子の質量を簡便かつ高精度に推計できることを確認しました。
- 本研究成果は水環境中のプラスチック微粒子の存在量の解明や生態影響への解明に貢献できます。
概要
愛媛大学大学院理工学研究科の片岡智哉准教授、ディポネゴロ大学CBIOREのH. Hadiyanto教授、東京理科大学創域理工学部の二瓶泰雄教授らの研究グループは、5-25mmのメソプラスチック及び5mm未満のマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)の質量と投影面積の幾何学的な関係に着目し、プラスチック微粒子の質量推計の高精度化に成功しました。
これまで世界中の海洋・河川・湖沼の水環境でプラスチック微粒子が採取され、個数ベースの濃度やプラスチック微粒子の幾何形状及び材質に基づき、質量推計がなされてきましたが、個々のプラスチック微粒子の質量の精度評価は十分に行われてきませんでした。本研究では、日本国内17河川35地点で採取した4390個のプラスチック微粒子の質量をウルトラミクロ天秤で計測し、粒子の質量と投影面積に有意な幾何学的な関係があることを明らかにしました。さらに、その関係を用いることで、環境中のプラスチック質量濃度を簡便かつ高精度に評価できることを示しました。今後、本研究で示した関係式を用いてプラスチック微粒子の質量を推計することで、水環境中におけるプラスチック収支(陸域からの流出量と海域での集積量の関係)や生態系への影響の解明に貢献することが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Water Research」に掲載されました。
詳細
水環境中において海洋生態系への残留性有機汚染物質の”運び屋”として機能するプラスチックは、我々が生活する陸域から海域へ流出し続けています。特に、環境中で劣化・破砕して生成された5-25mmのメソプラスチックや5mm未満のマイクロプラスチック(以下、プラスチック微粒子)は、低次から高次までの多様な海洋生物への摂食が確認され、生態系への影響が危惧されています。そのため、水環境中でのプラスチック収支(陸域からの流出量と海域での集積量の関係)の把握や生態系への影響評価の調査研究が推進されています。
しかしながら、これらの研究におけるボトルネックは、既報のプラスチック汚染調査の多くがプラスチック個数濃度(単位水量あたりのプラスチック個数)で報告されていることです。また、一部の報告では、個数濃度やプラスチック微粒子の形状・材質からプラスチック質量濃度(単位水量あたりのプラスチック質量)への換算が行われているが、プラスチック質量濃度の精度評価については十分な検証が行われていませんでした。
そこで、本研究では、日本国内17河川35地点で採取した4390個のプラスチック微粒子の質量をウルトラミクロ天秤で直接計測することで、実測ベースでのプラスチック質量濃度を評価しました。さらに、全てのプラスチック微粒子の投影面積を計測することで、質量との間に有意な幾何学的関係があることを明らかにしました。これらの知見を活用してプラスチック微粒子の投影面積から質量への新たな換算式を考案し、既存の換算方法と比較したところ、簡便かつ高精度にプラスチック質量濃度を評価できることを示しました。今後、本研究で示した換算式を用いてプラスチック微粒子の質量を推計することで、水環境中におけるプラスチック収支や生態系への影響の解明に貢献することが期待されます。
論文情報
掲載誌
Water Research
題名
Geometric relationship between the projected surface area and mass of a plastic particle
(和訳)プラスチック粒子の質量と投影面積の幾何学的関係
著者
Tomoya Kataoka, Yota Iga, Rifqi Ahmad Baihaqi, Hadiyanto Hadiyanto, Yasuo Nihei
DOI
研究サポート
環境総合推進費(JPMEERF21S11900、 JPMEERF20231004)、ムーンショット型研究開発事業(JPNP18016)、科研費基盤B(21H01441、 24K00992)
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