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日本農芸化学会2024年度大会において本学大学院生がトピックス賞を受賞
日本農芸化学会2024年度大会において本学大学院生がトピックス賞を受賞しました。
- 受賞者
- 創域理工学研究科 生命生物科学専攻 博士課程1年 元内 省*
- 指導教員
- 創域理工学部 生命生物科学科 准教授 中島 将博
- 受賞題目
- α-1,6-Cyclized β-1,2-glucohexadecaose合成酵素の発見;Xanthomonas属に汎用な新農薬ターゲット
- 内容
-
Xanthomonas属には主要な作物を含む様々な植物に感染する植物病原菌が多様に含まれます。これらの菌はα-1,6-Cyclized β-1,2-glucohexadecaoseというグルコース16個が環状に連なった糖鎖を合成し、この糖鎖を合成できないと感染できないことが知られています。しかし、この糖鎖の合成を行う酵素は同定されていませんでした。本研究ではXanthomonas campestrisという植物病原菌から、β-1,2-glucanをα-1,6-Cyclized β-1,2-glucohexadecaoseに変換する酵素 (XccOpgD)を発見しました。XccOpgDのホモログ(アミノ酸配列が類似した酵素群)はさまざまな植物病原菌にも存在するため、広く植物への感染を防ぐ阻害のターゲットとなることが期待されます。さらにこの糖鎖合成の阻害戦略は「病原菌の生存の保持」と「病原性の阻害」を両立すると考えられるため、薬剤耐性菌問題の解決に貢献する新規農薬の設計基盤となるかもしれません。
さらに、この酵素の反応は自然界で見つかっている糖鎖合成反応の中で前例のないユニークな機構を有しており、糖鎖合成への酵素利用の可能性を大きく拡大するものと言えます。
- 受賞日
- 2024年3月24日
*所属/学年は発表当時(2023年度)のものです。
関連リンク
日本農芸化学会2024年度大会
公益社団法人 日本農芸化学会
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