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漁師の経験を深層学習が実現!
~深層学習を用いて甲羅の背側から性判別に成功、鍵は漁師からの一言~
研究の要旨とポイント
- ケガニの雌雄は腹側の形態で容易に判別できるが、背側の形態に雌雄で明確な違いはない。しかし、漁師は背側をみて判別が簡単だと語る。
- 深層学習を用いてケガニの腹側の画像からのみならず背側の画像から性判別を実現した。
- ケガニの性判別を高速にかつ正確にでき、ケガニの雌雄を背側の観察だけで見極めることはケガニ漁にとって有用であり、メスの乱獲を防ぐうえでも重要な技術である。
研究の概要
東京理科大学先進工学部電子システム工学科の佐竹信一教授、植木祥高准教授、同大学教養教育研究院北海道・長万部キャンパス教養部の竹内謙教授、金沢大学の豊田賢治特任助教、神奈川大学の大平剛教授らによる共同研究グループは、ケガニ(Erimacrus isenbeckii (Brandt,1848))のオスとメスの判定を甲羅の画像から深層学習を用いて明らかにしました。
本研究成果は、2023年11月13日に国際学術誌『Scientific Reports』のオンライン版に掲載されました。
研究の背景
ケガニは日本において高級食材として珍重されています。北海道では本種の漁獲は厳格に制限されており、オスは甲長が8.0 cm以上のみです。特に、メスの捕獲は研究目的で特別な申請をして許可を得た以外は全面禁止となっています。捕獲するうえで雌雄の判定を即座にできることは漁船上の限られた時間と船上のスペースにおいて重要です。船上の漁師においては長年の経験により目視による雌雄判定を可能としています。ケガニの雌雄は外見で見極めることは捕獲をするうえで有用であり、メスの乱獲を防ぐうえでも重要です。雌雄判定は腹側においては生殖器の形が異なるため目視で容易に判別できますが、捕獲してケガニを置いた場合多くは甲羅側を上にして位置しており、この状態で甲羅側からは目視で雌雄判定することは困難です。
研究成果の詳細
本研究では深層学習を用いてケガニの甲羅側の画像および腹側の画像から雌雄判定を行いました。北海道長万部で捕獲されたオス60匹、メス60匹の写真画像に深層学習(説明可能AI)を適用しました。深層学習のアルゴリズムは、AlexNet、VGG-16とResNet-50のニューラル・ネットワークを使いました。VGG-16が、一番高い正答率になりました。判断根拠として影響している箇所を表すヒートマップは、腹部側で性器の形の近くで強化されました(F-1:98%)(図1)。甲羅側の下部は、オスのヒートマップで上げられました。対照的に、甲羅側の上部は、メスのヒートマップで強く現れています(F-1:95%)(図2)。深層学習アルゴリズムに基づく甲羅側の画像認識は、目視検査による性判別より正確にできるようになりました。
今後の展開
これらの知見から、従来目視では判別できない甲羅側において深層学習を用いることで判別が可能となりました。ケガニは重要な水産資源であり、その資源保護を遂行する上で深層学習による雌雄判別が可能であることは重要な知見であるだけではなく、効率的な畜養技術の開発にも役立てられます。さらに本成果である深層学習のアルゴリズムは他種のカニにも適用でき、カニの雌雄判別の効率的な方法の確立に寄与できると考えられます。
a.オス

b.メス

図 1:腹側のケガニの写真と深層学習の判断根拠の可視化
上段がオス、下段がメス。ヒートマップにおいて性器の周囲が強く現れる。
a.オス

b.メス

図 2:甲羅側のケガニの写真と深層学習の判断根拠の可視化
上段がオス、下段がメス。ヒートマップにおいてオスは下部、メスは上部に強く現れる。
論文情報
雑誌名
Scientific Reports
論文タイトル
Gender identification of the horsehair crab, Erimacrus isenbeckii (Brandt, 1848), by image recognition with a deep neural network
著者
Yoshitaka Ueki, Kenji Toyota, Tsuyoshi Ohira, Ken Takeuchi, Shin-ichi Satake
DOI
佐竹研究室
植木研究室
竹内研究室
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