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2023.05.26 Fri UP
科学技術における知的⽣産活動と⽣成系AIの利⽤について
標記のことについて、4月28日付で本学学生に向けて以下のとおりメッセージを掲載しておりますので、お知らせいたします。
科学技術における知的⽣産活動と⽣成系AIの利⽤について
科学技術における知的⽣産活動は、過去の真理や事実を理解し、それらを⽣み出した先駆者への畏敬の念とともに、それらを客観的事実として正確に引⽤したうえで、⾃ら新たな真理、事実、価値を⽣み出すプロセスであり、そこから得られる⽣成物は、⾃らが創作したものでなくてはなりません。とはいえ、情報科学技術の進歩は、このプロセスの⼀部の作業を効率化することに⼤きく寄与してきました。例えば、既存の研究成果の調査や⽂献の検索などは、従来に⽐べて圧倒的に効率化されています。学習型情報処理であるAIの活⽤は、その延⻑上にあるとも⾔えます。科学技術に携わる者は、この知的⽣産活動の中で、AIをどのように活⽤するか、あるいはどのような場⾯で使うべきでないかについて、⾼い倫理観と主体性を持って判断していく必要があります。このことにより、この技術の発展に寄与し、この技術の未来を適切な⽅向に導くことが求められていると思います。最近、ChatGPTに代表される⽣成系AIが注⽬されています。⽣成系AIは、与えられた質問に対し、過去のデータに基づく機械学習の結果として回答を⽣成しますが、質問内容によってはかなり的確な回答を出⼒することがあります。しかし、現状では事実に基づき適切な判断のもとに回答が導き出されたのかを検証することが難しく、回答の妥当性を確かめることは⼀般に困難です。また、他⼈のデータや記述を無断で使⽤したり、⼊⼒した個⼈情報や機密情報が流出したりするリスクがあります。従って、⽣成系AIの回答を適切に活⽤するためには、現状では⾼い倫理観とともに質問内容に関する⾼度に専⾨的な判断⼒が必要不可⽋であり、論⽂、レポートなどの記述に⽣成系AIの回答をそのまま利⽤することは避けるべきです。まして、専⾨家としての能⼒が未成熟な学⽣が、授業の課題対応などのために利⽤すると、専⾨家として⾝に付けるべき能⼒獲得の障害となる恐れがあります。
こうした問題のある⼀⽅で、問題解決に当たって参考になる回答が⽣成されることも少なくないことから、本学においては学⽣が⽣成系AIを利⽤することを全⾯的に禁⽌することは現時点では考えていません。しかし、回答がそもそも不正確である可能性が否定できないこと、不⽤意に利⽤すると剽窃や情報流出、学習効果の阻害などのリスクがあることを認識し、利⽤の可否を含めた慎重な判断が必要です。学⽣の皆さんは、この技術を適切に扱い、⾃らが⽣成系AIによって⽣成された回答の適否を判断できる専⾨性を⾝に付けることが⼤切です。
⽣成系AIは⼀般の利⽤が開始されてから、まだあまり時間が経過しておらず、今後の機能やリスクコントロールの発展について、⾒極めていく必要があると考えています。
2023年4月
東京理科大学
学長 石川 正俊
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