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2022.07.06 Wed UP

個性的な名前は1980年代から40年間にわたって増加している
~地方自治体の広報誌に掲載された新生児の名前を分析~

研究の要旨とポイント

  • 地方自治体の広報誌に掲載された、1979年から2018年に生まれた新生児の名前を対象に、個性的な名前の割合の経時的変化を分析しました。
  • 分析の結果、個性的な名前の割合は40年間にわたって増加していました。個性や他者との違いを重視し強調する方向に、日本文化が徐々に変容していることを示唆しています。
  • 先行研究で示されていた2000年代以降だけでなく、1980年代から個性的な名前は増加していました。個性的な名前の増加は、近年の新しい現象ではなく、少なくとも40年前から見られる現象と考えられます。
  • 本研究結果は、日本における名前や名づけの変化だけでなく、日本社会・文化の変容の理解にも貢献します。

東京理科大学教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部の荻原祐二助教と一橋大学大学院経営管理研究科の伊藤篤希研究員は、地方自治体の広報誌に掲載された、1979年から2018年に生まれた新生児の名前を分析し、1980年代から40年間にわたって、個性的な名前の割合が増加していることを明らかにしました(図1)。

これまでの研究では、企業が公開している2004年から2018年に生まれた新生児の名前データを分析することによって、個性的な名前の割合が増加していることが示されてきました。しかし、長期的な変化については分析されておらず、2000年代以前から個性的な名前の割合が増加しているかは検討されていませんでした。また、広義で個性的な珍しい名前を意味する「キラキラネーム」という言葉が2010年頃から一般的にも広く使用されるようになりました。そうした個性的な名前の増加は、ここ10年間程で生じ始めた新しい現象なのか、それともそれ以前から見られる現象なのかは明らかではありませんでした(図1)。

そこで本研究では、一定の条件を満たした地方自治体の広報誌に掲載された、1979年から2018年に生まれた新生児の名前約6万件を対象に分析を行いました。各自治体で重複していない名前の割合を年ごとに算出し、その経時的な変化を分析しました。

その結果、1980年代から40年間にわたって、個性的な名前の割合が増加していることが明らかになりました。2000年以降と以前で変化のパターンには違いが見られませんでした。個性的な名前の増加は、少なくとも40年前から見られる現象であると考えられます。

本研究は、これまで検討されてこなかった2000年代以前の個性的な名前の増加を、広報誌に掲載された実際の名前を用いて明らかにしました。この知見は、個性や他者との違いをより強調する方向に日本社会・文化が変容していることを示しており、日本における名前や名づけの変化だけでなく、日本社会・文化の理解に貢献します。

本研究成果は、2022年6月22日に国際学術雑誌『Current Research in Ecological and Social Psychology』電子版に掲載されました。

個性的な名前は1980年代から40年間にわたって増加している~地方自治体の広報誌に掲載された新生児の名前を分析~

図1 研究結果の概要

研究の背景

これまでの研究では、企業が公開している2004年から2018年に生まれた新生児の名前データを分析することによって、個性的な名前の割合が増加していることが示されてきました(e.g., Ogihara, 2021; Ogihara et al., 2015)。この分析は、アメリカや中国と異なり、日本では名前の包括的・組織的なデータベースが存在していないために行われていました。そのため、長期的な変化については分析されておらず、2000年代以前から個性的な名前の割合が増加しているかは検討されていませんでした。個性的な名前の増加は、2000年代以前は見られず、2000年代以降になって初めて見られるようになった現象である可能性もあります。関連して、広義で個性的な珍しい名前を意味する「キラキラネーム」という言葉が2010年頃から一般的にも広く使用されるようになりました。こうした変化が示す通り、個性的な名前の増加はここ10年間程で生じ始めた新しい現象なのかもしれません。個性的な名前の割合が増加しているかどうかを検討することは、日本における名前や名づけの変化だけでなく、個性や他者との違いをより強調する方向への日本文化の変容を理解することにも貢献します。

そこで本研究では、先行研究で用いられた名前データではなく、地方自治体の広報誌に掲載された新生児の名前を収集することで、40年間というより長期間にわたって、個性的な名前の割合の経時的変化を検討しました。妥当な分析を行うために必要な条件を満たした地方自治体の広報誌を収集し、掲載されていた1979年から2018年に生まれた新生児の名前約6万件を対象に分析を行いました。具体的には、各自治体で重複していない名前の割合を年ごとに算出し、その経時的な変化を分析しました。

Ogihara, Y. (2021). Direct evidence of the increase in unique names in Japan: The rise of individualism. Current Research in Behavioral Sciences, 2, 100056. https://doi.org/10.1016/j.crbeha.2021.100056

Ogihara, Y., Fujita, H., Tominaga, H., Ishigaki, S., Kashimoto, T., Takahashi, A., Toyohara, K., & Uchida, Y. (2015). Are common names becoming less common? The rise in uniqueness and individualism in Japan. Frontiers in Psychology, 6, 1490. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.01490

研究結果の詳細

次の3つの条件を満たす広報誌を、全国各地の地方自治体ウェブページから収集しました:1) 新生児の名前の表記と読みが明記されている、2) 新生児の名前を1年間に30件以上掲載している、3) 新生児の名前を25年間以上同一条件で掲載し続けている。それぞれの点について特有の困難さがあり、これらすべての条件を満たす広報誌を見つけることは容易ではありませんでした。例えば、1) 古い広報誌には、名前の表記はあるが、読みが記されていないことが多い、2) 出生数が大幅に低下しているため、新しい広報誌では、年間掲載数が30件に満たないことが多い、3) 個人情報に対する考え方の変化もあり、新生児の名前の掲載方法を変更している自治体が多い、ことが挙げられます。それでも、北海道から九州にわたる全国から、都市部・地方、内陸部・沿岸地域など、多様な地方自治体が発行する10の広報誌を分析対象としました。

これらの広報誌に1979年から2018年に掲載された新生児の名前58,485件を分析しました。これらの名前は、出生届によって地方自治体に提出されたものであることから、実際に存在します。

まず、自治体内で1年間に他の新生児の名前と重複していない名前の割合を算出しました。そして、それらの経時的な変化を分析しました。さらに、1年間単位だけでなく、当該の1年間とその前後1年間ずつを含めた3年間単位でも、この分析を実施しました。

その結果、どちらの分析においても、個性的な名前の割合は増加していることが明らかになりました。よって、2000年代以降だけでなく、1980年代から40年間にわたって、個性的な名前が増加していることが示されました。「キラキラネーム」という言葉が広く使用されるよりもずっと以前から、個性的な名前は増加していることが分かりました。個性的な名前の増加は、少なくとも40年前から見られる現象であると考えられます。

過去と比べて、近年の親は子どもにより個性的な名前を与えており、個性や他者との違いを重視し強調する方向に、日本文化が変容(個人主義化)していることが示唆されます。こうした日本文化の個人主義化を示す知見は、家族構造や価値観の個人主義化を示す知見とも一致しています。

また、先行研究(e.g., Ogihara, 2021; Ogihara et al., 2015)で報告されていた2000年代以降における個性的な名前の増加が、再度確認されました。同一の現象が、先行研究とは異なるデータによっても示されたことになり、日本における個性的な名前の増加は頑健な知見と言えます。

さらに、先行研究で報告されていた、女児において男児よりも個性的な名前の増加速度が早いという現象が、再度確認されました。男児と比べて、女児に対して個性的な名前を与える親の増加率が大きく、個性や他者との違いを強調する傾向がより高まっていると考えられます。

今後は、個性的な名前を人々がどのように評価しているのかや、新型コロナウイルスの蔓延が名づけに与えた影響などについても検証し、新生児の名前・名づけと日本社会・文化の変容について、さらに詳細な検討を行っていきたいと考えています。

論文情報

雑誌名

Current Research in Ecological and Social Psychology

論文タイトル

Unique names increased in Japan over 40 years: Baby names published in municipality newsletters show a rise in individualism, 1979-2018

著者

Yuji Ogihara & Atsuki Ito

DOI

10.1016/j.cresp.2022.100046

論文リンク

https://doi.org/10.1016/j.cresp.2022.100046

※本研究は、日本学術振興会による科学研究費(若手研究 19K14368)の助成を受けて実施したものです。

※論文はオープンアクセスですので、どなたでもお読み頂けます。適切な方法に従っていれば、図表を掲載して頂くことも可能です。

※本リリースにおいて用いられている図も、適切な方法に従っていれば、掲載して頂くことが可能です。

※記事や番組等において紹介して頂く際には、論文情報の説明や論文へのリンクを可能な限り掲載して頂くことができますと大変幸いです。

発表者

荻原祐二 東京理科大学 教養教育研究院 神楽坂キャンパス教養部 嘱託助教 <筆頭著者 兼 責任著者>

伊藤篤希 一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 研究員(日本学術振興会 特別研究員PD)

※著者には開示すべき利益相反はありません。

※報道原稿のうち、研究内容の事実関係および取材時の発言内容に該当する部分の正確性について、公表前に確認させて頂くことができますと大変幸いです。

荻原 祐二 助教

大学公式ホームページ:https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?6FD9
個人ホームページ:https://sites.google.com/site/yujiogiharaweb/home

東京理科大学について

東京理科大学:https://www.tus.ac.jp/
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