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本学学生が第31回神経行動薬理若手研究者の集い 最優秀発表賞を受賞
本学学生が第31回神経行動薬理若手研究者の集い 最優秀発表賞を受賞しました。
- 受賞者
- 薬学部 薬学科 学部6年 吉岡 寿倫
- 指導教員
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薬学部 薬学科 教授 斎藤 顕宜
薬学部 薬学科 助教 山田 大輔 - 受賞題目
- 選択的オピオイドδ受容体作動薬KNT-127によるマウス抗うつ様作用機序の解明
- 内容
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2022年3月6日に開催された行動薬理研究会第31回神経行動薬理若手研究者の集いにおける発表、「選択的δオピオイド受容体作動薬KNT-127のマウス抗うつ様作用機序の解明」が最優秀発表賞を受賞しました。
δオピオイド受容体(DOP)は、速効性かつ安全性の高い新規うつ病治療薬の創薬ターゲットとなる可能性が示唆されています。我々は以前より、選択的DOP作動薬KNT-127がげっ歯類において抗うつ様作用を示すことを報告してきましたが、その詳細な作用機序は未解明のままでした。
抗うつ薬の代表的スクリーニング系である強制水泳試験(FST)において、KNT-127の投与によりマウスの無動時間が有意に減少したことから、その抗うつ様作用が確認されました。一方、DOP阻害剤naltrindole、mTOR阻害剤rapamycinまたはPI3K阻害剤LY294002を脳室内に前処置したところ、KNT-127の抗うつ様作用が消失しました。また、KNT-127は内側前頭皮質において、mTORシグナル関連タンパク質Aktおよびp70S6Kのリン酸化を亢進させました。次に、内側前頭皮質の腹側領域である前頭前野下辺縁皮質(IL-PFC)にKNT-127を両側局所投与したところ、FSTにおける無動時間が減少しました。さらに、パッチクランプ法においてKNT-127を灌流処理したところ、IL-PFCにおけるmEPSCの発火頻度の増加およびmIPSCの発火頻度の減少が認められ、それらの変化はrapamycinの前処置によって阻害されました。
以上の結果から、選択的DOP作動薬KNT-127は、マウスIL-PFC領域におけるGABA作動性神経において、PI3K-Akt-mTOR-p70S6Kシグナル経路を介してGABAの放出を抑制すること、さらにこれらのシグナル経路がIL-PFCのグルタミン酸作動性神経系を賦活することで、抗うつ様作用を示すことを明らかにしました。
なお本研究で用いられた化合物“KNT-127”は、筑波大学統合医科学研究機構の教授長瀬博先生との共同研究から創出された新規なDOP作動薬です。KNT-127の発見により、他社のオピオイドδ受容体作動薬が達成できなかった痙攣・カタレプシーといった副作用の分離が可能となり、オピオイドδ受容体作動薬の臨床応用を可能としました。本研究成果は、新規抗うつ薬の創薬ターゲットとしてのDOPの作用機序の全解明に繋がると同時に、今後のDOP作動薬の臨床応用へ向けた大きな足掛かりになると期待されます。
- 受賞日
- 2022年3月6日
■ 第31回神経行動薬理若手研究者の集い
https://ynbp31.wixsite.com/fukuoka/
■ 斎藤研究室
研究室のページ:https://yakurisaitohlab.jimdofree.com/
斎藤教授のページ:https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?7017
山田助教のページ:https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?703E

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