ニュース&イベント NEWS & EVENTS
本学大学院生が第145回日本薬理学会関東部会にて優秀発表賞(ポスター発表)を受賞
本学大学院生が第145回日本薬理学会関東部会にて優秀発表賞(ポスター発表)を受賞しました。
- 受賞者
- 薬学研究科 薬科学専攻 修士課程2年 白方 基揮
- 指導教員
-
薬学部 薬学科 教授 斎藤 顕宜
薬学部 薬学科 助教 山田 大輔 - 受賞題目
- 文脈的恐怖条件づけ試験における選択的オピオイドδ受容体作動薬の再固定化に対する影響
- 内容
-
【目的】心的外傷後ストレス障害(PTSD)等、恐怖記憶関連疾患の治療法の一つである暴露療法は、恐怖記憶の消去学習に基づいたものであり、有効性が認められているものの、患者の負担が大きいため、新たな治療法の開発が求められている。消去学習促進作用を示すD-cycloserineは、暴露療法補助薬として期待されているが、消去学習促進作用に加えて、恐怖の増強につながる再固定化と呼ばれる過程をも促進するため問題となっている。我々はこれまでに、選択的オピオイドδ受容体(DOP)作動薬KNT-127が消去学習促進作用を示すことを報告してきた。そこで本研究では、DOP作動薬の恐怖関連疾患治療薬としての有効性を検証するため、恐怖記憶の再固定化に対するKNT-127の作用について検討を行った。
【方法】C57BL/6Jマウス(7-8週齢)を用いて文脈的恐怖条件づけ試験を行った。(1日目:条件づけ)実験箱内で電気刺激(0.8 mA, 2 s, 3回)を与え、条件づけを行った。〈2日目:想起〉1日目と同じ実験箱へ2分間再暴露し、恐怖記憶を想起させた。薬物(KNT-127およびSNC80:1, 3, 10 mg/kg)は再暴露直後に皮下投与した。〈3日目:テスト〉恐怖記憶の程度を評価するため、実験箱へ2分間再暴露した。恐怖記憶の程度はすくみ行動時間を指標に評価した。
【結果・考察】KNT-127投与により、3日目のテストにおけるすくみ行動率が濃度依存的かつ有意に低下した。この作用はDOP拮抗薬Naltrindole (NTI)の前処置により消失した。一方、SNC80投与では3日目のテストにおけるすくみ行動率は変化しなかった。以上の結果より、KNT-127はDOP受容体を介して恐怖記憶の再固定化を阻害すること、SNC80は再固定化に影響しないことが示唆され、選択的DOP作動薬の再固定化に対する作用はその母骨格により異なる可能性が考えられた。これまでの知見を合わせると、KNT-127は消去学習を促進するだけでなく、再固定化を阻害するという特徴的な薬効を示す。このことから、KNT-127をリードとする化合物は、恐怖関連疾患に対する暴露療法において、D-cycloserineのような副作用をもたない新規治療薬候補として有用である可能性が考えられる。
- 受賞日
- 2021年10月9日
■第145回日本薬理学会関東部会
https://pharmacology.pupu.jp/145kanto/
■日本薬理学会
https://pharmacol.or.jp/
■斎藤研究室
研究室のページ:https://yakurisaitohlab.jimdofree.com/
斎藤教授のページ:https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?7017
山田助教のページ:https://www.tus.ac.jp/academics/teacher/p/index.php?703E
関連記事
-
2024.02.29
認知機能亢進作用に対する内因性オキシトシンの影響を神経回路レベルで解明
~認知症治療の新たな道を切り拓く~研究の要旨とポイント 本研究グループは、愛情ホルモンとして知られるオキシトシンが、アルツハイマー型認知症の治療薬候補として有望であることを2020年に世界で初めて報告し、臨床応用を目指して研究を進めています。 しかし、内因性オキシトシンが認…
-
2024.02.22
光遺伝学的手法によりオピオイドδ受容体を介した抗不安作用の作用機序を解明
~新たな作用機序で既存薬抵抗性症例への効果も期待~研究の要旨とポイント オピオイドδ受容体作動薬KNT-127は精神疾患の新規治療薬として注目されていますが、オピオイドδ受容体を介した抗不安作用に関する作用機序は部分的にしか解明されていませんでした。 今…
-
2023.10.05
第46回日本神経科学大会において本学学生・大学院生らがジュニア研究者ポスター賞を受賞
掲載:2023年8月9日 更新:2023年10月5日 第46回日本神経科学大会において、本学大学院生らがジュニア研究者ポスター賞を受賞しました。 受 賞 者 : 薬学研究科 薬科学専攻 修士課程1年 江崎 未来 指導教員 : 薬学部 薬学科…