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全国初 産学官による消防隊員の教育訓練に特化したVR共同研究開発
(東京理科大学・東京大学・株式会社 理経・横浜市が連携)
〜消防隊員の教育訓練に特化したVR消防教育訓練シミュレーションシステム構築のための火災燃焼実験を実施〜
- 東京理科大学理工学部建築学科大宮喜文教授は、東京大学・株式会社 理経・横浜市消防局と連携し、消防隊員の教育訓練に特化した【VR消防教育訓練システム】を新たに構築するため、2月28日及び3月6日に、本学火災科学研究所の実験施設で実火災に近い条件を設定した燃焼実験を実施し、データを収集しました。今後、実測データをVRに移行して行うシステム開発は、国内初となります。尚、実験はニッタン株式会社の技術支援を受け、行われました。
【研究の背景】
全国の消防本部の傾向として、知識や経験を積んだベテラン消防隊員が減少し、経験の浅い若年層の消防隊員の割合が急速に増加している一方で、火災件数は毎年6%から8%程度の減少傾向にあり、消防隊員が火災現場で経験を積むことが難しくなってきているという状況にあります。
消防隊員の活動は、知識だけでなく火災現場の経験を積むことでしか得られないものもあります。そこで、今回開発するVR消防教育訓練システムを活用し、限りなく実際の現場に近い環境下で経験値を積み、殉職や受傷事故を防止し、消防活動の質の向上を図ります。
- 《2018年度消防現勢(全国消防長会調べ)》
- 18歳から30歳までの若年層の割合 ⇒ 33.04% (横浜市:29.4%)
- 50歳から59歳までのベテラン層の割合 ⇒ 18.49% (横浜市:25.8%)
【共同研究開発体制】
VR研究・開発 | 東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター東京大学大学院情報理工学系研究科廣瀬研究室 教授 廣瀬 通孝、准教授 雨宮 智浩、助教 青山 一真 |
---|---|
燃焼実験 | 理工学部 建築学科 教授 大宮 喜文 |
教育訓練研究・検証 | 横浜市消防局 消防訓練センター 管理・研究課 |
VR製品開発 | 株式会社 理経 |
【火災燃焼実験の概要】
東京理科大学では、【VR消防教育訓練システム】について科学的なバーチャル火災現象の再現を目指し、本学火災科学研究所の実験施設で実火災に近い条件を設定した燃焼実験を実施し、データを収集しました。実験では、温度や煙の濃度の分布、火炎の挙動などを測定しました。これにより、時間経過とともに推移していく火災現象を正確に捉えながら、消火活動との相互作用も含めて再現していきます。
![]() 燃焼実験のイメージ |
![]() 燃焼実験のデータ測定 |
【今後の展開】
- 複数人が協調作業できるVR環境
実災害で消防隊はチームで行動するため、それぞれの隊員の視点を維持しながらチーム単位で活動できるようシステムを構築します。これにより、VR空間内で複数人の活動したデータを記録しておくことで訓練実施後に反省点を確認することや経験豊富なベテラン隊員の行動を追体験することが可能になります。燃焼実験で取集したデータは、よりリアルなVR構築に利用します。
- 消防隊員が活動時の判断に活用している感覚情報の特定
火災現場における消防隊の活動では、人間の感覚器官からの情報も重要になってきます。そこで、実際にどのような感覚情報を基に判断し行動しているのかなど、感覚再現デバイス(実際と同様な感覚を得ることができる装置)を用いてシミュレーションしていきます。
感覚情報を通して得られる状況判断のコツや非言語的なノウハウを抽出していき、併せて、心理的および医学的観点からの影響についても研究します。 - ベテラン消防隊員による消火活動時の技術や思考、判断力をVRが変わって若手隊員に伝授。
横浜市消防局 消防訓練センターでは、前述のように実際の火災現場を再現可能な【VR消防教育訓練システム】を用い、経験の少ない若手隊員の教育に導入・活用することで、第一線の消防隊員として必要な経験・知見、ノウハウの伝授、教育に利用する予定です。
東京理科大学では、火災現場で起こりうる燃焼事象を科学的データとして計測・分析し、同システムの精度向上に寄与することを目指します。
大宮研究室
大宮教授 大学公式ホームページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?1a30
東京理科大学について
東京理科大学:https://www.tus.ac.jp/
ABOUT:https://www.tus.ac.jp/info/index.html#houjin
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