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本学学生が第30回神経行動薬理若手研究者の集いにおいて優秀発表賞を受賞
本学学生が第30回神経行動薬理若手研究者の集いにおいて優秀発表賞を受賞しました。
- 受賞者
- 薬学部 生命創薬科学科 4年 河南 絢子
- 指導教員
- 薬学部 薬学科 教授 斎藤 顕宜
- 受賞題目
- 選択的オピオイドδ受容体作動薬KNT-127による恐怖記憶消去学習促進作用の脳内メカニズム
- 内容
- 恐怖記憶の消去学習は、過度な恐怖を抑制する記憶過程の一つである。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不安症等の精神疾患では、この消去学習の異常が報告されており、消去学習を促進する薬物はこれら疾患の治療薬として有用であると考えられている。当研究室ではこれまで、選択的オピオイドδ受容体(DOP)作動薬KNT-127が消去学習促進作用を持つことを報告してきた1)。しかし、その詳細な脳内メカニズムは不明であった。そこで本研究では、KNT-127の作用部位の同定を目的として、ウエスタンブロッティング法、脳内局所投与法を用いて検討を行った。
雄性C57BL/6Jマウスを用いて文脈的恐怖条件づけ試験を行った。1日目に実験箱内で電気刺激を与え条件づけを行い、2日目と3日目には1日目と同じ実験箱にそれぞれ6分間再暴露した。恐怖記憶の程度は、各試験中にマウスが示したすくみ行動時間を計測することにより評価した。また、2日目の再曝露30分前にKNT-127を皮下投与した動物から、再暴露の60分後に扁桃体、海馬、内側前頭前野を採取し、それぞれの領域におけるリン酸化ERKと総ERKの比率をウェスタンブロット法により検討した。次に、KNT-127は2日目の再曝露30分前に皮下投与、または脳内(扁桃体、腹側海馬および内側前頭前野の前辺縁皮質)に局所投与した。また、選択的DOP拮抗薬Naltrindole(NTI)は、KNT-127投与の30分前に皮下投与した。
KNT-127を皮下投与したマウスは、2日目の再曝露におけるfreezing率を有意に低下させ、その効果は3日目の再曝露時においても確認できた。この効果はNTIにより抑制された。したがってKNT-127は、DOPを介して消去学習を促進させることが示唆された。さらに、2日目の再暴露60分後に扁桃体と海馬におけるERK1/2のリン酸化率が有意に上昇していた。一方、内側前頭前野では変化がみられなかった。したがって、KNT-127の消去学習促進作用の経路には、扁桃体と海馬におけるERK1/2の経路が関係していることが示唆された。そこで次に、KNT-127を扁桃体内に局所投与したところ、2日目の再曝露におけるfreezing率は用量依存的かつ有意に低下し、その効果は3日目の再曝露時においても確認できた。一方、KNT-127を腹側海馬内に局所投与したところ、2日目と3日目の再暴露におけるfreezing率には変化がなかった。したがって、KNT-127の再曝露時には扁桃体におけるERK1/2のリン酸化を介して消去学習を促進する可能性が示唆された。
【参考文献】1) Yamada et al., Neuropharmacology 2019, 160:107792. - 受賞日
- 2021年03月07日
*所属/学年は論文発表当時(2020年)のものです。
■第30回神経行動薬理若手研究者の集い
https://www.pharm.hokudai.ac.jp/yakuri/ynbp30/
■斎藤研究室
研究室のページ:https://yakurisaitohlab.jimdofree.com/
斎藤教授のページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?7017
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