2020.05.19 Tuesday

本学教員らの論文が「Physical Review B」誌のKaleidoscopeに選出

本学教員らの論文が「Physical Review B」誌のKaleidoscopeに選ばれました。Kaleidoscope(英語で万華鏡の意)は、Physical Review 各誌において発表された論文の図から、毎月10件程度、主に審美性を基準に選出されます。当雑誌のトップページで掲載される他、米国物理学会会員へ配布されるカレンダーにも採用されるため、注目を集める論文になることが多いと言えます。

理学研究科 応用物理学専攻 2018年度修士課程修了 佐々木 広太
理学部第一部 応用物理学科 講師 杉本 貴則
理学部第一部 応用物理学科 教授 遠山 貴巳
Magnetic excitations in magnetization plateaus of a frustrated spin ladder
https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.101.144407
2008年ノーベル賞受賞の南部陽一郎博士が提唱した「対称性の自発的破れ」は、現代物理学において重要な概念である。これは、本来、系に存在するはずの対称性(*1)が、(長距離相互作用や幾何学的競合、非線形作用などの)副次的効果によって自発的に消失する現象である。この概念は、1979年ノーベル賞のワインバーグ・サラム理論(電磁気力と弱い力の統一理論)や2013年ノーベル賞のヒッグス機構(物質に質量を与える機構)に応用されている。一方、「対称性の自発的破れ」は、通常、連続対称性(*1)に対して適用され、離散対称性(*1)が自発的に消失した場合の議論は、これまでほとんどなされていない。本研究は、この議論に一石を投じるものである。図は、フラストレート量子磁性体(*2)における磁場中のダイナミクスを表したものである。我々は、東京大学物性研究所や日本原子力研究開発機構などのスーパーコンピュータを用いて、理論的シミュレーションを行った結果、離散対称性の自発的破れに伴い、新たな磁気準粒子が発現することを発見した。図は、この準粒子スペクトラムを表し、J-PARCなどの非弾性中性子散乱実験で直接観測・比較可能なものとなっている。

*1: 対象とする系に、ある操作を行っても、系が変化しないとき、その系には対称性があるという。例えば、ある対象が、鏡映操作(鏡に映す操作)をしても、その形が変わらない時、この系には鏡映対称性があるという。通常、素粒子物理学が対象にする真空には、空間対称性(空間的にずらしても変化しない性質)や回転対称性(空間を回転しても変化しない性質)、時間反転対称性(時間を向きを反転させても変化しない性質)などが本来存在するとされる。このうち、空間対称性や回転対称性は、ずらす長さや回転する角度など、その操作を連続的に変化させることができる。このような対称性を連続対称性と呼ぶ。一方、時間反転対称性は、反転するかしないかの2通りの操作しか存在しないので、この操作を離散対称性と呼ぶ。
*2: フラストレーションと呼ばれる幾何学的に競合する相互作用を有した量子磁性体。本研究では、BiCu2PO6などの無機結晶などに内在する電子スピンが作る磁気有効模型を対象にした。このような系では、磁場を印加することで、磁化プラトーと呼ばれる、(離散的な)並進対称性の自発破れを引き起こすことが知られている。
Physical Review B
https://journals.aps.org/prb/kaleidoscope/prb/101/14/144407
2020年4月6日

「Physical Review B」誌
米国物理学会(American Physical Society)が発行する権威ある国際学術誌で、固体物理学や物質科学に関する研究成果を掲載しています。
詳細は以下をご覧ください。
https://journals.aps.org/prb/

遠山研究室のページ
大学公式ページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?6942
研究室ページ:https://www.rs.tus.ac.jp/tohyamalab/

杉本講師のページ
大学公式ページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?697b
個人ページ:https://www.rs.tus.ac.jp/sugimoto.takanori/

本学教員らの論文が「Physical Review B」誌のKaleidoscopeに選出

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