私がおすすめする本:書籍一覧

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  • 日本史の謎は「地形」で解ける
    地図上で外出しよう
    日本史の謎は「地形」で解ける
    竹村 公太郎
    PHP研究所
    2013年
    教員のコメント

    歴史は過去を生きた人々の経験であり、それは現在の我々が直面する問題に対しても解決の糸口となることが多くあるため、歴史関連の書籍を好んで読むことが多いのですが、その中でもこの本をお勧めする理由は、日本史の問題について地形という別の視点から解決していこうという試みが新鮮であるからです。歴史書ではないので真偽のほどは不明ですが、そこから出された答えは大変興味深く面白いです。章ごとに一つの謎を解決していく形式になっているので、テンポよく読めますし、自身の興味のある章から読むのも良いでしょう(江戸幕府を開いた戦国武将ではない、日本史上最大の国土プランナーとしての徳川家康についてぜひ読んでみてください)。読み終わった後は、その土地に行ってみたくなり、私も織田信長になったつもりで逢坂山トンネルを通ったりしましたが、今は社会状況が落ち着くまでGoogleマップで想像するしかないでしょうか。続編として「文明・文化篇」、「環境・民族篇」もあるのでじっくりと読みたい人はそちらもお勧めです。多様な解釈ができる点も歴史の面白さであり、勉強になるところです。

    健康・スポーツ科学
    スポーツ精神生理学、睡眠学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • AKIRA 1〜6巻
    東京オリンピックと、繋がれない寂しさと
    AKIRA 1〜6巻
    大友克洋
    講談社
    1984〜1993年
    教員のコメント

    「未来の東京オリンピック」と聞いて多くが思い出すのがこれ。掛け値なしのSF漫画の金字塔。オリンピックに合わせた展覧会『MANGA都市TOKYO』(2020年:2018年にパリで同様の展覧会が開催)でももちろん主役のひとつだった。
    僕らは人よりもちょっとだけ秀でた力が欲しい。その力があれば認められてみんなの中で自分の場所が得られるかもしれない。もっと力があったらみんなの中心にいられるかもしれない。そしてレースではトップに立ちたい。それこそが中心にいる一番の方法。勉強も、運動も、良い大学に入るのも良い会社に就職するのも、「中心」から外れないためじゃないのか。
    もうすぐオリンピックが予定されているのに、人々はバラバラで中心に穴が空いた東京。さて、僕らは結局何を望むのか。何を中心に置くのか。その中心とどう距離をとり、そして繋がっていくのか。鉄雄の切ない渇望と共にAKIRAをめぐる冒険の世界に今こそハマりたい。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • クレーの絵本
    それが本棚にあるだけで風景が違ってくる本
    クレーの絵本
    Paul Klee, 谷川俊太郎
    講談社
    1995年
    教員のコメント

    世界最古の漫画は『鳥獣戯画』ではないかという(怪しい?)説もあるが、我々は絵と言葉を一緒に心に留めつつ物語る技法を時代とともに磨いてきた。親やセンセイの読み聞かせで食い入るように見つめた数々の絵本が個性の古層に眠る経験であるなら、絵画と詩による大人の絵本で新しい層を重ねるのはどうだろうか。
    おうちで寝転んで眺めるだけで良いのだ。詩は「読む」のではなく、気に入ったところを口ずさむものだ。時に鮮やかな、時にどんよりした、あるいは淡い、あるいは明るい、そしてしばしば不安なパウル・クレーの色遣いを愛でつつ、谷川俊太郎独特の言葉のリズムで心を揺らしてみたくなる。現代詩の言葉の連なりのハルモニアを自らの耳にささやいてみないか。
    「金色の魚」の表紙がテーブルの上に無造作に置いてあるだけで、マスクなしの散歩を待ち望む灰色の部屋が明るくなるだろう。そして静かに扉を開くと、まずは静かに微笑む「忘れっぽい天使」(Klee, 1939)がそこにいる。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ターン
    何度でもやり直せるなら、と切実に思う今日この頃
    ターン
    北村薫
    新潮社
    2000年
    教員のコメント

    『Re:ゼロから始める異世界生活』(2012~)『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)などなど、今やタイムリープ(注:繰り返しのないタイムスリップとは区別)はSFの常道だけれど、そのアイデアは最近のものだ。北村薫は『スキップ』『ターン』『リセット』の3部作で、それぞれ、「未来を生きる」「繰り返し生きる」「過去をやり直す」物語を紡いでみせた。『ターン』はその真ん中。著者自身も認めているが、一足早くケン・グリムウッドの『リプレイ』(1986:翻訳1990、新潮社)が出てしまったので、残念ながら日本一だが世界で一番ではない。
    アイデアの原点に遡るのはある種の「概念史」として、そのアイデアに横たわり絡まりまつわる問題を見渡すのに有効だ。ゲームの世界では倒れても途中から再開しやり直しができるその仕組みそのものがある種のタイムリープだが、実に羨ましい。こんなコロナな状況の今、できればタイムリープしてみたい、と思わずにはいられない。そこで、その願望の先にどんな世界があるのかを物語の世界で楽しもう。『リプレイ』(新潮文庫)も併せて読めばもはや君はタイムリープの達人。記憶の保持による「解決策」の試行や実施といった利点だけでなく、起こりうる「問題点」も含めて、その道の知識人。アニメやラノベでチャチな設定を見たら「やり直せ!」と突っ込みを入れるのも思いのままだ。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 虚数の情緒  中学生からの全方位独学法
    コロナで梅雨。数学の窓から世界をのぞいてみたい。
    虚数の情緒  中学生からの全方位独学法
    吉田武
    東海大学出版会
    2000年
    教員のコメント

    部屋の中でぼんやりケータイをいじってもなんだか面白くない。何か新しいことを始めたい。でも、いきなりの冒険は難しい。だったら料理を始めるか、鉢植えを愛でるか、ダイエットビデオを観るか。いやいや、あえて分厚い本にチャレンジして自慢するのはどうだろう。読書に自信があるのなら『カラマーゾフの兄弟』だろうが、ここは『虚数の情緒』。数学から広がる世界を眺めてみよう。
    これは教科書や参考書とは全く違う、読み物としての数学。どうして数学が嫌いになるのかなどの教育論から始まって、歴や数字の歴史、地理や物理、ピタゴラスやパスカル、美の話からアルキメデス、誕生日と確率の話、野球の送りバントの話まで出てくる。さらに、二次方程式を扱っていたと思ったら話が進むとマクスウェル方程式、相対性理論から量子脳の話題まで、縦に横にとバラバラだった世界が順番に繋がっていく。うんちく満載。まさに「全方位」。受験や試験のための数学とは違う、教養としての数学がここにある。
    「指数関数って結局何をやっているんだろう?」と、ぼんやり思っていた高校時代の疑問が、「ああ、まあ、こういうことか」と、一種の数学辞典の趣も感じる。
    タイトルにもなっている「虚数」。それはこの世には実在しない。実在しないものを扱い、実在しないものを使って実在を考えることもできる数学は、まさに科学の言語なのだ。本書を読むと「世界は数学の言葉でできている」(ガリレオ)かも、と信じたくなってくる。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 薔薇の名前
    ショーン・コネリー主演の映画DVDで観て!
    薔薇の名前
    ウンベルト・エーコ (河島英昭訳)
    東京創元社
    1990年
    教員のコメント

    修道院で起きる謎の死。その謎を解くために活躍する主人公。筋はmysteryの王道なのだが、その仕掛けが秀逸。
    記号論理学者エーコーが選んだ主人公ウィリアム(映画でのショーン・コネリーがカッコイイ!)は、「オッカムの剃刀(カミソリ)」(「説明に不要な存在者(概念)は切り捨てるべし」)で有名な論理学者オッカムの友人(ついでにロジャー・ベーコンの弟子)。そう、推理とは論理を正しく使う姿。仮説とその検証の積み重ねが真実へと至る道だ。オッカム的論理・実証と対照的なキリスト教2大会派の衝突。修道院の「自然に反する」歪な共同体。キリスト教思想史へのオマージュと強烈な皮肉。そしてそのオチときたら、アリストテリアン拍手喝采。形而上のmystery(神の啓示)を待ち望む人たちの、mystery(秘教)をめぐる、徹頭徹尾形而下の人間的出来事がそこにある。
    読書が苦手ならまずはDVDで。これは原作でゆっくりたっぷり味わいたくなる仕掛けたっぷりのmystery(推理小説)だ。
    ともかく、この小説の仕掛けはここに並べきれない。エーコーの仕掛けを楽しく読み解くのに、いずれゼミや企画授業で題材にして、歴史や宗教、文学や思想史などさまざまな専門家を呼んで教えを乞い、そこに散りばめられた「記号」を楽しみたい作品でもある。
    *手元に実物がなかったので、DVDのパッケージの写真を掲載します

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的からだづくり
    効率的なカラダづくりのヒント
    究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的からだづくり
    石井直方
    講談社
    2007年
    教員のコメント

    健康・ダイエット・ボディメイク・筋トレ・サプリメントなど、このコロナ禍において益々関心が高まっています。本書は科学的根拠に基づいて身体に対する運動・栄養・トレーニングの関係、効率的なカラダづくりのエッセンス、“正しい”トレーニングについて、専門的な内容も含まれておりますが、非常に分かりやすく解説されており、カラダづくりためのヒントが満載です。筋トレ・ダイエット・栄養・サプリメントに興味のある方におすすめの書籍です。

    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • こちらあみ子
    あどけなくて怖い、でも愛おしい
    こちらあみ子
    今村夏子
    筑摩書房
    2014年
    教員のコメント

    最近読んで心を動かされた小説の中で、比較的短く読みやすいものを1冊おすすめしたいと思います。
    『こちらあみ子』は今村夏子さんの短編小説集ですが、表題作の「こちらあみ子」だけでもぜひ読んでいただきたいです。とても短い作品なのですが、文庫版でわずか120頁あまりの紙数のうちに、主人公あみ子と彼女をとりまく人たちの人生の大波小波がギュッと詰まっていて、読者はとても濃い(疑似)体験をすることになると思います。
    表題の「こちらあみ子」というのは作者がしかけた、ちょっとしたクイズです。その意味の種明かしがされる箇所は1つのクライマックスなので、ぜひそこまで読んでいただきたいです。
    物語は小学生あみ子の視点に寄りそって進行します。あみ子は単に幼いだけでなく常識的でない(ぶっ飛んだ)感性の持ち主なのですが、わたしたち読者はあみ子の眼を通して、彼女が感じる喜びや驚きを味わう一方で、彼女の理解を超えた周囲の状況や大人たちの痛みや悩みも突きつけられ、ぎょっとします。誰も悪くない。でも、とてつもなく痛くて哀しい……。それでも、あみ子は愛おしくてならない存在だし、彼女が愛おしいと思うすべてのものもやっぱり尊い……。そう思わされます。
    ぜひ読んで、いろんなことを感じていただきたいです。あみ子のようなゆっくりしたスピードで生きている人は実際にいますし、(子ども時代を含めて)そういう時期がわたしたちにもあります。けっこうみんなちゃかちゃか急いでて、みんな割かしきちんとしていて、そういうみんなと一緒でないといけないと思わされている社会……。そういうのが辛くなったら、あみ子のことを思い出していただければと思います。

    英語
    英米文学、視覚文化
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 貧乏人の経済学 / Poor Economics
    身近な社会問題も「科学」的に解決しよう
    貧乏人の経済学 / Poor Economics
    アビジット・V・バナジー、エステル・デュフロ / Abhijit V. Banerjee, Esther Duflo
    みすず書房 / Public Affairs
    2012年
    教員のコメント

    貧困を削減したいという想いは世界の多くの人々が共有するところであろう。しかし、現状の開発援助政策が効率的に貧困削減を推し進めているかについては懐疑的な見方も多い。どうしたら効率的な政策を立案できるか。そこで本書が提唱するのが、実験やデータサイエンスといった「科学」的検証に基づいた政策立案である。
    2019年ノーベル経済学賞を受賞した両博士が執筆した本書は、開発援助政策の立案における「科学」的手法の有用性について、具体例を交え論じた大著である。本書を読んだ皆さんは、本学で学ぶ自然「科学」の手法が、実は、社会問題の解決においても有用であることにお気づきになるに違いない。身近な問題の解決にも「科学」を用いて、より良い将来を構築してはいかがだろうか。

    ※この書籍は、本学図書館に電子ブックとして所蔵しています。
    ぜひオンラインでも読書を楽しんでください。
     https://kinoden.kinokuniya.co.jp/tus_library/bookdetail/p/KP00000236

    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 科学の女性差別とたたかう――脳科学から人類の進化史まで
    科学は政治的空白で活動するわけではない
    科学の女性差別とたたかう――脳科学から人類の進化史まで
    アンジェラ・サイニー
    作品社
    2019年
    教員のコメント

    「科学」は、個々人の価値観や文化、政治などの影響を受けない客観的なものだというイメージがあります。もちろんそういう分野もあるでしょう。
    しかし、特に人間や動物、生物を扱うような領域では、それは正しくはありません。科学者も人間であり、性別や人種などについて社会で共有されている価値観や文化から自由ではないからです。というより、人は、かなり積極的に知識を得て距離を取ろうとしない限り、既存の支配的な考え方やモノの見方に無自覚に染まっていると考える方が正しいでしょう。
    本書は、主に医学や脳科学そして生物学などを対象にして、男女の役割分担に関する科学者――主に男性科学者――のバイアスを、当事者へのインタビューも含めて明らかにしています。著者が引用する次の言葉が、本書全体を表しています。「最も頭脳明晰な男性ですら、女性について話しだすと鈍感になることに私は気付いた。ジェンダーの話題には、その他の面では見識のある知性をも鈍らせる何かがある」どのように鈍らされているのでしょうか。「男らしさ」や「女らしさ」についての既存の考え方、文化的・社会的な固定観念と先入観をそのままなぞり、強化する方向で観察・分析・考察が歪められるということです。本書には「共感する女脳とシステム化する男脳」などを含めて、どこかで聞いたことがあるような話が必ず一つは含まれています。
    同じ著者の翻訳に『科学の人種差別とたたかう』という本もありますが、それも含めて、本書は科学と社会の関係を具体的かつ重要な事例に即して考えるための入り口として必読です。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 直感力を高める数学脳の作り方/A Mind for Numbers: How to excel at Math and Science
    効率的な勉強法を知りたくないですか?
    直感力を高める数学脳の作り方/A Mind for Numbers: How to excel at Math and Science
    バーバラ・オークリー(著)/沼尻由起子(訳)
    河出書房新社
    2016年
    教員のコメント

    こんな悩みを持っていませんか?「試験前に教科書を何度も読んだのに、試験の出来がいつも悪い」「授業中、先生に説明されるとよく分かるのに、自分で解いてみると全くできない」「解法を習った問題なら解けるのに、習っていない問題だと途端にできなくなる」「教科書やノートに下線やアンダーラインを引いたのに、試験中にその内容を思い出せない」。もしくはこんな困った習慣を持っていませんか?「試験前はいつも一夜漬けになってしまう」。この本はこうした悩みや習慣を持ったあなた!のために書かれている本です。この本には数学、科学、心理学の専門家が何年もかけて見つけ出した本当に効果のある学び方、そして学び方を学んだ理系の先輩たちの喜びの声やアドバイスが所狭しと並んでいます。「学び方を学ぶ」なんて一見遠回りのように見えるかもしれません。しかし、本書にもあるとおり「考え方を変えれば、脳は変化」(p. 206)します。この変化は今困っているあなたに一生もののスキルを届けてくれますよ。

    英語
    外国語教育、応用言語学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 博士と狂人 / The Professor and the Madman
    言葉に魅せられ、辞書を編む人々の物語(イギリス)
    博士と狂人 / The Professor and the Madman
    サイモン・ウィンチェスター / Simon Winchester
    ハヤカワ文庫/ Harper Perennial
    2006年 /2005年
    教員のコメント

    世界で最も権威のある英語辞書『オクスフォード英語大辞典』(Oxford English Dictionary、以下OED)には、41万語以上が収録されており、それぞれの単語の歴史(いつからどのように使用されてきたのか)が用例とともに掲載されています。この用例採集には数多くの一般人が閲読者として協力しましたが、中でも最大の貢献をしたのはW. C. マイナーという謎の人物でした。マイナーは20年もの長きにわたって、単語の用例をOEDの編集主幹を務めるジェームズ・マレー博士に送り続けます。マレー博士は、マイナーの長年の貢献に感謝を伝えるため、直接彼に会いにいくのですが、そこでマレー博士が知ったマイナーの衝撃の人生とは・・・
    メル・ギブソンとショーン・ペン主演で映画化されています。そちらもオススメ。

    英語
    英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 / Word by Word
    言葉に魅せられ、辞書を編む人々の物語(アメリカ)
    ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 / Word by Word
    コーリー・スタンパー / Kory Stamper
    左右社 / Pantheon
    2020年 /2017年
    教員のコメント

    centerとcentre、theaterとtheatre。なぜ英語にはアメリカ式とイギリス式の2種類の綴り方があるのかご存知でしょうか。
    イギリスからの独立を果たしたアメリカでは、新国家に相応しい「アメリカ英語」の辞書が求められていました。そのような中で、ノア・ウェブスターは1828年に上梓した「アメリカ英語辞典」において、イギリスではcolourと綴られていた単語をcolorとして、centreをcenterとして、新しいアメリカ式綴りで単語を収録したのです。(ちなみに、OED制作に多大なる貢献をしたW.C.マイナーはこのウェブスターの辞書編纂にも携わっていたそうです。)
この本の著者、コーリー・スタンパーは、ウェブスター辞書を生んだアメリカ最古の辞書出版社であるメリアム・ウェブスター社で辞書編集を長年務めた人物。メリアム・ウェブスター社における辞書制作の様子や顧客とのやりとりを紹介しながら、英語の語釈の難解さ、英語という言語の奥深さと面白さを語ってくれます。

    英語
    英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 舟を編む
    言葉に魅せられ、辞書を編む人々の物語(日本)
    舟を編む
    三浦しをん
    光文社
    2011年
    教員のコメント

    「あがる」と「のぼる」の違いは何でしょう?例えば、「山にのぼる」とは言いますが、「山にあがる」とは言いません。この物語は、言葉に「耽溺」した人々が、一つ一つの言葉に真剣に、しかし「冷静かつ執拗」に向き合いながら、一つの辞書を作り上げていく様子を描いたものです。彼らは「辞書は、言葉の海を渡る舟」という信念のもと、日本語を使用する全ての人々が、海のように広く深い日本語という言語の中で溺れずに目的地までたどり着くことができるような舟(辞書)を編んでいきます。この物語を読んだ後には、あなたも国語辞典や広辞苑を開いてみたくなるでしょう。電子版ではなく、紙の辞書を。

    英語
    英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • アンティゴネ
    どうか皆さん、最近、似たような行為が私たちにあったのではないか、いや、似たような行為はなかったのではないかと、心のなかをじっくりさぐって頂きたい。
    アンティゴネ
    ベルトルト・ブレヒト作 谷川道子訳
    光文社
    2015年
    教員のコメント

    はるか昔のテーバイで、二人の王子が王位をめぐって殺し合った。摂政のクレオンは、国を守って死んだ王子は埋葬するが、攻め込んだ王子の遺体は野晒しにせよ、悲しむことも禁ずるというお触れを出す。王子たちの妹アンティゴネは、野晒しにされた兄に土をかけて弔い、法を犯したかどで生きたまま岩牢に幽閉される。
    三大悲劇詩人の一人ソフォクレスのギリシア悲劇『アンティゴネ』は、何世紀もの間読み継がれ、翻訳され、上演され、法と正義、国と家族、生と死、権力への抵抗などさまざまな観点から解釈されてきた。20世紀ドイツの劇作家ブレヒトによる改作版は、独特の意表を突く言い回しが光る。

    初習語
    ドイツ文学、北欧文学
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • はるかな国の兄弟
    どんなに危険だって、やらなきゃならない物事があるんだよ。…そうしなければ、もう人間じゃなくて、けちなごみくずになってしまうからだよ。
    はるかな国の兄弟
    アストリッド・リンドグレーン作 大塚勇三訳
    岩波書店
    1976年
    教員のコメント

    地上での生を終えた10歳の少年クッキーは、13歳の兄ヨナタン・レヨンイェッタが待つ死後の世界ナンギヤラに転生する。「たき火とおはなしの時代」での胸躍る冒険を望んだクッキーだが、待ち受けていたのは暴君の圧政と自由を求める戦いという「あってはならない冒険」だった。
    美しく、強く、聡明な兄を尊敬し、どこまでもついて行くクッキーは、自分の弱さや臆病さと向かい合い、「レヨンイエッタ」(獅子の心)の名に恥じない勇気をもって、命を懸けた戦いに参加する。『長くつ下のピッピ』の作者が円熟期に書いた名作で、スウェーデンでは生と死を考える本としても名高い。

    初習語
    ドイツ文学、北欧文学
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 北欧神話
    大むかしには、いまわたしたちが見ている太陽や月とは、すっかりちがった、べつの太陽と月がありました。
    北欧神話
    パードリック・コラム作 尾崎義訳
    岩波書店
    2001年
    教員のコメント

    世界を構成する木ユッグドラシルは倒壊の危機にあり、神々は最初の巨人イーミル(ユミル)を殺して世界を創造した時から、生き残った巨人とその子孫に脅かされている。神々の父で死神のオージン(オーディン。Wednesdayの語源)、力強く短気な雷神トール(Thursdayの語源)、戦乙女ヴァルキリア、勇敢な戦神チュール(Tuesdayの語源)、愛と豊穣の女神フレイア(Fridayの語源)、虹の橋の番をする神で人間の祖となったヘイムダル、巨人出身だがオージンの義兄弟として神々の世界に暮らすロキ。巨人族と滅ぼしあう最後の戦い「ラグナロク」に向かう運命の中で、神々が、生き、愛し、知恵を働かせ、戦うさまが個性豊かに描かれる。
    日本のゲームや映画、漫画にも多くの題材を提供する北欧神話の神々の物語を分かりやすく書いた一冊。

    初習語
    ドイツ文学、北欧文学
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • クラバート
    死んでいるのでもなければ、生きているのでもないような自分自身の姿を見る。クラバートの生命を形成しているすべてが、いまはこの外界にあるのだ。からだの外にあるのだ。いまは自由で、かろやかで、なんの拘束も感じない。
    クラバート
    オトフリート・プロイスラー作 中村浩三訳
    偕成社
    1980年
    教員のコメント

    物乞いの少年クラバートは、ある新年に夢の中で十一羽のからすに名前を呼ばれ、その夢に導かれて水車小屋の徒弟になる。その水車小屋は、昼間は粉ひきの臼が回るが、金曜日の夜になると親方から魔法を教わる<魔法の学校>だった。井戸を翌日まで封鎖する術、姿を変える術、自分のからだからぬけだしていく術、頭のなかで他人に話しかける術…。少年クラバートの目に便利なものと映った魔法と秘密の多い水車小屋は、時とともに不気味な側面を表していく。
    ドイツのスラヴ系少数民族ソルブ(作中では「ヴェンド人」)に伝わる伝説を、『大どろぼうホッツェンプロッツ』の作者がハイティーン向けにリライトしたロングセラー。

    初習語
    ドイツ文学、北欧文学
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 苦海浄土 全三部
    わが食う魚(いお)にも海のものには煩悩のわく。
    苦海浄土 全三部
    石牟礼道子
    藤原書店
    2016年
    教員のコメント

    1960年1月、「奇病」と題する短編作品が九州の雑誌『サークル村』に掲載された。後に水俣病として広く知られることとなる病に罹患した女性の「聞き書き」をもとにした「ルポルタージュ」とされていた。これを皮切りに、石牟礼道子は雑誌『熊本風土記』に「海と空のあいだに」と題する連載を開始、1969年に第一部『苦海浄土 わが水俣病』、1974年に第三部『天の魚』、一連の水俣病訴訟がほぼ終結した2004年に第二部『神々の村』が刊行される。
    患者の一人称語りは、患者をたずねる「わたくし」の一人称語り、カルテなどの資料と並ぶ本作の構成要素であるとともに、本作最大の特徴である。この部分は現在、聞き書きをもとにしたルポルタージュではなく、患者が心の中で思っていることを石牟礼が言葉にした文章であることが知られている。過酷な現実の中で患者たちの夢見た前近代と近代を描出し、「苦海」が「浄土」となる瞬間を語る、現代日本文学の最高峰。

    初習語
    ドイツ文学、北欧文学
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 植物の形には意味がある
    形態は機能に従う
    植物の形には意味がある
    園池公毅
    ベレ出版
    2016年
    教員のコメント

    “Form follows function”はアメリカの建築家Louis H. Sullivanの言葉です。ポルシェ911のカエルのような車デザインも機能的に意味があり、これは人工物だけで無く、我々が普段目にする生物も同様です。植物の葉・茎・根やその色や形は多様性があるけれど、それを認識するだけで終わるのでは無く、それが何に由来しているのかを仮説をたてて、機能を解き明かしていく内容が記されています。この思考方法は科学に限ったことではないことから、植物に興味が無くても有用な一冊です。内容は専門的で無く、生物を履修していない人も興味深く読み進められます。

    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者