教育

教育課程

TUSくさび形の教養教育カリキュラム
2022年度スタート

現代社会が生み出す科学・技術の目覚ましい「発展」は、同時に現代社会の様々な領域において、これまで問われなかった問題を生み出している。しかし、各学問分野が専門化・深化し、研究者も棲み分けが進展した結果、専門家は狭い問題領域に閉じこもり、このような問題そのものに向き合うことが困難な状況に陥っている。現在、私たちが直面している科学・技術の問題、そして将来学生たちが直面していく科学・技術の問題とは、科学者・技術者といった専門家集団内部での科学的および技術的な問題にとどまらない射程を持つ、大きな問題群を構成しており、専門知はその外部にある知(教養)との対話を通じてこそ、この難問にチャレンジできるものと考える。

本学では、2018年度に「専門教育の目標」と並列、そして互いに補完しあう形で「教養教育の目標」を制定し、「専門教育」と「教養教育」が教育面において同じ重みを持つ活動として位置づけている。この目標を実現するため、従来の一般教養科目の配置を抜本的に見直し、学生が自らの専門教育と専門的営みを相対化しながら、知性や感情、理解と共感を核とした人格を形成し、市民として協動的諸活動に携わる資質の向上、生涯にわたる学習態度につながる興味関心の芽を育むシステムとして、「くさび(打ち込み)形」の教養教育を敷くことが必要だと考える。

本学では、「専門教育の目標」と並列、そして互いに補完しあう形で、2018年度に「教養教育の目標」を制定した。この目標を実現するため、従来の一般教養科目の配置を抜本的に見直し、すでに導入している「5つの科目群」の分類に加え、①科目の学際化、多様化、高度化を示し、②一般教養科目及び学修段階をA~D及びNのカテゴリーに割り振り、③履修可能学年及び学年による修得単位の条件等を設けることにより、段階的な教養の学びを実現する。

カテゴリーA
1年生前期に開講する
定義

・教養教育の到達点(目標地点)を様々な分野で見せる「オムニバス科目」、各分野の広さや面白さ、意義等を学生に気づかせる「ガイダンス的科目」とする。
・カテゴリーB及びC、Dでの履修選択を「自由に」かつ主体的に行うための科目とする。

概要

・1年生前期に開講する。
・1年生(原級生を含む)のみ履修可能(再履修や2年生以上の履修は認めない)。
※カテゴリーAは1年生(原級生を含む)を対象とし、初年次教育を標榜した科目を開講するため、再履修は認めない。
・上限4単位までを卒業所要単位として認める。
・教養における初年次教育科目として位置づけ、原則として「領域を超えて学ぶ科目群」とする。
・全学共通の一般教養科目の他、各キャンパスで初年次教育を標榜した科目を配置する。
・主として教養教育研究院の専任教員が担当し、学生が専任教員の専門に触れる機会とする。
・全学共通の一般教養科目として、遠隔授業の実施も視野に入れ、全キャンパスで受講できる授業も含めた設計を行う。

カテゴリーB
1年生と2年生に開講する
定義

各分野における概論や総論的内容の科目とする。また、その学習には、知識や経験を前提としない内容を含む。

概要

・1年生前期から2年生後期まで履修可能(2年生後期までの再履修は可能)。
※1年生前期から2年生後期までの4回、同一科目を履修する機会があることから、3年生以上での履修及び再履修は認めない
・同一科目を前期・後期に開講することができる(各キャンパスで適切に開講する)。

カテゴリーC
2年生以上に開講する
定義

・各教員の持つ専門分野のエッセンス、最先端の研究、最もエキサイティングな部分を体験できる科目とする。課題解決型、多様な分野の総合に加え、学際性を持つ科目を含む。
・学生が所属する学科の専門性、社会的経験が増す。入学時よりも成熟した段階、進路の岐路となる高学年(3年生以上)で学ぶことで、複眼的思考に加えて、専門知とは異なる知・思考と感受性を持つ「市民」の養成が期待できる。

概要

・2年生前期から4年後期(薬学部薬学科は6年後期)まで履修可能。
・カテゴリーBを修得していなければカテゴリーCを履修できない、という制限を、一律に設けることはしない。
・円滑に卒業研究着手条件や卒業所要単位数を満たすことができるようにするため、カテゴリーCには、必要十分な科目数を置く。

カテゴリーD
3年生以上に開講する  ※2022年度以降の導入に向けて検討する。
定義

・教養の特定の分野に強い関心・興味を持った学生を対象とした科目とする。
・3年生以降に開講する。

概要

 

カテゴリーN
科目により標準履修学年を設定する
定義

履修に学年制限を設けない科目のこと。

概要

・1年生前期から4年後期(薬学部薬学科は6年後期)まで履修可能とし、具体的な履修学年は各キャンパスで設定する。

特徴

従来の教養との違い

これまでの教養教育は、「教養課程」として入学してすぐから2年の前期、または後期までの約2年間で一般教養科目の履修を終えるか、または2年生までのほとんどの科目を履修して「取り損ねた」単位を3年生以上で取得するカリキュラムであった。
裏を返せば、3年生以上は「専門の勉強に専念する」よう促す仕組みになっており、専門以外の学び、市民教育、人格形成や幅広い知識の取得といったことが実現しにくいカリキュラムとなっていた。

ここに「くさび」を打ち込み、東京理科大学では「3年生以上で一般教養科目4単位以上」の取得を義務化する*。その効果を最大限にすべく、内容面においても特にカテゴリーCに多彩で本格的な教養科目を配置して学生が興味関心を広げたり深めたり、新しいことに挑戦できるようにする。

この二つの改革によって、専門教育と並走する教養教育を実質化しつつ、さらに高学年教養を魅力的なものにしていく。そして、この教養教育のモデルともなるようなカリキュラムにおいて、学生たちは4年間(薬学部は6年間を通じ)自らの教養の学びを選択していくことになる。

*英語以外の外国語(初習外国語)も選択可能。英語のカリキュラムはこれを別に定める。

【「くさび形」のカリキュラム】
「くさび形」のカリキュラムとは,専門教育,教養教育とも4年間を通じて履修できるカリキュラムのことである。(文部科学省『新しい時代における教養教育の在り方について(答申)』(平成14(2002)年2月21日中央教育審議会)より)

カテゴリー

左:従来の理科大教養  右:新しい理科大教養