私がおすすめする本:書籍一覧

数学・自然科学分野の担当教員がおすすめする本

  • 「おいしさ」の錯覚
    創造する人々の思考に触れてみる
    「おいしさ」の錯覚
    チャールズ・スペンス(著)、長谷川 圭 (訳)
    KADOKAWA
    2018
    教員のコメント

    チャールズ・スペンス先生(オックスフォード大学)は、実験心理学を専門とする研究者で、食事を楽しむときの感覚に焦点をあてた新しい食の学問(ガストロフィジックス)を研究トピックスの一つとしています。このガストロフィジックス研究を通じて、おいしさに含まれる要素を分類し、脳で感じるおいしさの複雑な感覚を解き明かすべく、さまざまな実証実験を試みています。その研究成果はおいしさの探求にとどまらず、食にまつわるさまざまなビジネス戦略に応用されています。料理を科学する書籍は多くありますが、これまで重要視されてこなかった対象に着目した本書は、新たな概念の創出に求められる思考変革の重要性に気づかせてくれるでしょう。

    数学・自然科学
    有機機能材料工学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • やがて哀しき外国語
    創造する人々の思考に触れてみる
    やがて哀しき外国語
    村上春樹
    講談社
    1994
    教員のコメント

    村上春樹氏がプリンストン大学で客員研究員として米国に滞在していたときの内容をまとめたエッセイ集です。日常生活のちょっとした話題から米国における深刻な社会問題までを著者自身の視点で幅広く述べられています。研究留学や海外での仕事に興味がある人におすすめの本です。また、日本人だらけの居心地のよいマジョリティ環境に安住せず、マイノリティの気持ちを日本にいながらにしてリアルに理解したい人にも是非読んで欲しい本です。

    数学・自然科学
    有機機能材料工学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • オンリー・ミー
    創造する人々の思考に触れてみる
    オンリー・ミー
    三谷幸喜
    幻冬舎
    1997
    教員のコメント

    三谷氏は、脚本家として数々のテレビドラマをはじめ舞台や映画を手掛けています。本書は、三谷氏が25年ほど前に執筆したエッセイ集です。三谷氏が長きに渡り第一線で活躍できる理由の一端を垣間見ることができる本かなと思います。気楽に笑える内容でもあるので、講義の予習や復習時に頭を休ませたいときにでもどうぞ。

    数学・自然科学
    有機機能材料工学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 化学者たちの感動の瞬間
    創造する人々の思考に触れてみる
    化学者たちの感動の瞬間
    有機合成化学協会編
    化学同人
    2006
    教員のコメント

    本書は、(出版後に)ノーベル化学賞を受賞した日本人研究者を含め、第一線で活躍している有機合成化学者が自ら発表した原著論文の研究内容について、分かり易く解説しています。通常、原著論文では述べられることがない失敗データおよび思考錯誤の過程や研究活動の日常に触れている点も興味深いところです。また、本書は自らのアイデアをかたちにする達成感や実験系研究のワクワク感を共有できる本です。実験レポートを書くことに疲れたときや課題の締め切りが近いのにモチベーションが上がらないときにでも読んでみては如何でしょうか。

    数学・自然科学
    有機機能材料工学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 考えるヒント
    考えるヒント
    小林秀雄
    文春文庫
    2004
    教員のコメント

    本の推薦に際して,自分が高校生から大学生の頃を振り返ったとき,小林秀雄(1902〜1983)の名を思い出した。小林秀雄の批評文は,当時の受験生にとって大学入試によく出る,難解な文章という点で有名であった。調べてみると,10年前の2013年のセンター試験にも出題されている。また,AIで小林秀雄の文章の入試問題を解けるのかといったことや,逆に,難解な小林秀雄を読めることができればAIに仕事を奪われないと言った文章も検索できる。令和の時代に,昭和の知識人が何を考えていたのかに触れるのも良いのではと思う。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 大河への道
    大河への道
    立川志の輔
    河出書房新社
    2022
    教員のコメント

    落語家立川志の輔の新作落語を書き下ろした小説である。江戸時代将軍家斉の治世、幕府の命で日本中を歩いて測量した千葉県の偉人・伊能忠敬の業績を、町おこしの一環でNHK大河ドラマのテーマにすべく奔走する現代の市役所の人たちと脚本家候補者の目を通して日本地図作成のその裏側の真実に迫る、というものである。シリアスな物語かと思いきや、そこはさすが落語のネタ。盛大な笑いのオチがあるので、ぜひ本書を手に取って欲しい。なお伊能隊は、歩幅を一定に保って歩いて距離を測り、さらにコンパスと、分度器と望遠鏡を合わせた道具で星の高さから三角比を用いて測量をしていた。観測当時の地図をネットで検索すると、今でもびっくりするほど精緻で美しい曲線を描いているので必見である。

    数学・自然科学
    代数学(多元環の表現論/非可換代数幾何学)
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • こわいもの知らずの病理学講義
    こわいもの知らずの病理学講義
    仲野徹
    晶文社
    2017
    教員のコメント

    本書は大阪大学医学部の名物教授が一般人にも正しい病気の知識を身につけて欲しいとの思いを込めて書いた本です。まず病理学が病気の成り立ちを理解する学問であることを解説し、続いて細胞、血液、がんの3つに絞って話が進みます。特にがんについては発症と進化、免疫、ゲノムなどの観点から多くの頁を費やし説明しており、著者の専門分野と密接に関係していることが伺えます。全体を通して講義で語りかけるように話が進み、時折雑談も入るので、最後まで飽きずに読み切れます。本書によってがん対するリテラシーを高めておくと、将来がんを患っても冷静に向き合えそうな気がします。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者
  • あまり病気をしない暮らし
    あまり病気をしない暮らし
    仲野徹
    晶文社
    2018
    教員のコメント

    この本は、前掲書『こわいもの知らずの病理学講義』の続編で同じナニワの医学部教授が著者です。食事やダイエット、感染症、遺伝子など病気と関わりが深いテーマを取り上げて時々、脱線しながら話が進んでいきます。最終章では医学部教授の生活に触れ、医学部の研究・教育の裏側も語られています。前掲書の裏表紙に記されている「近所のおっちゃん・おばちゃんに読ませる」という著者の心意気は、本書でも踏襲され分かりやすい内容になっています。病気に興味がある方、病院でお医者さんの言うことをもっと理解したい方は、是非手に取ってみて下さい。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者
  • 植物の形には意味がある
    形態は機能に従う
    植物の形には意味がある
    園池公毅
    ベレ出版
    2016年
    教員のコメント

    “Form follows function”はアメリカの建築家Louis H. Sullivanの言葉です。ポルシェ911のカエルのような車デザインも機能的に意味があり、これは人工物だけで無く、我々が普段目にする生物も同様です。植物の葉・茎・根やその色や形は多様性があるけれど、それを認識するだけで終わるのでは無く、それが何に由来しているのかを仮説をたてて、機能を解き明かしていく内容が記されています。この思考方法は科学に限ったことではないことから、植物に興味が無くても有用な一冊です。内容は専門的で無く、生物を履修していない人も興味深く読み進められます。

    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 科学者とあたま、科学と科学者の話
    日常の科学を知る一冊
    科学者とあたま、科学と科学者の話
    寺田寅彦
    前者は平凡社、後者は岩波少年文庫
    前者2015年、後者は2000年
    教員のコメント

    ふとした自然現象の不思議さ、生活と密着した科学に対する観察力が綴られており、それらが何故生じているかを考えることができる一冊です。また、科学だけが記されているのではなく、日常生活の随筆内容も含まれており、これらの文章は漱石と出会い、教えを受けたことにより、文章としても教養にあふれています。寺田寅彦の作品は青空文庫にも所蔵されていますが、いずれも短いエッセイのスタイルであることから、手にとって開いたことろから気軽に読める出版物をお勧めします。

    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • Piled Higher and Deeper
    研究室の日常を英語コミックで知る
    Piled Higher and Deeper
    Jorge Cham
    Piled Higher & Deeper Pub.
    2002~
    教員のコメント

    タイトルを略すとPh. D.(博士号)となり、大切だか大切でない何かを高く深く積み上げていくことが学位を意味するジョークです。理工系研究室に生息する大学院生の日常を書き綴った英語で書かれたコミックシリーズで、これまでに6冊刊行されており、知る人ぞ知る人気の本です。研究室の日常は、文化や言語は異なれど、多くの理工系学生が共感をもつ内容が4コママンガとして描かれており、同時に英語やアメリカ文化も学習できる内容です。大学に入りたての頃は謎の世界である研究室がどのようなものなのかを、英語で面白おかしく知ることができ、研究の楽しさやつらさはもちろん、研究以外の何か(deepな人間関係の対処法)も知ることができます。国内の出版扱いはありませんが、Amazonや学内書店等で購入可能です。

    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • ウイルスの意味論 ~生命の定義を超えた存在~
    コロナ禍の今、ウイルスの正体を知ることができる一冊
    ウイルスの意味論 ~生命の定義を超えた存在~
    山内一也
    みすず書房
    2018年
    教員のコメント

    ウイルスは悪魔か天使かと問われれば、多くの人は「悪魔」だと答えるだろう。新型コロナウイルスも、インフルエンザウイルスも、よく知られたウイルスは皆、私たちを病気にするからだ。しかし実は、ウイルスには「天使」の側面もある。私たち人類が今ここにいるのは、じつはウイルスのお蔭であるとも言えるからだ。しかしこのコロナ禍において、ウイルスに対する偏った見方が、さらに大きく「悪魔」へと偏ってしまっている。山内先生は我が国を代表するウイルス学者であり、その識見は非常に深く、本書ではウイルスの悪魔的側面、天使的側面を余すことなく紹介してくれている。いったいウイルスはどのように生まれ、なぜこの地球上に存在しているのか。コロナ禍の今だからこそ、ふと冷静になって、ウイルスの意味を考えていただく。まさに至高の一冊である。

    数学・自然科学
    水圏生命科学、ウイルス学、生物教育学
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 古代文明と気候大変動
    不確実な未来を考えるにはやはり過去を学びたい
    古代文明と気候大変動
    ブライアン・フェイガン(訳者 東郷えりか)
    河出書房新社
    2008年 (原著は2004年)
    教員のコメント

    地球温暖化による気候変動で10年に一度や50年に一度の異常気象が頻発し自然災害の脅威が迫っていると報道され、温室効果ガスの排出削減を待ったなしで迫られている世の中ですが、気候変動で人類に本当にどういう影響が出るのか落ち着いて考えたことがあるでしょうか?
    実は人類は氷河期を生き延びてその後に迎えた氷河期明けの長い夏を謳歌してきました。本書は、訳書サブタイトルにある「人類の運命を変えた二万年史」を2004年当時の最新の気象学・生物学・考古学の資料を基に、気候変動が人類史にどういう影響を与えてきたかを語った異色の歴史書です。気象を中心に据えていますので、その記述目線はあくまでその時代を生き抜いた普通の人々の目線です。国家を統一した英雄は登場せず有名な国家統治制度の説明を行っている場面もほとんどありませんので文章内容は地味ですが、世界史の教科書には見られない気候変動が人類にもたらした影響が確実に読み取れます。2021年はシミュレータを用いた予測を含むIPCCの6次レポートが次々と発表されますが、今は落ち着いて確実な過去の歴史を本書で学んではいかがでしょう。
    ちなみに、本書の姉妹書として同じ著者の「歴史を変えた気候大変動」、「千年前の人類を襲った大温暖化」があります。前者は直近の小氷期、後者はその前中世の温暖期を扱ったもので、本書の「古代」と併せて3つの本で2万年史が完成します。後者の題名は「トンデモ本」に近いですが内容は極めて落ち着いたものであることを申し添えます。

    数学・自然科学
    素粒子物理学(素粒子論/量子重力理論)
    北海道・長万部キャンパス 教養部
    推薦者
  • 統計でウソをつく法
    その数字(データ)は本当?
    統計でウソをつく法
    ダレル・ハウ 著、高木秀玄 訳
    講談社 ブルーバックス
    1968年
    教員のコメント

    毎日新型コロナの感染者数が発表されていますが、その数字をどのように理解すればよいのか、意味するところは何か、を正確にとらえている人は少ないのではないでしょうか。統計数字(データ)の裏に潜むいろいろなカラクリを一般向けに、分かりやすく解説されています。このコロナ禍での様々なデータを理解するための必読書。

    数学・自然科学
    Multivariate analysis
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • オイラー入門
    数学者オイラーの業績と生涯に触れよう
    オイラー入門
    ウィリアム・ダンハム(黒川重信、若山正人、百々谷哲也 訳)
    丸善出版
    2012年
    教員のコメント

    レオンハルト・オイラーは18世紀の偉大な数学者です。人類史上最も多くの論文を書いたと言われ、スイスの第6次10フラン紙幣にはその肖像が描かれています。本書は膨大なオイラーの業績の中から、数論、対数、級数、解析数論、複素数、代数、幾何、組み合わせ論の8つのテーマに絞り、当時の歴史背景の下、オイラーの天才的なアイデアが分かり易く解説されています。高校レベルの数学で十分楽しく読み進めることができ、またオイラーの伝記としてあるいは数学史の読み物としても楽しめます。数学が好きな人、是非ご一読ください。

    数学・自然科学
    偏微分方程式
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 物理数学の直観的方法〈普及版〉理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬
    物理数学の直観的方法〈普及版〉理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬
    長沼伸一郎
    講談社
    教員のコメント

    1987年に出版された第一版を読んで,確かに数式をうまくイメージ化していると関心した本です。この本に影響を受けて,別の方ですが,「後藤尚久,電磁気学の直観的理解法,コロナ社」というのも出版されています。数式の説明に厳密性は欠けていても全体的なイメージを掴むことで理解が深まることもあるので,工学系の学生は読んでみることを勧めます。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 直観でわかるゲーム理論 ー勝負頭脳が冴える「シンプルな必勝法」
    直観でわかるゲーム理論 ー勝負頭脳が冴える「シンプルな必勝法」
    逢沢 明
    東洋経済新聞社
    教員のコメント

    「戦い方」や「交渉術」をわかりやすい例をあげてかみくだいて説明している本です。学生のうちは,かけひきのテクニックなど不要かもしれませんが,ものの考え方のひとつとして科学的に学ぶのはおもいしろいと思います。ゲーム理論と言われるように,体系化されている(研究されている)ことなので,理詰めで考えようとする理系学生には楽しめると思います。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ノックの音が
    ノックの音が
    星 新一
    新潮文庫
    教員のコメント

    すべて同じフレーズ「ノックの音がした」ではじまる短編集です。大学生というよりは,中学生向けの推薦図書としてよく紹介されます。長編の小説を読み慣れてないというか,読んだことがない学生も少なからずいると思います。そのような学生がこのサイトで,試しに本でも読んでみようかなと,ここを見ているとしたら,ぜひ手にとってみてください。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 人間の偏見 動物の言い分
    人間の偏見 動物の言い分
    高槻成紀
    イースト・プレス
    2018年
    教員のコメント

    動物には、「可愛い」ともてはやされる動物がいる一方で、「気持ち悪い」と疎んじられる動物もいます。動物に対するイメージは何によって決まるか。本書では動物を人間との関係から分類し、動物のイメージを決める要素を分析しています。「嫌いな」動物を好きになるのは難しいが、偏見を取り除く事は可能であり、正しく知ること(生態学的な知識をもつこと)の大切さを説いています。人間と動物の共生を考えるきっかけになる本です。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者
  • はだかの起源
    はだかの起源
    島 泰三
    講談社学術文庫
    2018年
    教員のコメント

    多くの陸上哺乳類は毛で覆われていますが、ヒトは殆ど毛がありません。ヒトが裸になった理由は、謎に包まれています。著者は、今から約20万~30年前にヒトは突然変異によって偶然、裸になったという大胆な仮説を提唱しています。裸化と同時に咽頭の構造変化も起こり、ヒトの生存は危うくなったが、言語能力の獲得によってヒト(不適者)は生きのびた。ヒトの進化に興味がある方は、一読してみて下さい。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者