私がおすすめする本:書籍一覧

全書籍

  • カフカ短編集
    カフカ短編集
    カフカ、池内紀訳
    岩波文庫
    1987年
    教員のコメント

    就職氷河期の九十年代末、文学部という将来の見込みが全くないところに迷い込み、何かになりたいものの何になりたいか分からず、ぼーっと時間ばかり過ぎていく日々。そんな中、翻訳家の先生が教える授業で精読した。ほかにも武田泰淳や深沢七郎、フラナリー・オコナーなどをじっくり読み、引用し、解釈することの楽しさを初めて知った。同じカフカなら『変身』も捨てがたいが、「掟の門」「流刑地にて」をはじめ、この短編集に収められた作品の破壊力は一度味わったら忘れられない。当時、おなじグループで発表した学生は「自分は自己啓発本しか読まない」と豪語していた。文学と縁遠いと思っている人こそ読むべし。意味を求めてはいけない。不思議と気持ちが軽くなり、笑いがこみ上げてくる。

    英語
    英語圏文学、カリブ文学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • アンダーグラウンド
    アンダーグラウンド
    村上春樹
    講談社文庫
    1999年(単行本の初版は1997年)
    教員のコメント

    理科大生全員必読。なぜ理系のエリート集団が説明不可能なほどの悪に邁進してしまうのか。一九九五年三月の地下鉄サリン事件で一変した世界を被害者の視点からインタビューで説き起こしたノンフィクション。続編は加害者へのインタビュー本『約束された場所で』。社会にかかわることはどういうことなのか、考えさせてくれる。森達也監督のドキュメンタリー映画『A』『A2』も併せて必見。

    英語
    英語圏文学、カリブ文学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 親指Pの修業時代、上・下
    親指Pの修業時代、上・下
    松浦理恵子
    河出文庫
    2006年(単行本初版は1993年)
    教員のコメント

    欲望のあり方を相対化するという意味においてニーチェ主義者である著者は、稀代のスタイリストとして評価が高い。だが、本書を通読して分かるように、物語の語り手としても稀有である。「男らしさ」「女らしさ」(はたまた「日本人らしさ」「〜人らしさ」)のようなものが何の根拠もない薄っぺらな物語に支えられているはずなのだけれど、自らが囚われていることに最も気づきにくいことも確か。なぜなら、身体性の一部になってしまっているから。このロジックをひっくり返し、著者は女性主人公の足の親指にペニスが生えてくるという設定を発明した。ゲーテ先生もびっくり、世の中が裏返って見える永遠の教養小説。

    英語
    英語圏文学、カリブ文学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 脳を鍛えるには運動しかない
    脳を鍛えるには運動しかない
    ジョンJ.レティwith エリック・ヘイガーマン
    NHK出版
    2009年
    教員のコメント

    運動を実施する目的は?と問われると筋肉を増やす、脂肪を減らすというような身体的効果について注目する人が多いと思います。しかし、この本の論旨は、運動の効果は“脳を鍛えること”に尽きる、というものです。最新の科学的知見を基にした運動が脳神経細胞に及ぼす分子レベルの影響から、学校や施設での実践例に至るまで、運動が脳機能を高める効果について幅広く網羅した素晴らしい本です。新型コロナ感染症流行下において、身体活動量が低下している今だからこそ、運動をする本当の意味を理解するためにこの本をオススメします。

    健康・スポーツ科学
    行動生理学、運動生理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 整体入門
    整体入門
    野口晴哉
    ちくま文庫
    200年
    教員のコメント

    野口整体の創始者による著書。
    内容の詳細を理解しなくとも、人間をとらえるものの見方が広がります。

    人文社会
    臨床心理学、産業メンタルヘルス
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ユマニチュード入門
    ユマニチュード入門
    本田 美和子、ロゼット マレスコッティ、イヴ ジネスト
    医学書院
    2014年
    教員のコメント

    認知症をもつかたへのケアに関する入門書。
    コミュニケーションのあり方、人間の尊厳、「ケア」とは何か?など、認知症にかかわらず人間関係の基本・本質を再確認させられます。

    人文社会
    臨床心理学、産業メンタルヘルス
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 桃太郎
    桃太郎
    芥川龍之介
    青空文庫
    教員のコメント

    「桃太郎」のもう一つの真実?
    誰もが共通して知っているはずの昔話も、ひとつの「語られ方」に過ぎないのかも知れません。無料で、5分あれば読めます。気分転換にでも、じっくり考えるにも。

    人文社会
    臨床心理学、産業メンタルヘルス
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • カササギ殺人事件(上下巻)
    カササギ殺人事件(上下巻)
    アンソニー・ホロヴィッツ(山田蘭 (訳))
    東京創元社(創元推理文庫)
    2018年
    教員のコメント

    「もはや探偵は現れない」とも言われる現代。トリックは出尽くし、密室は分類された。さらに科学技術の発展が犯人の奇想天外な魔法的仕掛けをバカバカしくしてしまう。そうした時代に対する現代文学の答えの一つがこれだ。死を宣告された探偵。なんと象徴的な設定だろう。クリスティへのオマージュがこれでもかと散りばめられ、最良のスピンオフでもある。文学技術の粋を結集させた、2019年数々の賞を受賞した作品。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ドリトル先生 航海記 他(シリーズ)
    ドリトル先生 航海記 他(シリーズ)
    ヒュー・ロフティング(井伏鱒二(訳))
    岩波書店(新版)
    2000年
    教員のコメント

    中途半端な科学的知識が物語的想像力の面白さを損なう前に読んで欲しい。動物の権利などとほざく前に、「先生」がペットショップの前を通れない理由に微笑んで欲しい。エディ・マーフィー主演の映画なんか観る必要はない。素敵な挿絵と文章だけで思い浮かべるだけで十分だ。動物と話せたらどんなに素敵だろう。路地裏の猫だけでなく、ゴミを漁るカラスにさえ優しくなれるかもしれない。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ゴルギアスからキケロへ (人でつむぐ思想史)
    ゴルギアスからキケロへ (人でつむぐ思想史)
    坂口ふみ
    ぷねうま舎
    2013年
    教員のコメント

    いつかこんな文章を自分の専門分野で書いてみたい。そう思わせられた本の一つ。
    今や多くの人が思想を信じていない。人々を混乱させる言葉、傷つける言葉、根無草な空疎な言葉、そんな言葉とも言えない言葉ばかりが溢れる現代。僕らは言葉とどうつきあってきたのか、思想が根差す場所はどこであるべきか、「言葉の技術」の始まりの歴史とともに考え直してみたい。そして同時に、深い専門性と、時間的にも空間的にも思想的にも幅広い教養とを一つにしていく、その技をも楽しみたい。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 空の名前(改訂版)
    空の名前(改訂版)
    高橋健司(写真・文)
    KADOKAWA
    1999年
    教員のコメント

    僕らは自分を紹介するのに名前を名乗る。名前を知ることはその人を「知る」最初の一歩であると同時に全てでもある。名前を知るとその人の見え方が「ただの人」から中身のある独立した独特の特別な存在者になる。そんなことを空を眺めながら考えてしまう、そんな本。空の見え方が違ってくる。晴れ、曇り、雨と、3種類しか知らないなんてなんとも教養のない。そう、教養は世界の見方を変えるのだ。これはそんな本。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • Masterキートン
    Masterキートン
    浦沢直樹、勝鹿北星(長崎尚志)
    小学館(ビックコミックス)全18巻
    1988~(完全版(全12巻)2011~)
    教員のコメント

    学生の必読漫画にしたい。何より謎を解く旅に出たくなる。主人公キートンは、特殊部隊の元教官(マスター)であり、学位(マスター)を持つ考古学者であり、そして探偵である。行方不明者や犯人探し、歴史探訪、冒険、そして仮説の立証。多様なQuestが心優しい物語の中で重なっていく。学者は壮大な仮説の答えを求めて冒険し、一つ一つ謎を解いていく有能な探偵でなければならない。反面、文系の人間には復縁したい元奥さんが数学者という設定に苦笑い。副産物として大学の先生がちょっとエラそうに見えるのにはニンマリだ。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 物理数学の直観的方法〈普及版〉理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬
    物理数学の直観的方法〈普及版〉理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬
    長沼伸一郎
    講談社
    教員のコメント

    1987年に出版された第一版を読んで,確かに数式をうまくイメージ化していると関心した本です。この本に影響を受けて,別の方ですが,「後藤尚久,電磁気学の直観的理解法,コロナ社」というのも出版されています。数式の説明に厳密性は欠けていても全体的なイメージを掴むことで理解が深まることもあるので,工学系の学生は読んでみることを勧めます。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 直観でわかるゲーム理論 ー勝負頭脳が冴える「シンプルな必勝法」
    直観でわかるゲーム理論 ー勝負頭脳が冴える「シンプルな必勝法」
    逢沢 明
    東洋経済新聞社
    教員のコメント

    「戦い方」や「交渉術」をわかりやすい例をあげてかみくだいて説明している本です。学生のうちは,かけひきのテクニックなど不要かもしれませんが,ものの考え方のひとつとして科学的に学ぶのはおもいしろいと思います。ゲーム理論と言われるように,体系化されている(研究されている)ことなので,理詰めで考えようとする理系学生には楽しめると思います。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ノックの音が
    ノックの音が
    星 新一
    新潮文庫
    教員のコメント

    すべて同じフレーズ「ノックの音がした」ではじまる短編集です。大学生というよりは,中学生向けの推薦図書としてよく紹介されます。長編の小説を読み慣れてないというか,読んだことがない学生も少なからずいると思います。そのような学生がこのサイトで,試しに本でも読んでみようかなと,ここを見ているとしたら,ぜひ手にとってみてください。

    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 「やりがいのある仕事」という幻想
    「やりがいのある仕事」という幻想
    森博嗣
    朝日新書
    2013年
    教員のコメント

    人は働くために生きているのではない。仕事をしている人が仕事をしていない人より「偉い」わけでは全然ない。無理して働く必要などないし、人生の生きがいを仕事の中に見つける必要もない。「仕事にやりがいを見つける生き方は素晴らしい」という話は、「どこかの企業のコマーシャル」の煽り文句にすぎない。
    本書の指摘は、日本で漠然と共有されている常識に反するように見えるかもしれませんが、間違いではありません。もちろん、「仕事はそれほど重要ではない」という話は、劣悪な職場環境を改善するための努力をも軽視する方向に傾きがちになるので、その点には注意が必要ですが、人生の中での仕事の位置づけを考える(考え直す)ために一度読んでみてください。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?
    お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?
    エノ・シュミット・山森亮・堅田香緒里・山口純
    光文社新書
    2018年
    教員のコメント

    働くことについて、また少し別の角度からも考えてみましょう。「ベーシック・インカム」という言葉を聞いたことはありませんか? 誰にでも十分に生活できるだけの所得を無条件に保証しよう、という構想のことです。
    たとえば、あなたが「働けるけど、働きたくない」と思っているとします。働かなくても十分に暮らしていけるなんて、素晴らしくないですか? そんなの現実的じゃない、と思うでしょうか。しかし何事も、理想や目標を掲げて追求しないと実現しません。ベーシック・インカムという構想は、どういう理想なのでしょうか。それは、追求する価値のある目標なのでしょうか。この本の様々な議論を読んで、ぜひ考えてみてください。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 隠された奴隷制
    隠された奴隷制
    植村邦彦
    集英社新書
    2019年
    教員のコメント

    今回、「仕事」や「働く」というテーマで最近の新書を紹介していますが、そのなかでは一番堅い、思想史の本です。
    17世紀から現代までの時間軸のなかで著者が問うのは、現代では誰もが自分のことを奴隷ではなく「自由な労働者」と思っているけれど、それは本当に正しいのか、という問いです。著者は、現代の労働者もじつは奴隷ではないか、と言います。荒唐無稽だと思うかもしれません。私たちには「職業選択の自由」があるのではないか、と。しかし、本当に選択する自由などあるのでしょうか。実際にあるのは職業選択の義務であって、また、私たちは選ぶ側ではなく「選ばれる側」に過ぎないのではないでしょうか。現代の社会で働くとはどういうことなのかについて、歴史的・地理的な幅をもって考えるきっかけになるでしょう。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 生活保護から考える
    生活保護から考える
    稲葉剛
    岩波新書
    2013年
    教員のコメント

    最後に日本の現状から一冊。生活保護が仕事や働くことにどう関係するのだろう、と思うかもしれません。働かなくてもまともに暮らせる状況がちゃんと保証されているかどうかは、働く人にとっても非常に重要です。それがなければ、どんな条件でも働かざるをえなくなってしまうからです。
    著者の稲葉さんは、生活保護利用者やホームレスの人たちの支援活動を続けている人ですが、00年代くらいから今も続く「生活保護バッシング」とそれに連動した生活保護の切り下げ政策の問題点を、現場のリアルな経験を踏まえて鋭く指摘し批判しています。7年前の本ですが、残念ながらその指摘は今の社会にも当てはまります。酷い話も含まれていますが、物事を知らずにバッシングに加担してしまわないためにも、一読しておきましょう。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • デカメロン
    デカメロン
    ボッカッチョ著、平川祐弘訳
    河出書房新社
    2012年
    教員のコメント

    1348年、イタリアでペストが流行し、約9万のフィレンツェの人口が3万ほどに減ったと言われています。命の危機と儚さを経験したボッカッチョがこの作品で描くのは、生きる喜びとエネルギー溢れる生命力。1348年のイタリアを舞台に、ペストから自主隔離をした男女10人が退屈を紛らわすために1日に1つずつお話を語ります。コロナ鬱も吹き飛ばしてくれるほどの天真爛漫な物語の世界をどうぞお楽しみください。大部の書物と恐れることなかれ。それぞれのお話は数ページと短いし、目次にはそれぞれの話のキャプションが掲載されています。まずは2日目のお話から始めるのはいかがでしょう?2日目のテーマは「散々な目に遭いながら、予想外な目出度い結末を迎えた人の話」です。

    英語
    英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者