私がおすすめする本

張替 涼子
張替 涼子准教授
英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
神楽坂キャンパス教養部
  • 言葉に魅せられ、辞書を編む人々の物語(イギリス)
    博士と狂人 / The Professor and the Madman
    博士と狂人 / The Professor and the Madman
    サイモン・ウィンチェスター / Simon Winchester
    ハヤカワ文庫/ Harper Perennial
    2006年 /2005年

    世界で最も権威のある英語辞書『オクスフォード英語大辞典』(Oxford English Dictionary、以下OED)には、41万語以上が収録されており、それぞれの単語の歴史(いつからどのように使用されてきたのか)が用例とともに掲載されています。この用例採集には数多くの一般人が閲読者として協力しましたが、中でも最大の貢献をしたのはW. C. マイナーという謎の人物でした。マイナーは20年もの長きにわたって、単語の用例をOEDの編集主幹を務めるジェームズ・マレー博士に送り続けます。マレー博士は、マイナーの長年の貢献に感謝を伝えるため、直接彼に会いにいくのですが、そこでマレー博士が知ったマイナーの衝撃の人生とは・・・
    メル・ギブソンとショーン・ペン主演で映画化されています。そちらもオススメ。

  • 言葉に魅せられ、辞書を編む人々の物語(アメリカ)
    ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 / Word by Word
    ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険 / Word by Word
    コーリー・スタンパー / Kory Stamper
    左右社 / Pantheon
    2020年 /2017年

    centerとcentre、theaterとtheatre。なぜ英語にはアメリカ式とイギリス式の2種類の綴り方があるのかご存知でしょうか。
    イギリスからの独立を果たしたアメリカでは、新国家に相応しい「アメリカ英語」の辞書が求められていました。そのような中で、ノア・ウェブスターは1828年に上梓した「アメリカ英語辞典」において、イギリスではcolourと綴られていた単語をcolorとして、centreをcenterとして、新しいアメリカ式綴りで単語を収録したのです。(ちなみに、OED制作に多大なる貢献をしたW.C.マイナーはこのウェブスターの辞書編纂にも携わっていたそうです。)
この本の著者、コーリー・スタンパーは、ウェブスター辞書を生んだアメリカ最古の辞書出版社であるメリアム・ウェブスター社で辞書編集を長年務めた人物。メリアム・ウェブスター社における辞書制作の様子や顧客とのやりとりを紹介しながら、英語の語釈の難解さ、英語という言語の奥深さと面白さを語ってくれます。

  • 言葉に魅せられ、辞書を編む人々の物語(日本)
    舟を編む
    舟を編む
    三浦しをん
    光文社
    2011年

    「あがる」と「のぼる」の違いは何でしょう?例えば、「山にのぼる」とは言いますが、「山にあがる」とは言いません。この物語は、言葉に「耽溺」した人々が、一つ一つの言葉に真剣に、しかし「冷静かつ執拗」に向き合いながら、一つの辞書を作り上げていく様子を描いたものです。彼らは「辞書は、言葉の海を渡る舟」という信念のもと、日本語を使用する全ての人々が、海のように広く深い日本語という言語の中で溺れずに目的地までたどり着くことができるような舟(辞書)を編んでいきます。この物語を読んだ後には、あなたも国語辞典や広辞苑を開いてみたくなるでしょう。電子版ではなく、紙の辞書を。

  • デカメロン
    デカメロン
    ボッカッチョ著、平川祐弘訳
    河出書房新社
    2012年

    1348年、イタリアでペストが流行し、約9万のフィレンツェの人口が3万ほどに減ったと言われています。命の危機と儚さを経験したボッカッチョがこの作品で描くのは、生きる喜びとエネルギー溢れる生命力。1348年のイタリアを舞台に、ペストから自主隔離をした男女10人が退屈を紛らわすために1日に1つずつお話を語ります。コロナ鬱も吹き飛ばしてくれるほどの天真爛漫な物語の世界をどうぞお楽しみください。大部の書物と恐れることなかれ。それぞれのお話は数ページと短いし、目次にはそれぞれの話のキャプションが掲載されています。まずは2日目のお話から始めるのはいかがでしょう?2日目のテーマは「散々な目に遭いながら、予想外な目出度い結末を迎えた人の話」です。

  • フランケンシュタイン
    フランケンシュタイン
    メアリー・シェリー著 小林章夫訳
    光文社
    2010年

    フランケンシュタインという名前を一度は耳にしたことがあるでしょう。でも、まさか怪物の名前だと思っていませんよね?フランケンシュタイン博士は自らの手で自らがコントロールすることのできない存在を作り出してしまいます。一般にこの創造物のおぞましさが注目されることが多いですが、この作品の魅力は、一方的な視点での単一の解釈を許さないことにあります。創造主に名前すら与えられずに見捨てられた「怪物」、弱きものを助ける「怪物」、隣人を愛する「怪物」、罪の無い人を殺める「怪物」。物語の語り手が替わるたびに、読者は全く別の物語に遭遇することとなります。科学技術の発展に携わる人だけではなく、その恩恵に預かる誰もが読むべき必読の書です。

  • 世界でさいしょのプログラマー(Ada’s Ideas)
    世界でさいしょのプログラマー(Ada’s Ideas)
    フィオナ・ロビンソン作、せなあいこ訳
    評論社
    2017年

    エイダ・ラブレスをご存知ですか?世界で初めてのコンピューター・プログラマーと言われている女性です。彼女の旧姓はエイダ・バイロン。そう、彼女は英国の最も有名な詩人の一人、バイロン卿の娘です。この絵本はエイダの人生を子供向けに簡単に紹介したもので、彼女が開発した「ベルヌーイ数」の計算方法も宝探しに例えてわかりやすく解説されています。コンピューターが開発される100年も前から、絵や音楽もプログラムできると考えていたエイダ。科学的な研究には専門的な知識だけではなく、様々な事象への興味と想像力が必要であることを教えてくれる一冊です。簡単な英語で書かれていますので、是非原著にチャレンジしてみてください。