私がおすすめする本:書籍一覧

全書籍

  • フランケンシュタイン
    フランケンシュタイン
    メアリー・シェリー著 小林章夫訳
    光文社
    2010年
    教員のコメント

    フランケンシュタインという名前を一度は耳にしたことがあるでしょう。でも、まさか怪物の名前だと思っていませんよね?フランケンシュタイン博士は自らの手で自らがコントロールすることのできない存在を作り出してしまいます。一般にこの創造物のおぞましさが注目されることが多いですが、この作品の魅力は、一方的な視点での単一の解釈を許さないことにあります。創造主に名前すら与えられずに見捨てられた「怪物」、弱きものを助ける「怪物」、隣人を愛する「怪物」、罪の無い人を殺める「怪物」。物語の語り手が替わるたびに、読者は全く別の物語に遭遇することとなります。科学技術の発展に携わる人だけではなく、その恩恵に預かる誰もが読むべき必読の書です。

    英語
    英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 人間の偏見 動物の言い分
    人間の偏見 動物の言い分
    高槻成紀
    イースト・プレス
    2018年
    教員のコメント

    動物には、「可愛い」ともてはやされる動物がいる一方で、「気持ち悪い」と疎んじられる動物もいます。動物に対するイメージは何によって決まるか。本書では動物を人間との関係から分類し、動物のイメージを決める要素を分析しています。「嫌いな」動物を好きになるのは難しいが、偏見を取り除く事は可能であり、正しく知ること(生態学的な知識をもつこと)の大切さを説いています。人間と動物の共生を考えるきっかけになる本です。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者
  • 世界でさいしょのプログラマー(Ada’s Ideas)
    世界でさいしょのプログラマー(Ada’s Ideas)
    フィオナ・ロビンソン作、せなあいこ訳
    評論社
    2017年
    教員のコメント

    エイダ・ラブレスをご存知ですか?世界で初めてのコンピューター・プログラマーと言われている女性です。彼女の旧姓はエイダ・バイロン。そう、彼女は英国の最も有名な詩人の一人、バイロン卿の娘です。この絵本はエイダの人生を子供向けに簡単に紹介したもので、彼女が開発した「ベルヌーイ数」の計算方法も宝探しに例えてわかりやすく解説されています。コンピューターが開発される100年も前から、絵や音楽もプログラムできると考えていたエイダ。科学的な研究には専門的な知識だけではなく、様々な事象への興味と想像力が必要であることを教えてくれる一冊です。簡単な英語で書かれていますので、是非原著にチャレンジしてみてください。

    英語
    英米・英語圏文学(近世スコットランド文学及び書物学)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • はだかの起源
    はだかの起源
    島 泰三
    講談社学術文庫
    2018年
    教員のコメント

    多くの陸上哺乳類は毛で覆われていますが、ヒトは殆ど毛がありません。ヒトが裸になった理由は、謎に包まれています。著者は、今から約20万~30年前にヒトは突然変異によって偶然、裸になったという大胆な仮説を提唱しています。裸化と同時に咽頭の構造変化も起こり、ヒトの生存は危うくなったが、言語能力の獲得によってヒト(不適者)は生きのびた。ヒトの進化に興味がある方は、一読してみて下さい。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者
  • 科学の困った裏事情
    科学の困った裏事情
    有田正規
    岩波科学ライブラリー
    2016年
    教員のコメント

    “ハゲタカジャーナル(predatory journal)”という言葉を御存知でしょうか。内容を適切に審査する事なく、研究者から高額な投稿料をとって論文をオンライン掲載する学術誌の蔑称です。昨今多額の資金が科学研究に投入され、研究者は(実用的な)成果を上げることを強く求められています。著者は、成果主義によって研究環境が悪化し科学論文の質が低下している現状を鋭く指摘、科学のあるべき姿に向けた解決策を提言しています。将来アカデミックポストを目指している若い方に是非読んで欲しい本です。

    数学・自然科学
    生物有機化学、化学生物学
    北海道・長万部キャンパス教養部
    推薦者
  • 日本人の法意識
    日本人の法意識
    川島武宜
    岩波書店(岩波新書)
    1967年
    教員のコメント

    明治時代に西洋法を継受して成立した日本の法体系と、人々の現実の生活や意識とのあいだに存在する「ずれ」について、具体例を多く挙げて考察したベストセラー。少し古くなってしまった議論もあるが、私たちはそもそも権利や裁判をどんなものだと思って生きているのか、という視点の置き方が重要であることを教えてくれる。著者の川島は「戦後啓蒙」の中心人物の一人で、戦後思想史の軌跡を辿るという意識で読んでも面白い。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 中世の風景(上)・(下)
    中世の風景(上)・(下)
    阿部謹也・網野善彦・石井進・樺山紘一
    中央公論新社(中公新書)
    1981年
    教員のコメント

    80年代に大きく高まりを見せた「社会史ブーム」の中で生まれた、日本の中世社会とヨーロッパのそれとを比較する対談集。「ハーメルンの笛吹き男」の研究で有名な阿部謹也や、映画『もののけ姫』に影響を与えた網野善彦などが、職人・都市・音・時・裁判・家などをテーマに中世社会を語り合う。平易でありながら重厚なその議論は、「教養」としての歴史学の門を開いてくれる。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 国会議員の仕事-職業としての政治
    国会議員の仕事-職業としての政治
    林芳正・津村啓介
    中央公論新社(中公新書)
    2011年
    教員のコメント

    現役の国会議員である林と津村が、自身の経歴や政治的理想も織り交ぜながら、国会議員の仕事についてそれぞれ具体的に語る一冊。国会に対して私たちが持つ期待と、国会議員の考え方との「ずれ」をなくすためにも、国会とは何か、国会議員とは何かについて知っておきたい。二人の議員には共通する点も対照的な面もあり、国会議員の生き方や価値観もまた「多様」であることを実感できる。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 鉄道と刑法のはなし
    鉄道と刑法のはなし
    和田俊憲
    NHK出版(NHK出版新書)
    2013年
    教員のコメント

    鉄道に関する様々な事件やエピソードを刑法と結びつけて言及する、刑法の(そして鉄道の)入門書。法学は堅苦しくとっつきにくい分野だと思われがちだが、身近なところや自分の好きな何かをきっかけに、興味を深めていくこともできるということを教えてくれる。法的思考の丁寧な説明と、ユーモアや豆知識が入り混じり、なぜか「駅名索引」もついて、鉄道マニアの人にもそうでない人にも楽しく読める。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 完全な真空
    完全な真空
    スタニスワフ・レム
    河出書房新社
    2020年(初版は1989年)
    教員のコメント

    <存在しない書物>の書評集。仕掛けは目新しくないが、これほど面白い本に出会うことは滅多にない。大学時代、最も刺激を受けた本の一つであることは間違いない。

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 羊をめぐる冒険
    羊をめぐる冒険
    村上春樹
    講談社
    1982年
    教員のコメント

    「僕」が「鼠」に「君はもう死んでいるんだろう?」と聞くシーン。高校生の頃に読んだ、そのページのセリフを今でもほぼ完璧に覚えている。

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ペスト大流行—ヨーロッパ中世の崩壊—
    ペスト大流行—ヨーロッパ中世の崩壊—
    村上陽一郎
    岩波書店
    1983年
    教員のコメント

    一つぐらいは科学史から本を。
    大学から大学院に進学する時期だったと思うが、「メメント・モリ」(「死を忘れるな!)という中世の格言を初めて知り、同時に村上陽一郎さんの本をここから読み漁った。そして、彼は私の大学院時代の指導教員となった。数値化される死から死者を救い出せ!

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • これが人間か
    これが人間か
    プリーモ・レーヴィ
    朝日新聞出版
    2017年(旧版は1980年)
    教員のコメント

    私の書棚の中で、圧倒的な存在感を示し、「オレはここにいる」と主張している本。
    イタリアのトリノ大学で化学を専攻した著者は、1944年2月にアウシュヴィッツに送られ、収容所で生活する「顔のない人間」たちを見る。「これが人間か」。だが、私にとって最も印象的な描写は、「オデュッセウスの歌」という章で、レーヴィがダンテ『神曲』の「地獄編」第26歌を穴だらけの記憶の底から拾い上げ、アルザス出身の学生ジャンに語るシーンである。それは、生き地獄の中で「これが人間だ」と肯定できる奇跡の時間。
    「徳と知を求めるため、生をうけたのだ」。この本を読むと、この言葉の意味を実感することができる。そして、どうしても『神曲』が読みたくなる。

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 民藝四十年
    民藝四十年
    柳宗悦
    岩波書店 (岩波文庫)
    1984年
    教員のコメント

    近年、「民芸」という言葉が日本のホビー系雑誌などを賑わすようになりました。若い学生の皆さんには無関係な道楽の話に聞こえるかもしれませんが、この「民芸」という言葉を生んだ柳宗悦の思想にまで立ち戻ってみると、そこには「ものづくり」に取り組む者が決して見失ってはならない倫理的・審美的観点が、現代にも通用する形で語られていることがわかります。「ものづくり」とは何のための、誰のためのものか。本書を通じて柳と議論を戦わせてみるのも一興かと思います。

    英語
    応用言語学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 英語達人列伝
    英語達人列伝
    斎藤兆史
    中央公論新社(中公新書)
    2000年
    教員のコメント

    日本の英語教育・英語学習を語る文脈では、「英語は怖くない、難しくない」といった、学ぶ人たちの不安や心配を取り除こうとする(恐らくは善意の)言葉を頻繁に見かけますが、そんなはずはない。日本で学ぶ限りにおいて、英語は怖いし、難しいのです。その恐怖や困難を直視して立ち向かった先人たちの姿を垣間見るならば、入り口としては本書が十分その期待に応えてくれます。

    英語
    応用言語学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • When We Were Orphans/わたしたちが孤児だったころ
    When We Were Orphans/わたしたちが孤児だったころ
    Kazuo Ishiguro/カズオ・イシグロ
    Faber & Faber、2000年/早川書房
    2006年
    教員のコメント

    2000年に出版されたKazuo Ishiguro 作品 When We Were Orphans とその翻訳。1930年ロンドンで活躍する探偵クリストファー・バンクスを苦しめ続ける事件―当時暮らしていた上海で彼の父親、続いて母親が行方不明になる。その謎が解き明かされていく。幼いクリストファーが「上海で最も優秀な探偵が一生懸命探しているのだから、父も母も見つかります」と力強く言うシーンが印象的。私は英語で読みましたが、比較的読みやすいです。

    英語
    言語学 (語用論)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 中原中也詩集
    中原中也詩集
    中原中也
    思潮社
    1975
    教員のコメント

    1934年出版の『山羊の歌』、1938年出版『在りし日の歌』に収録の詩篇と未完詩篇を含む中原中也詩集。中也の詩は今読んでも、新鮮。言葉が意味と一体化し、道具になる前の、音とくっついた言葉の動きが感じられる。特に好きなのは「骨」というタイトルの詩(「ホラホラ、これが僕の骨だ、…」)。「(辛いこつた辛いこつた!)」を読むと今の時代のことを言っているように感じる。手に入りやすいものとしては2000年出版の新潮文庫『中原中也詩集』や2007年出版の角川ソフィア文庫『中原中也全詩集』があり、未完詩篇の入っているものがいいと思います。

    英語
    言語学 (語用論)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 水晶 他三篇(岩波文庫)
    水晶 他三篇(岩波文庫)
    アーダルベルト・シュティフター
    岩波書店
    1993年
    教員のコメント

    十九世紀オーストリアの作家シュティフターの短編集『石さまざま』はいかがでしょう。雪山での遭難(「水晶」)、洪水(「石灰石」)、ペスト(「みかげ石」)、戦争(「石乳」)など、さまざまな危機に直面しながらも誠実に生きる人々のありようが、静かな筆致で描かれています。シュティフターがこれらの作品を書くことによって見出そうとした、人間の営み全体を統べている自然の「おだやかな法則」(『石さまざま』の序を参照)とは何か、それを考えることは、現代においてますます意義を増しているように思います。

    初習語
    ドイツ文学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • チェーホフ全集 全12巻セット
    簡潔は才能の妹(アントン・チェーホフ)
    チェーホフ全集 全12巻セット
    アントン・チェーホフ; 松下 裕 (翻訳)
    ちくま文庫
    1987年~
    教員のコメント

    ロシアの作家チェーホフは世界でよく知られている短編の名人です。短編なので、読みやすいのがいいですが、深さがわかりにくい、という面もあります。チェーホフは類稀なアイロニーで人間の精神世界を繊細に解き明かし、最も短い短編にさえ、そこには人間の内的宇宙が立ち現れます。
    彼は、社会と自分個人をとりまく絶望的な状況にもかかわらず、高い芸術性を持った詩情にあふれた作品を書き続けることができた天才です。普通は誰も気づかない、弱い者の「傷つけられた心」というものを、実によく描いていて、それが読者の感動を誘うのです。
    例えば、「カシタンカ」は犬の目を通して、人間世界が活写されていますが、単に風刺しているだけではなくて、人間に共通の悩み(貧困、病気、死など)が一筆で見事に描かれていて、その詩心の豊かさに驚かされます。チェーホフの影響を受けた日本の作家は多いと思います(井伏 鱒二など)。
    人はしばしば、他者と向き合う中で己を知るものです。チェーホフ作品を読み、その登場人物の心と向き合うことは、きっと他者や己の心を知る助けとなるでしょう。

    英語
    言語学 (言語類型論、アイヌ語、東北アジアの諸言語)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • The Collected Poems of Dylan Thomas 1934-1952
    The Collected Poems of Dylan Thomas 1934-1952
    Dylan Thomas
    J. M. Dent & Sons
    1952年(初版)
    教員のコメント

    ディラン・トーマスは英国ウェールズ出身の詩人・作家。Do not go gentle into that good night(「あのやさしい夜の中へおとなしく入ってはいけない」)が収録されている。この詩の Rage, rage against the dying of the light.(「死滅してゆく光に向かって 怒り狂え 怒り狂え」)は忘れられない一節。若い時は読んでなんとなくいいと思っただけだったが、今読むと心に響く。『ディラントーマス詩集』(松浦直己訳、彌生書房)など邦訳がある。手に入りやすいのは The Collected Poems of Dylan Thomas (2016, George Weidenfeld & Nicholson)。

    英語
    言語学 (語用論)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者