- 教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化中央公論新社(中公新書)2003
“読書と自己陶冶とを結びつけて「教養」を位置づける「教養主義」は、大正期の旧制高校で学生文化として沸き起こり、時代によってその内容を変えながらも、1970年前後まで学生たちの心を捉え続けた。その後、高度経済成長による社会変化や、学生運動後の大学の大衆化を受け、「教養主義」は急激に衰退して今に至っている。
一方で、近年は、社会においても大学教育においても、「教養」の重要性が(再び?三たび?)叫ばれるようにもなってきている。いまなぜ「教養」は重要だと言われるのだろうか。そもそも、「教養主義」における「教養」と、いま語られている「教養」とは、何が同じで何が異なっているのだろうか。
自分自身の「教養」観を相対化し、いまの「教養」と向き合う前提として、本書で「教養主義」を中心とする「教養」の来歴を学んでおきたい。” - 日本人の法意識岩波書店(岩波新書)1967年
明治時代に西洋法を継受して成立した日本の法体系と、人々の現実の生活や意識とのあいだに存在する「ずれ」について、具体例を多く挙げて考察したベストセラー。少し古くなってしまった議論もあるが、私たちはそもそも権利や裁判をどんなものだと思って生きているのか、という視点の置き方が重要であることを教えてくれる。著者の川島は「戦後啓蒙」の中心人物の一人で、戦後思想史の軌跡を辿るという意識で読んでも面白い。
- 中世の風景(上)・(下)中央公論新社(中公新書)1981年
80年代に大きく高まりを見せた「社会史ブーム」の中で生まれた、日本の中世社会とヨーロッパのそれとを比較する対談集。「ハーメルンの笛吹き男」の研究で有名な阿部謹也や、映画『もののけ姫』に影響を与えた網野善彦などが、職人・都市・音・時・裁判・家などをテーマに中世社会を語り合う。平易でありながら重厚なその議論は、「教養」としての歴史学の門を開いてくれる。
- 国会議員の仕事-職業としての政治中央公論新社(中公新書)2011年
現役の国会議員である林と津村が、自身の経歴や政治的理想も織り交ぜながら、国会議員の仕事についてそれぞれ具体的に語る一冊。国会に対して私たちが持つ期待と、国会議員の考え方との「ずれ」をなくすためにも、国会とは何か、国会議員とは何かについて知っておきたい。二人の議員には共通する点も対照的な面もあり、国会議員の生き方や価値観もまた「多様」であることを実感できる。
- 鉄道と刑法のはなしNHK出版(NHK出版新書)2013年
鉄道に関する様々な事件やエピソードを刑法と結びつけて言及する、刑法の(そして鉄道の)入門書。法学は堅苦しくとっつきにくい分野だと思われがちだが、身近なところや自分の好きな何かをきっかけに、興味を深めていくこともできるということを教えてくれる。法的思考の丁寧な説明と、ユーモアや豆知識が入り混じり、なぜか「駅名索引」もついて、鉄道マニアの人にもそうでない人にも楽しく読める。