
- 落ち着かないコロナ禍だからこそじっくり読みたい一冊Klara and the Sun/クララとお日様Faber & Faber/早川書房2021年
10代の子どもに親が買い与えるアンドロイド(Artificial Friend) であるクララをジョージーが選ぶ。ジョージーは病弱で、彼女の姉の命を奪った病気と同じ病気にかかっている。リックはジョージーの家の近くに住む幼なじみで、ジョージーに献身的につくす。クララはお日さまにジョージーが元気になるように頼む。… 最後のシーンをどう理解すべきかわからず何度か読み返した。ロボットの視点から人間とロボットの関係を考えるという不思議な体験をさせてくれる小説。英語で読んだが、英語で読んでいることを忘れるほどの読みやすい文体と平易な語彙で書かれている。
- When We Were Orphans/わたしたちが孤児だったころFaber & Faber、2000年/早川書房2006年
2000年に出版されたKazuo Ishiguro 作品 When We Were Orphans とその翻訳。1930年ロンドンで活躍する探偵クリストファー・バンクスを苦しめ続ける事件―当時暮らしていた上海で彼の父親、続いて母親が行方不明になる。その謎が解き明かされていく。幼いクリストファーが「上海で最も優秀な探偵が一生懸命探しているのだから、父も母も見つかります」と力強く言うシーンが印象的。私は英語で読みましたが、比較的読みやすいです。
- 中原中也詩集思潮社1975
1934年出版の『山羊の歌』、1938年出版『在りし日の歌』に収録の詩篇と未完詩篇を含む中原中也詩集。中也の詩は今読んでも、新鮮。言葉が意味と一体化し、道具になる前の、音とくっついた言葉の動きが感じられる。特に好きなのは「骨」というタイトルの詩(「ホラホラ、これが僕の骨だ、…」)。「(辛いこつた辛いこつた!)」を読むと今の時代のことを言っているように感じる。手に入りやすいものとしては2000年出版の新潮文庫『中原中也詩集』や2007年出版の角川ソフィア文庫『中原中也全詩集』があり、未完詩篇の入っているものがいいと思います。
- The Collected Poems of Dylan Thomas 1934-1952J. M. Dent & Sons1952年(初版)
ディラン・トーマスは英国ウェールズ出身の詩人・作家。Do not go gentle into that good night(「あのやさしい夜の中へおとなしく入ってはいけない」)が収録されている。この詩の Rage, rage against the dying of the light.(「死滅してゆく光に向かって 怒り狂え 怒り狂え」)は忘れられない一節。若い時は読んでなんとなくいいと思っただけだったが、今読むと心に響く。『ディラントーマス詩集』(松浦直己訳、彌生書房)など邦訳がある。手に入りやすいのは The Collected Poems of Dylan Thomas (2016, George Weidenfeld & Nicholson)。