
北 和丈教授
応用言語学
葛飾キャンパス教養部
- 世の中が変なのか自分が変なのか悩んだら開く一冊新編 悪魔の辞典岩波書店1997年
善意も悪意も綯い交ぜで様々な言葉が溢れ、結局のところ何を拠り所にして生きればよいものか悩んでしまう21世紀の我々にとって、意外にも救いの手は遠い過去から差し伸べられるのかもしれません。19世紀末のアメリカでジャーナリストとして活躍したアンブローズ・ビアスの手による本書は、その仰々しい表題のとおり、太々しくも辞書の形式を模しながら、悪魔的に鋭い批判的観察眼で、世の中に蔓延る偽善や欺瞞を一刀両断します。一つ一つの項目が短いので、ぱっと開いたページを楽しむもよし、一話完結型のダークヒーロー物語として読み込むもよし。「悪魔」との戯れも、魂売らなきゃ大丈夫。
- 民藝四十年岩波書店 (岩波文庫)1984年
近年、「民芸」という言葉が日本のホビー系雑誌などを賑わすようになりました。若い学生の皆さんには無関係な道楽の話に聞こえるかもしれませんが、この「民芸」という言葉を生んだ柳宗悦の思想にまで立ち戻ってみると、そこには「ものづくり」に取り組む者が決して見失ってはならない倫理的・審美的観点が、現代にも通用する形で語られていることがわかります。「ものづくり」とは何のための、誰のためのものか。本書を通じて柳と議論を戦わせてみるのも一興かと思います。
- 英語達人列伝中央公論新社(中公新書)2000年
日本の英語教育・英語学習を語る文脈では、「英語は怖くない、難しくない」といった、学ぶ人たちの不安や心配を取り除こうとする(恐らくは善意の)言葉を頻繁に見かけますが、そんなはずはない。日本で学ぶ限りにおいて、英語は怖いし、難しいのです。その恐怖や困難を直視して立ち向かった先人たちの姿を垣間見るならば、入り口としては本書が十分その期待に応えてくれます。