私がおすすめする本

板場 綾子
板場 綾子講師
代数学(多元環の表現論/非可換代数幾何学)
葛飾キャンパス教養部
  • 大河への道
    大河への道
    立川志の輔
    河出書房新社
    2022

    落語家立川志の輔の新作落語を書き下ろした小説である。江戸時代将軍家斉の治世、幕府の命で日本中を歩いて測量した千葉県の偉人・伊能忠敬の業績を、町おこしの一環でNHK大河ドラマのテーマにすべく奔走する現代の市役所の人たちと脚本家候補者の目を通して日本地図作成のその裏側の真実に迫る、というものである。シリアスな物語かと思いきや、そこはさすが落語のネタ。盛大な笑いのオチがあるので、ぜひ本書を手に取って欲しい。なお伊能隊は、歩幅を一定に保って歩いて距離を測り、さらにコンパスと、分度器と望遠鏡を合わせた道具で星の高さから三角比を用いて測量をしていた。観測当時の地図をネットで検索すると、今でもびっくりするほど精緻で美しい曲線を描いているので必見である。