私がおすすめする本

武村 政春
武村 政春教授
水圏生命科学、ウイルス学、生物教育学
神楽坂キャンパス教養部
  • コロナ禍の今、ウイルスの正体を知ることができる一冊
    ウイルスの意味論 ~生命の定義を超えた存在~
    ウイルスの意味論 ~生命の定義を超えた存在~
    山内一也
    みすず書房
    2018年

    ウイルスは悪魔か天使かと問われれば、多くの人は「悪魔」だと答えるだろう。新型コロナウイルスも、インフルエンザウイルスも、よく知られたウイルスは皆、私たちを病気にするからだ。しかし実は、ウイルスには「天使」の側面もある。私たち人類が今ここにいるのは、じつはウイルスのお蔭であるとも言えるからだ。しかしこのコロナ禍において、ウイルスに対する偏った見方が、さらに大きく「悪魔」へと偏ってしまっている。山内先生は我が国を代表するウイルス学者であり、その識見は非常に深く、本書ではウイルスの悪魔的側面、天使的側面を余すことなく紹介してくれている。いったいウイルスはどのように生まれ、なぜこの地球上に存在しているのか。コロナ禍の今だからこそ、ふと冷静になって、ウイルスの意味を考えていただく。まさに至高の一冊である。