私がおすすめする本:書籍一覧

人文社会分野の担当教員がおすすめする本

  • ユマニチュード入門
    ユマニチュード入門
    本田 美和子、ロゼット マレスコッティ、イヴ ジネスト
    医学書院
    2014年
    教員のコメント

    認知症をもつかたへのケアに関する入門書。
    コミュニケーションのあり方、人間の尊厳、「ケア」とは何か?など、認知症にかかわらず人間関係の基本・本質を再確認させられます。

    人文社会
    臨床心理学、産業メンタルヘルス
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 桃太郎
    桃太郎
    芥川龍之介
    青空文庫
    教員のコメント

    「桃太郎」のもう一つの真実?
    誰もが共通して知っているはずの昔話も、ひとつの「語られ方」に過ぎないのかも知れません。無料で、5分あれば読めます。気分転換にでも、じっくり考えるにも。

    人文社会
    臨床心理学、産業メンタルヘルス
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • カササギ殺人事件(上下巻)
    カササギ殺人事件(上下巻)
    アンソニー・ホロヴィッツ(山田蘭 (訳))
    東京創元社(創元推理文庫)
    2018年
    教員のコメント

    「もはや探偵は現れない」とも言われる現代。トリックは出尽くし、密室は分類された。さらに科学技術の発展が犯人の奇想天外な魔法的仕掛けをバカバカしくしてしまう。そうした時代に対する現代文学の答えの一つがこれだ。死を宣告された探偵。なんと象徴的な設定だろう。クリスティへのオマージュがこれでもかと散りばめられ、最良のスピンオフでもある。文学技術の粋を結集させた、2019年数々の賞を受賞した作品。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ドリトル先生 航海記 他(シリーズ)
    ドリトル先生 航海記 他(シリーズ)
    ヒュー・ロフティング(井伏鱒二(訳))
    岩波書店(新版)
    2000年
    教員のコメント

    中途半端な科学的知識が物語的想像力の面白さを損なう前に読んで欲しい。動物の権利などとほざく前に、「先生」がペットショップの前を通れない理由に微笑んで欲しい。エディ・マーフィー主演の映画なんか観る必要はない。素敵な挿絵と文章だけで思い浮かべるだけで十分だ。動物と話せたらどんなに素敵だろう。路地裏の猫だけでなく、ゴミを漁るカラスにさえ優しくなれるかもしれない。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ゴルギアスからキケロへ (人でつむぐ思想史)
    ゴルギアスからキケロへ (人でつむぐ思想史)
    坂口ふみ
    ぷねうま舎
    2013年
    教員のコメント

    いつかこんな文章を自分の専門分野で書いてみたい。そう思わせられた本の一つ。
    今や多くの人が思想を信じていない。人々を混乱させる言葉、傷つける言葉、根無草な空疎な言葉、そんな言葉とも言えない言葉ばかりが溢れる現代。僕らは言葉とどうつきあってきたのか、思想が根差す場所はどこであるべきか、「言葉の技術」の始まりの歴史とともに考え直してみたい。そして同時に、深い専門性と、時間的にも空間的にも思想的にも幅広い教養とを一つにしていく、その技をも楽しみたい。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 空の名前(改訂版)
    空の名前(改訂版)
    高橋健司(写真・文)
    KADOKAWA
    1999年
    教員のコメント

    僕らは自分を紹介するのに名前を名乗る。名前を知ることはその人を「知る」最初の一歩であると同時に全てでもある。名前を知るとその人の見え方が「ただの人」から中身のある独立した独特の特別な存在者になる。そんなことを空を眺めながら考えてしまう、そんな本。空の見え方が違ってくる。晴れ、曇り、雨と、3種類しか知らないなんてなんとも教養のない。そう、教養は世界の見方を変えるのだ。これはそんな本。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • Masterキートン
    Masterキートン
    浦沢直樹、勝鹿北星(長崎尚志)
    小学館(ビックコミックス)全18巻
    1988~(完全版(全12巻)2011~)
    教員のコメント

    学生の必読漫画にしたい。何より謎を解く旅に出たくなる。主人公キートンは、特殊部隊の元教官(マスター)であり、学位(マスター)を持つ考古学者であり、そして探偵である。行方不明者や犯人探し、歴史探訪、冒険、そして仮説の立証。多様なQuestが心優しい物語の中で重なっていく。学者は壮大な仮説の答えを求めて冒険し、一つ一つ謎を解いていく有能な探偵でなければならない。反面、文系の人間には復縁したい元奥さんが数学者という設定に苦笑い。副産物として大学の先生がちょっとエラそうに見えるのにはニンマリだ。

    人文社会
    哲学、倫理学
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 「やりがいのある仕事」という幻想
    「やりがいのある仕事」という幻想
    森博嗣
    朝日新書
    2013年
    教員のコメント

    人は働くために生きているのではない。仕事をしている人が仕事をしていない人より「偉い」わけでは全然ない。無理して働く必要などないし、人生の生きがいを仕事の中に見つける必要もない。「仕事にやりがいを見つける生き方は素晴らしい」という話は、「どこかの企業のコマーシャル」の煽り文句にすぎない。
    本書の指摘は、日本で漠然と共有されている常識に反するように見えるかもしれませんが、間違いではありません。もちろん、「仕事はそれほど重要ではない」という話は、劣悪な職場環境を改善するための努力をも軽視する方向に傾きがちになるので、その点には注意が必要ですが、人生の中での仕事の位置づけを考える(考え直す)ために一度読んでみてください。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?
    お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?
    エノ・シュミット・山森亮・堅田香緒里・山口純
    光文社新書
    2018年
    教員のコメント

    働くことについて、また少し別の角度からも考えてみましょう。「ベーシック・インカム」という言葉を聞いたことはありませんか? 誰にでも十分に生活できるだけの所得を無条件に保証しよう、という構想のことです。
    たとえば、あなたが「働けるけど、働きたくない」と思っているとします。働かなくても十分に暮らしていけるなんて、素晴らしくないですか? そんなの現実的じゃない、と思うでしょうか。しかし何事も、理想や目標を掲げて追求しないと実現しません。ベーシック・インカムという構想は、どういう理想なのでしょうか。それは、追求する価値のある目標なのでしょうか。この本の様々な議論を読んで、ぜひ考えてみてください。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 隠された奴隷制
    隠された奴隷制
    植村邦彦
    集英社新書
    2019年
    教員のコメント

    今回、「仕事」や「働く」というテーマで最近の新書を紹介していますが、そのなかでは一番堅い、思想史の本です。
    17世紀から現代までの時間軸のなかで著者が問うのは、現代では誰もが自分のことを奴隷ではなく「自由な労働者」と思っているけれど、それは本当に正しいのか、という問いです。著者は、現代の労働者もじつは奴隷ではないか、と言います。荒唐無稽だと思うかもしれません。私たちには「職業選択の自由」があるのではないか、と。しかし、本当に選択する自由などあるのでしょうか。実際にあるのは職業選択の義務であって、また、私たちは選ぶ側ではなく「選ばれる側」に過ぎないのではないでしょうか。現代の社会で働くとはどういうことなのかについて、歴史的・地理的な幅をもって考えるきっかけになるでしょう。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 生活保護から考える
    生活保護から考える
    稲葉剛
    岩波新書
    2013年
    教員のコメント

    最後に日本の現状から一冊。生活保護が仕事や働くことにどう関係するのだろう、と思うかもしれません。働かなくてもまともに暮らせる状況がちゃんと保証されているかどうかは、働く人にとっても非常に重要です。それがなければ、どんな条件でも働かざるをえなくなってしまうからです。
    著者の稲葉さんは、生活保護利用者やホームレスの人たちの支援活動を続けている人ですが、00年代くらいから今も続く「生活保護バッシング」とそれに連動した生活保護の切り下げ政策の問題点を、現場のリアルな経験を踏まえて鋭く指摘し批判しています。7年前の本ですが、残念ながらその指摘は今の社会にも当てはまります。酷い話も含まれていますが、物事を知らずにバッシングに加担してしまわないためにも、一読しておきましょう。

    人文社会
    哲学、倫理学
    野田キャンパス教養部
    推薦者
  • 日本人の法意識
    日本人の法意識
    川島武宜
    岩波書店(岩波新書)
    1967年
    教員のコメント

    明治時代に西洋法を継受して成立した日本の法体系と、人々の現実の生活や意識とのあいだに存在する「ずれ」について、具体例を多く挙げて考察したベストセラー。少し古くなってしまった議論もあるが、私たちはそもそも権利や裁判をどんなものだと思って生きているのか、という視点の置き方が重要であることを教えてくれる。著者の川島は「戦後啓蒙」の中心人物の一人で、戦後思想史の軌跡を辿るという意識で読んでも面白い。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 中世の風景(上)・(下)
    中世の風景(上)・(下)
    阿部謹也・網野善彦・石井進・樺山紘一
    中央公論新社(中公新書)
    1981年
    教員のコメント

    80年代に大きく高まりを見せた「社会史ブーム」の中で生まれた、日本の中世社会とヨーロッパのそれとを比較する対談集。「ハーメルンの笛吹き男」の研究で有名な阿部謹也や、映画『もののけ姫』に影響を与えた網野善彦などが、職人・都市・音・時・裁判・家などをテーマに中世社会を語り合う。平易でありながら重厚なその議論は、「教養」としての歴史学の門を開いてくれる。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 国会議員の仕事-職業としての政治
    国会議員の仕事-職業としての政治
    林芳正・津村啓介
    中央公論新社(中公新書)
    2011年
    教員のコメント

    現役の国会議員である林と津村が、自身の経歴や政治的理想も織り交ぜながら、国会議員の仕事についてそれぞれ具体的に語る一冊。国会に対して私たちが持つ期待と、国会議員の考え方との「ずれ」をなくすためにも、国会とは何か、国会議員とは何かについて知っておきたい。二人の議員には共通する点も対照的な面もあり、国会議員の生き方や価値観もまた「多様」であることを実感できる。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 鉄道と刑法のはなし
    鉄道と刑法のはなし
    和田俊憲
    NHK出版(NHK出版新書)
    2013年
    教員のコメント

    鉄道に関する様々な事件やエピソードを刑法と結びつけて言及する、刑法の(そして鉄道の)入門書。法学は堅苦しくとっつきにくい分野だと思われがちだが、身近なところや自分の好きな何かをきっかけに、興味を深めていくこともできるということを教えてくれる。法的思考の丁寧な説明と、ユーモアや豆知識が入り混じり、なぜか「駅名索引」もついて、鉄道マニアの人にもそうでない人にも楽しく読める。

    人文社会
    基礎法学(法制史、法思想史、法学史)
    神楽坂キャンパス教養部
    推薦者
  • 完全な真空
    完全な真空
    スタニスワフ・レム
    河出書房新社
    2020年(初版は1989年)
    教員のコメント

    <存在しない書物>の書評集。仕掛けは目新しくないが、これほど面白い本に出会うことは滅多にない。大学時代、最も刺激を受けた本の一つであることは間違いない。

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • 羊をめぐる冒険
    羊をめぐる冒険
    村上春樹
    講談社
    1982年
    教員のコメント

    「僕」が「鼠」に「君はもう死んでいるんだろう?」と聞くシーン。高校生の頃に読んだ、そのページのセリフを今でもほぼ完璧に覚えている。

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • ペスト大流行—ヨーロッパ中世の崩壊—
    ペスト大流行—ヨーロッパ中世の崩壊—
    村上陽一郎
    岩波書店
    1983年
    教員のコメント

    一つぐらいは科学史から本を。
    大学から大学院に進学する時期だったと思うが、「メメント・モリ」(「死を忘れるな!)という中世の格言を初めて知り、同時に村上陽一郎さんの本をここから読み漁った。そして、彼は私の大学院時代の指導教員となった。数値化される死から死者を救い出せ!

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者
  • これが人間か
    これが人間か
    プリーモ・レーヴィ
    朝日新聞出版
    2017年(旧版は1980年)
    教員のコメント

    私の書棚の中で、圧倒的な存在感を示し、「オレはここにいる」と主張している本。
    イタリアのトリノ大学で化学を専攻した著者は、1944年2月にアウシュヴィッツに送られ、収容所で生活する「顔のない人間」たちを見る。「これが人間か」。だが、私にとって最も印象的な描写は、「オデュッセウスの歌」という章で、レーヴィがダンテ『神曲』の「地獄編」第26歌を穴だらけの記憶の底から拾い上げ、アルザス出身の学生ジャンに語るシーンである。それは、生き地獄の中で「これが人間だ」と肯定できる奇跡の時間。
    「徳と知を求めるため、生をうけたのだ」。この本を読むと、この言葉の意味を実感することができる。そして、どうしても『神曲』が読みたくなる。

    人文社会
    科学史、医学史
    葛飾キャンパス教養部
    推薦者