メンバー
【研究課題】健康状況を把握するための画像センシングに関する研究
画像情報を用いて、宇宙滞在者の健康状況を把握するためのセンシング技術について検討する。可視光情報と近赤外情報を同時に取得でき、低照度の空間においても低ノイズで高空間解像度な画像を再構成できるようにする。また、取得した画像情報を用いて、部屋内の照明の明るさが大きく変動する際にも、心拍数を正しく計測できる手法について検討する。
研究分野
知覚情報処理 (画像処理、情報センシング、半導体集積回路)
研究キーワード
画像処理、イメージセンサ、半導体集積回路
研究職歴
1997 - 東京理科大学助手、講師、助教授を経て、
2011 - 教授
インタビュー
■なぜ宇宙の研究をすることになったか?
研究室ではもともと映像や画像の信号処理、情報センシングの研究をしており、例えば、イメージセンサ(LSI)を設計・製作したり、AIや機械学習により映像情報からいろいろなことを認識するというように、ハードウェアからソフトウェアまで幅広いテーマを扱ってきました。その一つにNIR∗(近赤外線)を使用した画像処理の研究があったのですが、本研究センターに参加させていただくにあたり、その応用として、明るい場所でも暗闇でも関係なく非接触での映像解析のみで、心拍数を推定する研究に着手しました。現在では、高精度な推定が可能となり、宇宙のような閉鎖空間でのモニタリングに役立つのではと、さらに研究を進めています。
∗NIRとは近赤外線(Near InfraRed)の略で近赤外線は波長がおよそ0.7 – 2.5 μmの電磁波で、赤色の可視光線に近い波長を持つ。性質も可視光線に近い特性を持つため「見えない光」として、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコンなどに応用されている。
■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?
NIRカメラは通常白黒の1色ですが、そこにRGB∗(赤緑青)映像を組み合わせて、暗闇でもきれいなカラー映像の取得に成功しました。
これをさらに発展させ、NIRカメラの映像から、心拍数だけでなく酸素飽和度の推定を行っています。その技術を使って、宇宙空間に限らずどこにいても人の体調を非接触でモニタリングし、異常があったときに警告を出したりするシステムを作りたいです。
∗カメラやディスプレイ等の映像機器は、人が見える光の波長を赤緑青の3色で表現している。
■地上で実現したいことは?
現時点での画像技術で被写体の現象を撮像できる範囲があるとしたら、それを飛躍的に広くしていきたい。すなわち、提案するシステムで取得できる情報、具体的には、時間や空間、明るさや色といった情報をもっと飛躍的に膨らましたいと考えています。
例えばどういう事かというと、XYZの空間中に存在している光線情報を全部撮影できれば、後で好きな視点からみた画像を再構成できます。同時に時間情報も取得できれば、例えば、サッカーの試合を(上から見たり横から見たり)自分の好きな角度で見ることが出来るようになります。ただそれには莫大な情報を扱う必要があるため、記録や通信も含めて色々な技術が進まないといけません。
■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?
映像処理もLSI製作も結果が眼に見えて確認できるんです。必ず何かアウトプットが出てくるし、作ったLSIを評価ボードにつけて電源を入れたときに映像が映るわけです。動いたときの喜びは計り知れません。そこに至るまでは大変だしハードルも高く苦労も多いけれど、その結果がちゃんと物になって見える。それがとてもやりがいがあり楽しいです。学生には、そういう経験を研究室にいる間に積み重ねて、社会に出てからもどんどん活躍してもらいたいと思い、指導をしています。
私の研究室は元々信号処理の研究室ですが、アルゴリズムの開発だけではなく、LSIの設計製作も行っており、その点がユニークです。研究室内では、ハードウェアをやっている人もソフトウェアをやっている人もそれぞれのミーティングに立ち会うため、お互いの研究を擬似的に体験し、話題を共有することが出来ます。
そういうハードもソフトもわかる知識を持って企業に就職することが彼ら、彼女らの成長・活躍には重要だと思っていて、一番いいところだと思っています。決して簡単なことではありませんが、これからも両輪でやり続けていきたいです。