メンバー

木村 真一

理工学部電気電子情報工学科 教授

【研究課題】スペースコロニーのシステム検討と関連技術の搭載化に関する研究

スペースコロニーを実現するためには、閉鎖環境での環境維持など、広範で多様な技術が必要です。これらの要素技術を宇宙に特化して開発することは、効率が悪く現実的ではありません。一方、我々はこれまで地上民生技術を搭載化することで、高機能な宇宙機器の開発を実現してきました。このような、民生技術を宇宙環境で活用する技術を活用し、主に地上向けとして研究されている技術の宇宙化を図ることで、スペースコロニー実現を目指します。

研究分野

  • 知能機械学・機械システム (宇宙ロボット、自律分散制御、モジュール形ロボット)
  • 航空宇宙工学 (自律制御、宇宙システム、軌道制御)

研究キーワード

自律分散制御、宇宙システム、民生部品、ロボティクス、マンマシンインターフェース

研究経歴

1993-2007 情報通信研究機構(旧 郵政省通信総合研究所)にて、宇宙ロボット工学、自律制御工学、宇宙システム、小型衛星に関する研究に従事2007- 東京理科大学にて宇宙ロボット工学、自律制御工学、宇宙システム、小型衛星に関する研究に従事

 

インタビュー

■なぜ宇宙の研究をすることになったか?

もともとは宇宙に興味があったわけではありませんでした。
大学では薬学部で生物のダイナミクス、情報処理メカニズムの研究を行っていました。
たとえば動物が歩行運動をどうやって実現できるか。動物はケガをして歩行できなくなると生きていくことが難しくなります。そのため、ケガをバックアップする仕組みがある。猫は大脳がなくても脊髄だけで歩くことが可能です。脊髄では、分散処理をしていて、手と足は別でコントロールしている。そのように分散して管理することで故障には強く、分散処理を全体でコーディネートするメカニズムに興味がありました。

就職活動の際、NICT(情報通信研究機構)に行く機会があり、研究所内を見学させてもらい、宇宙ロボットの話をしてもらいました。
見学した帰りの電車の中で、宇宙ロボットが故障しても動けば、様々な面で大きなメリットがあるのではと思い、それなら、今まで研究してきた動物の「故障しても動く」メカニズムが宇宙ロボットにも流用できるのではと考え、研究提案書をその場で作ってNICT担当者に送りました。この研究提案書を読んでもらい、NICTに就職することとなりました。

NICTに就職して初めてのミッションが、宇宙用ロボット技術実験を行う技術試験衛星ETS-Ⅶプロジェクトでした。プロジェクト数回目の打ち合わせからは一任され、一人で設計会議に参加することになりました。今まで宇宙の研究をしてきたわけではなかったので、この時期は猛烈に勉強しました。この時の経験が生涯の財産となっています。
宇宙の第一線で働く本物の人たちに、一人前として扱われることで大きく成長することができました。この時の経験から学生にも実際のプロジェクトに参加し、本当のプロの中で一人前として扱われることで成長するよう、機会を作っています。

■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?

直近の課題としては、スペースデブリ除去を考えています。
故障した衛星や衛星を打ち上げるときに出た破片、使い終わったロケットなどがそのままになっていることは、非常に速い速度で飛行しているので、他の衛星や宇宙船を破壊する危険性がありとても大きな問題です。これを除去するために、ロボットやカメラの開発が必要となります。
特に、宇宙ゴミに安全確実に近づくためには、宇宙ゴミを発見して、その近くまで誘導する高度な画像処理機能を備えたカメラが必要になります。このようなカメラは、複雑なミッションが確実に実施されるように、監視するという機能も担うことができます。

宇宙開発においては、状況を「見る」ということが大事だと考えています。様々なセンサーで状況をモニタすることは大切ですが、目視で状況判断ができることは非常に大きな意味があると思います。

このロボットやカメラの開発にはコストをかけることができません。ゴミを処理するのには費用をかけることができないため、低コストでないと成立しません。そのため、民生品を活用した宇宙で対応できるカメラの開発、完璧ではなくても壊れても動くロボットの開発をしていきたいです。

スペース・コロニー研究センタ-では、「宇宙で暮らす」ための技術を研究していますが、「暮らす」となると、必要とされる技術はとても多い。
宇宙のみを目標に開発していくと莫大な費用がかかるので、地上の技術を宇宙に、また、宇宙に向けて開発した技術を地上でも活用することが大事だと考えています。

最終的には、AIの技術も活用し、勝手に考えて自主的に動いてくれる宇宙船を作りたい。
生物の研究をしていた際に一番興味があったのが「発想する」ということ。昨今の計算の発展により、AIも情報の組み合わせで自主性を持っているかのように発言することがありますが、それは本当の「発想」ではないように思っています。まだ人間が発見していない要素があって、その要素を取り入れることによって人間のように自発性、発想性を実現できるのか、研究を続けていきたいと思います。

■地上で実現したいことは?

センターで研究している閉鎖的空間での居住は、地上の災害時にも活用できます。
例えば、今回の新型コロナウィルス対策としても、快適にデザインされたモジュール内で水・空気を浄化、発電し、様々なセンサーで健康管理、インターネットにも接続し、植物を育てることができれば清潔・快適にその中で生活することができます。
このように、地震や洪水そのほか様々な災害時にもこの技術を活用していきたいです。

カメラに関しては宇宙用に開発しているので放射線に強いのと、非常に小さなカメラで画像処理もできるので、原発やドリーンなど様々な用途にも役立てていきたいと考えています。

■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?

宇宙用カメラの研究に関して、成果を目に見ることができるのは本当に幸せな仕事だと思いました。2002年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「マイクロラブサット1号」という衛星で実験する機会を得ましたが、最初に地球の画像をとって、それを見たときには本当に感動しました。その後、小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星「リュウグウ」の表面に近づいたときに撮影した映像を見たときも本当に嬉しかった。綺麗な映像ではなくても、映像の力を感じたし、人がそこにいなくても見ることができることの意味を強く感じました。やはり「見る」ということが人にとっては大事なことだと感じました。

ヒューストンで行われたスペースステーションで使うロボットをスペースシャトル上で実験するMFD(Manipulator Flight Demonstration)に参加した際に、運用管制用の部屋がいくつもあり、たくさんの人が関わっていて、すべてのことがフライトに合わせて巨大なシステムとして動いています。運用訓練では、タイムラインが配布され、時間通りに実際の作業を模擬しながら行われ、その際に、通常の運用だけでなく、様々なトラブルをわざと発生させて、そのトラブルに対する対応の練習も行います。この運用に参加した経験から、様々な宇宙機器を開発することもさることながら、実際に運用することの重み、重要性、そして楽しさを感じることができました。
実際に使われるところまで行くと、様々な課題が見えてくる。さらに、宇宙システムはたくさんの人の力によって初めてできるということがとても印象に残りました。

研究内容が実際に実現し使われることは研究している喜びです。
今後も「原理的にできる」を「実際に搭載」につなげていきたいと考えています。「実現する」ところにこだわりを持って研究を続けていきたいです。

 


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