メンバー

杉山 睦

創域理工学部 電気電子情報工学科 教授

【研究課題と成果】宇宙用太陽電池に関する研究

放射線の強い宇宙空間で使用可能な、低コストに製造できるCu2SnS3系(CTS)太陽電池の高効率化および放射線耐性を検討した。Sbを添加することで結晶粒径が大幅に増大し、電気特性が向上する結晶成長メカニズムを明らかにした。また、電子線・陽子線耐性が従来のSi系太陽電池より数万倍高いことを明らかにし、実用化に向けて期待できることがわかった。

研究分野

電子・電気材料工学 (太陽電池、透明導電膜、カルコパイライト、酸化物半導体)

研究キーワード

化合物半導体結晶成長及び評価、半導体光デバイス、太陽電池

研究経歴

2000-2004 立方晶窒化ガリウム(c-GaN)エピタキシャル薄膜のMOCVD成長
2004-   CIGS系太陽電池の作製/物性解明
2006-  ワイドギャップp型酸化物半導体(CuAlO2、NiO)の成膜/物性解明
2007-   Earth abundance系太陽電池(SnS、CTS)の作製/物性解明
2007-  各種太陽電池の、耐放射線特性評価/物性解明
2009-  半導体デバイスの電気化学インピーダンス評価・劣化機構解明
2011-  NiOを用いた透明太陽電池の作製
2013-  透明酸化物半導体電子デバイス(TFT、ガスセンサ)の作製
2016-  多結晶GaN薄膜のスパッタ堆積とデバイス作製

宇宙ステーション・人工衛星搭載用薄膜太陽電池の開発

宇宙空間は、放射線や日照/日陰の温度差など、太陽電池にとって非常に過酷な環境です。
また、現在の宇宙用太陽電池は、放射線にあたると壊れやすい特徴をもち、重くて折り曲げたりすることができず、打ち上げに重量・体積制限が生じてしまいます。

この問題を解決する為、放射線などの環境に強く、軽くて自由に曲げられる多結晶CIGS薄膜系太陽電池を作製し、宇宙用単層太陽電池として世界一の発電効率を目指し研究開発しています。
宇宙でも地球上でも「半永久的に壊れない太陽電池」として使えることを目指しています。


MBEやスパッタ装置などを駆使して、自由に曲げられる宇宙用太陽電池を作製しています。

 


太陽電池が劣化する原因となる電子線や陽子線などを照射し宇宙環境下での耐久試験を行っています。

インタビュー

■なぜ宇宙の研究をすることになったか?

幼少期から宇宙に興味があり、高校時代には宇宙の様々な技術を知るためにJAXA相模原キャンパスのオープンキャンパスに行っていました。当時は宇宙に興味はあったものの遠い世界と思い、大学は電気工学科に進学し、半導体の研究をしていました。
その後、学会で放射線を研究している先輩に声をかけてもらい、太陽電池に放射線を当て、宇宙での太陽電池の活用についての研究開発を行うようになりました。地上での技術を研究していましたが、基礎があれば応用は可能で、現在は幼少期から興味があった宇宙に関係する研究、宇宙で活用する太陽電池の研究開発に携わっています。

■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?

宇宙では、エネルギーが限られている為に、センシングや研究優先にエネルギーを使用します。宇宙での農業には光が必要で、水循環にもエネルギーが必要になります。エネルギーが潤沢にあれば暮らしのクオリティが上がるのみならず、もっと楽しいことができるはず。電気を気にすることなく好きなことが好きなだけできるようにするスペースコロニーを作りたい。せっかくの宇宙滞在を楽しく、人間らしく暮らすためにふんだんにエネルギーを使えるような環境を作りたいと考え研究開発を続けています。

■地上で実現したいことは?

震災以降、原発を稼働できない状況もあり、化石燃料を燃やすことで日本のCO2排出量は増えている。現在開発している太陽光電池で日本のエネルギーが補えるように、やりたいことを電力量を気にせず存分にできるような環境を提供したいと考えています。

■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?

自分が長年研究してきたことが形になり世の中で使われることはもちろんのこと、一緒に研究している学生が成功、失敗を繰り返し、研究を通して成長していく姿を見られることも研究を続けていく喜びの一つです。