メンバー

長谷川 幹雄

工学部 電気工学科 教授

【研究課題と成果】宇宙と地上を連携する6Gネットワーク

宇宙、航空、地上を連携させる6Gネットワークに関する研究を進めた。地上と衛星の通信ネットワークを連携させ、適切な経路選択をすることにより、全体の通信容量を改善できる。機械学習を用いた最適化により、ネットワーク全体のスループットを改善できることを示した。

研究分野

  • 計算科学 (カオス、ニューラルネットワーク、最適化)
  • 通信・ネットワーク工学 (異種無線ネットワーク、コグニティブ無線ネットワーク)

研究キーワード

カオス、ニューラルネットワーク、モバイルネットワーク、無線ネットワーク、最適化

研究経歴

1994-1999 カオス理論に基づく最適化アルゴリズムの研究に従事
2000-2007 モバイルインターネットの研究に従事
2007- 無線ネットワークの研究に従事
2009- 複雑系数理工学の研究に従事

 

インタビュー

■なぜ宇宙の研究をすることになったか?

実は学生時代は人工知能というか脳型コンピューターの研究をしていて、神経のネットワーク(ニューラルネットワーク)で機械学習が出来ることの研究をしていました。
カオス理論での研究成果からNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)へ就職し、配属直前に脳の研究部門から通信ネットワーク部門へ配属先が変更になったことでワイヤレスネットワークの研究をすることになり、現在に至っています。

研究室では現在、無線通信のシステムをAIを使って効率を良くしていくという研究を中心に行っています。
スペース・コロニー研究センターだけでなく、宇宙教育プログラムでも教員として無線通信の授業を行っており、実際に宇宙の無線通信にフォーカスした研究はまだまだですが、今までやってきた研究を宇宙にも応用することを目指しています。

■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?

宇宙通信システムの最適化をして、地上のようにインターネットが出来るようにしたい。
電波を使った通信では、限られたチャンネルで多くのユーザー、多くの端末の通信を収容する、その効率をよくする事が重要です。
宇宙と地球の通信でも様々な設定の項目があります。(1) ノイズに強い方式(2)速度は遅いが長距離飛ぶ方式(3)地上と同じTCP/IP方式などです。

電波が伝わる速度は光が伝わる速度と同じで月までだと数秒くらいですが、火星となると位置関係など最悪の場合20分くらいかかります。

地上のTCP/IP方式は非常に信頼性の高い通信のできる方式でインターネットの通信にはほとんどエラーがありません。送ったデータがちゃんと届いたか、届いた場合は届いたメッセージを返して、届かない場合は再送を繰り返します。地上ではスムーズに動いていますが、これをそのまま月との通信に使うと、地球との距離が伸びることによってすごく時間のかかるシステムとなり非常に効率が悪くなります。

そのため研究室では、たとえば再送が起こり辛くなるように、エラーが多い場合には受信側で訂正できるような方式を使ったり、どの方式で通信するべきかという最適化をして一番効率の良い設定の確認をしています。

■地上で実現したいことは?

通信システムとしてよく使われる衛星携帯電話を使用している人は非常に多いと思います。
その通信システムを我々のアルゴリズムでよくしたいです。
飛行機の中で機内Wi-Fiを使ったことがある人はご存じだと思いますが、遅くて繋がりにくくてというのを経験してる人はたくさんいます。それを改善して飛行機などでスムーズに遅延無く通信が出来るようにしたいです。

■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?

自分たちの人工知能を応用したアイデアが成功し、実際に作動するのは面白い。

IoT(Internet of Things)により、たくさんの電波を発信するようになっても、スムーズに通信が可能になるような無線装置を自分たちで製作、実験したりしています。

またそういった通信システムを学生がどんどん学習、吸収し、成長していく姿を見ることはとても楽しいです。
研究室では共同研究がとても多いのですが、外部とのやりとりを通して出たアイデアを形にしたり、新しい通信方式を作ってしまったり、びっくりするような成果を見せてくれます。
不完全なところもありますが、こういった成長を感じられることが楽しいです。