メンバー

坂本 一民

太陽化学株式会社 顧問

研究分野

コロイド界面化学・皮膚科学

研究キーワード

界面活性剤の諸物性と応用(乳化、起泡、分散)
微小重力下での乳化、泡

研究経歴

1971-現在 アミノ酸を使った界面活性剤の研究に従事

微小重力下における乳化制御

EDDI(Emulsion Dynamics and Droplet Interfaces)のテーマでエマルションの安定性に関わる要因分析と界面活性剤の役割について理想的な実験データの取得と解析に必須な微小重力下での研究としてESAに提案し受諾された。本プロジェクトはイタリアICMATEのLibero Liggieri教授をリーダーとする15のチームからなる国際プロジェクトで、その内訳は欧米アカデミア8、企業7、日本からは千葉科学大山下准教授と本学がチームを組み、コスモスリサーチセンターが企業として参加している。

インタビュー

■なぜ宇宙の研究をすることになったか?

私は元々工学部で有機化学の勉強をしていました。修士課程後一般企業に就職し、32年ほど務めた中で、最初の10年と最後の12年が研究でした。
調味料メーカーでグルタミン酸というアミノ酸を、食べずにいろいろなことに利用しようという研究です。
ちょうど会社に入ったときに界面活性剤、例えば石けんみたいな泡の出る物を自然原料で作って、出来た物が安全でさらに性能も良い、そんな時代の先駆けの研究をしていました。
それを化粧品に使うには肌への影響はどうか。化粧品だけでなく、肌の研究も必要でした。
その後化粧品メーカーで界面活性剤の研究を引き続きしました。

2000年前半にJAXAで「ナノスケルトン」というプロジェクトがあり、そのメンバーとして新しいテーマの提案に参加しました。当時向井先生が宇宙で咲かせた宇宙バラの成分分析の結果が、地上で咲かせた同じバラとは成分が違うことが判明し、宇宙では新しい材料を生み出すことが出来るかもしれない、これが宇宙に携わることになったきっかけです。

■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?

宇宙は地上と違って微小重力となります。地上で当たり前のことが、宇宙ではそうじゃない。
地上ではドレッシングのように水と油を混ぜると粒状に分散し混ざった後、少し経てばまた水と油に戻りますが、宇宙の微小重力下ではずっと混ざったまま長持ちします。
地上でどうしてそんなことが起こるのか、どうしたら起こらないようにするか、いっぺんにいろんな事を見ることは出来ません。それを宇宙で実験し、さらに宇宙ではしっかりした構造の物が作りやすいので、様々な分野で利用可能な材料を作る試みを行っています。

■地上で実現したいことは?

タンパク質を作っているアミノ酸を使って、新しい界面活性剤を作りたい。
石けんで肌荒れしてしまう人でもアミノ酸だと荒れないので、泡状やクリーム状で安定させたい。

また、宇宙で出来た新材料を地上で大量生産するための条件を見いだし、いろいろな分野で応用したい。

■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?

研究はまずきっかけとして興味を持つ所から始まります。
どうしてだろう、ひょっとしてこうじゃないか、それを確かめるために考えて実行します。
それが当たっていたら嬉しいし、外れていても自分の考えが全体を捉え切れていなかったということなので、繰り返し考えます。だから研究をやめられない、宝探しのようです。

論文リスト

1. The Importance of Planarity for Lipid Bilayers as Biomembranes, Advances in Biomembranes and Lipid Self Assembly, 23, 1-23 (2016)

2. α-Gel Formation by Amino Acid-Based Gemini Surfactants, Langmuir, 30(26), 7654-9,(2014)

3. Water-in-Oil Emulsions Prepared by Peptide-Silicone Hybrid Polymers as Active Interfacial Modifier: Effects of Silicone Oil Species on Dispersion Stability of Emulsions,J. Oleo Sci., 62(7), 505-511 (2013)

4. Shear-response Emulsion Prepared through Discontinuous Cubic Liquid Crystal, Chem. Lett., 42(4), 433-435 (2013)

5. Altered sphingoid base profiles predict compromised membrane structure and permeability in atopic dermatitis. J. Dermatol. Sci., 72(3), 296-303 (2013).

6. Curvature Engineering: Positive Membrane Curvature Induced by Epsin N-Terminal Peptide Boosts Internalization of Octaarginine. ACS Chem. Biol., 8(9), 1894-1899 (2013)

7. Peptide-Based Gemini Amphiphiles: Phase Behavior and Rheology of Wormlike Micelles, Langmuir, 28, 15472-15481(2012)

8. Bioinspired Mechanism for the Translocation of Peptide through the Cell Membrane, Chem.Lett, 41, 1078-1080 (2012)

9. Active Interfacial Modifier: Stabilization Mechanism of Water in Silicone Oil Emulsions by Peptide-Silicone Hybrid Polymers, Langmuir, 2010, 26(8), 5349-5354

10. Steric and Temperature Control of Enantiopurity of Chiral Mesoporous Silica, J. Phys.Chem.,C, (2008),112(6),1871-1877.

11. Depth Dependence of Stratum Corneum Lipid Ordering: A slow- Tumbling Simulation for Electron Paramagnetic Resonance, J. Inv. Derm. (2007), 127 (4), 895-899.

12. Sunthesis and Characterization of chiral mesoporous silica, Nature , 429, 281-284(2004)

13. A novel anionic surfactant templating route for synthesizing mesoporous silica with unique structure, Nature Material, 2, 801-805(2003)

14. Phase Behavior of N-Acylamino-Acid Surfactant and N-Acylamino Acid Oil in Water, Langmuir, 19(10), 4070-4078(2003).

15. Phase Behavior and Effect of Enantiomerism on Potassium N-Dodecanoyl Alaninate/Water/DecanolSystem, J. Oleo Sci.,52(8), 407-420(2003)

16. Liquid Crystals Composed of N-Acylamino Acid. I., Circular Dichroism and Selective Light Transmission in Cholesteric Liquid Crystals Composed of N- Acyl-aminoAcids and Organic Solvents, J. Am. Chem. Soc.,100(22), 6898-6902 (1978)