メンバー

寺島 千晶

創域理工学部 先端化学科 教授

【研究課題】水中プラズマ反応場を利用した液体肥料の開発

空気と水を資源循環の視点で活用し、水中プラズマ技術によって防藻効果のある液体肥料に改質する研究開発を行う。水中プラズマによって改質した水はプラズマ機能水として効果を発現し、アオコ等の藻類の生育を抑制することができ、環境循環に資する技術とも成り得る。プラズマ反応場を解明して産業応用できるように実用化を目指す。

研究分野

無機工業材料 (ダイヤモンド材料、プラズマ化学)

研究キーワード

ダイヤモンド材料、プラズマ化学

研究経歴

2000-2003 導電性ダイヤモンドの電気化学特性とセンサ素子の機能化に関する研究
2005-2010 ダイヤモンド電極によるオゾン発生技術に関する研究
2010-現在 プラズマ技術を利用した材料創生、特に液中プラズマに関する研究
2012-現在 光触媒による二酸化炭素の固定化に関する研究

 

インタビュー

■なぜ宇宙の研究をすることになったか?

宇宙に目を向けるようになったのは向井先生にお会いしたことが一番のきっかけでした。
2014年に向井先生が理科大に訪問した際、突然その場で向井先生が学生も交えた立食の飲み会を提案してくださいました。

ニュースなどで自分が知っていたTVの中の向井先生ではなく、雰囲気も良くとても身近に感じられたことに驚きました。ざっくばらんに学生とも接してくださり、さらに目から鱗がおちるくらいの感覚や発想の違う話をいっぱい聞けて楽しかったです。やはり宇宙に行った人っていうのは人生観や感覚が違うんだなと感じ、そういう人と一緒に仕事がしたいと思いました。

幼少期から宇宙に興味はありましたが、特に行動に移すことはありませんでした。そんな中、向井先生と知り合ったことで、宇宙に行った人の発想の違い、人生観の違いに触れ、自分自身が宇宙に行くことは不可能でも、自分が関わった技術を宇宙に飛ばせたら、自分の人生観が大きく変わるのではないかと思いました。

その後、宇宙のブランディング事業を立ち上げる話があり、宇宙での居住を実現するための一つとして、今まで研究してきたアグリ技術を宇宙に向けて研究をすることになりました。

■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?

水中プラズマ技術と光触媒技術を併用することによって、資源が欠乏する閉鎖空間でも自給自足でき、かつ、衛生面に配慮したスペースアグリの要素技術の開発を行い、宇宙で居住するための食料確保を実現したいと考えています。

宇宙に限らず植物工場では、病気、カビ、藻などが問題になっていますが、宇宙空間でそれらが発生した場合は何が起こるかわかりません。センターで研究している、袋培養技術で植物を育成することにより、個々で育てることができるので、問題が起きても対象の袋を取り除けば被害を最小限に防ぐ事が出来ます。

また、水中プラズマ技術を用いることで資源が限られている宇宙空間でも水と電気だけで液体肥料を作り、さらに藻やカビが発生させないようにします。
水中プラズマを発生させるには電力が必要で、光触媒は光がないと反応しません。しかし、プラズマは反応させている間は常時光を発しているため光触媒と併用することによって反応効率を上げ、電力量の消費につながり、さらにより良い栄養が植物にいって、防藻・防カビが出来ます。

この袋培養技術と水中プラズマ技術を併用した研究を通して、狭小空間で小ロット栽培が出来、低重圧環境でも栽培を可能にして設備やコストの軽減に繋げていきたいです。

【閉鎖環境を模擬した植物工場】

■地上で実現したいことは?

食料不足問題や、災害、気候変動に備え、地上の植物工場が必要になってきますが、そのメンテナンスは大変です。

現状の植物工場では人が手で藻の処理をしています。全自動化・大型化が進んでるため、藻の処理を人の手で行うととてもコストがかかります。水中プラズマ技術を用いることで、藻やカビが生えない抗菌作用のある水を作ることができ、現在は手作業している藻の除去も不要になる。また、同時にこのプラズマ活性水は液体肥料にもなる為、人件費やコスト削減になり効率化されます。

将来的にはこの技術を無人化、装置化し、クオリティオブライフを高めて行きたいと考えています。

■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?

現在企業の方と一緒に来年には袋培養植物を宇宙に飛ばそうと計画していますが、実際に宇宙に飛ばすとなるとこんなに大変なのかと身にしみて感じています。袋培養技術はすごく簡単に言うと袋の中に特別な水を入れて植物を育てるだけなのに、宇宙となると重力がないため、水は浮き上がり空気が行き渡らず根腐れしたり、様々な課題がでてきてハードルは高いです。

しかし、この困難を一緒に研究する仲間達と実現させて、今後その大変さと楽しさを他の人に伝えていきたいです。

研究を続けることによって、新たな発見により自分が変わっていくこと、その新しい考えをまた人に伝えていくことは研究の喜びです。また、一緒に研究できる仲間と出会えたことも研究を続けてよかったことです。