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2025年度第2回坊っちゃん講座「タンパク質のかたちの理解から創薬へ」開催報告

5月17日(土)に2025年度第2回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、160名近くの参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、薬学部 生命創薬科学科 横山 英志 教授に講演いただきました。

最初に、2025年4月に葛飾キャンパスに移転した薬学部の紹介があり、共通テストを利用する入試方式の説明、薬学を学ぶ上では物理・化学・生物それぞれの知識が必要であること、本学生命創薬科学科(4年制)の卒業生数が全国4年制学部卒業生のうち約7%を占めること等の説明がありました。

 

※東京理科大学 薬学部 オリジナルホームページ ⇒ https://www.ps.noda.tus.ac.jp/

 

次に、横山先生の専門分野である『構造生物学』について、生命活動の担い手であるタンパク質は、適切な立体構造をとることで正しく機能します。すなわち、タンパク質の「かたち」と「はたらき」には密接な関係があり、タンパク質の機能や生命現象を、生体分子の「かたち」から理解する学問であるとの説明がありました。

また、この分野は2000年以降、ノーベル化学賞を5回受賞しており、最近では、クラリオ電子顕微鏡による構造解析が可能になったこと、AlphaFold2によるタンパク質の構造予測が可能になったことのお話しがありました。

 

続いて、横山先生の研究経歴について時系列で紹介があり、東京大学薬学部(学部、修士、博士)では、紫外線損傷DNAとその特異的抗体について研究を行い、(6-4)光産物の特徴的な立体構造と抗体による認識機構を初めて明らかにしました。産業技術総合研究所(ポスドク)では、膜タンパク質ストマチンとその特異的切断プロテアーゼについて研究を行い、ストマチン細胞質ドメインの構造を初めて決定しました。静岡県立大学薬学部(助手、助教、講師)では、抗がん剤ターゲットキネシンEg5-阻害剤複合体について研究を行い、Eg5とATP競合阻害剤との複合体構造を初めて決定、ATP競合阻害剤の阻害機構を解明しました。東京理科大学薬学部(准教授、教授)では、抗がん剤ターゲットキネシンCENP-E-阻害剤複合体について研究を行い、CENP-E-AMPPNPの結晶構造を分解能1.8Åで初めて決定しました。

 

※キネシンCENP-E構造研究のプレスリリース(2023.4.3)

 ⇒ https://www.tus.ac.jp/today/archive/20230331_1430.html

 

最後に、創薬ターゲットキネシンタンパク質の新規阻害剤の開発の今後の展開と将来展望として、より効率よくタンパク質の機能を制御する(阻害する)化合物(抗がん剤)を、構造に基づき合理的にドラッグデザインすること、リード化合物を開発することのお話しがあり、講演を締めくくられました。

 

講演後、参加者から届いた多くの質問に横山先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「薬のでき⽅の構造的な⾯について知ることができました。」「キネシンのEg5の機能阻害でキネシンの活動を抑制し細胞分裂を抑制することで細胞死を誘うといった説明で抗がん剤の効き⽅のようなものを知れて良かった。」「このような研究に盛んに取り組んでおられること、またその⼈材を育成されておられることを⼤変うれしく思いました。」などの感想が寄せられました。

 

講演の様子