2020.06.26
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人類に欠かせない「水素」を人工光合成で生み出す技術を開発

近年、エネルギー枯渇と環境破壊が社会問題となっています。そんななか、理学部第一部 応用化学科の工藤研究室が進める太陽光エネルギーで人工的に光合成を行い、水素を作り出す研究が注目を集めています。

現在、エネルギー資源は天然資源である化石燃料が主流となっています。しかし、化石燃料をエネルギーに変えるときには二酸化炭素が大量に排出され、環境破壊が加速されます。また、天然資源には限りがあるものです。そこで、世界ではクリーンな新エネルギーの開発が急務となっています。

工藤研究室では、太陽光エネルギーと水から水素を作り出す方法の開発に取り組んでいます。
水素は、私たちの生活にかかわるいろいろな物の源といわれています。たとえば、私たちの食料を作る畑にまく化学肥料にはアンモニアが含まれています。このアンモニアは、水素と窒素が合成されたものです。また、車を走らせるガソリンや化学工業の原料となるオレフィンなどの炭化水素も、水素と一酸化炭素、さらには二酸化炭素を化学反応させて作ることができます。ほかにも私たちの生活は、水素を活用したさまざまな物で支えられているのです。

水素を人工的に作り出すには、まず太陽光エネルギーに反応する「光触媒」の粒子を塗ったガラスを水の中に沈めます。すると光触媒の粒子に、太陽光の中にある「紫外線」が当たって水分解を起こし、酸素と水素が泡となって出てくるのです。この方法論は「ソーラー水素製造法」と名付けられ、新エネルギーとして大きな期待を集めています。

太陽と水が作り出す新エネルギーで未来の産業が変わる?!

「ソーラー水素製造法」は、化石燃料を消費せず、二酸化炭素も排出しません。また、常温常圧でのプロセスが可能なため構造自体も難しくありません。
装置を大きくすれば、新しい産業や市場を生み出せる可能があります。たとえば、この研究で得られた技術は、エネルギー産業や素材メーカー、化学メーカー、自動車メーカーなどで新しい活用方法ができるだろうと予測されているのです。

この光触媒技術は、工藤研究室を含む日本の研究グループによって基礎から応用まで研究された日本独自の技術です。ランニングコストが抑えられる新エネルギーとして、日本の科学技術にも大きな躍進をもたらすことが期待されています。 

日本は周囲を海に囲まれた島国であり、列島の中央には多くの山々が連なり、潤沢な水を蓄えています。手に入りやすくクリーンな資源を活用できることは、エコ社会の実現に貢献することへ繋がるでしょう。
水と太陽が生み出すクリーンエネルギーは、地球を守るために欠かせない未来のエネルギーとなっていくかもしれません。

理学部第一部 応用化学科
工藤昭彦教授

■ 主な研究内容

研究分野は、機能物質化学や人工光合成。水から水素を作る光触媒の開発、光触媒を用いた二酸化炭素の資源化などの研究を行っている。

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