世界では、地球の限られた資源に替わる、新しい素材の研究が多く進められています。そのうちの一つが、磁性を持つ素材です。磁性を持つ素材は、私たちの日常に欠かせないスマートフォンやパソコンなどの情報・通信機器や、電子レンジや冷蔵庫などの家電製品、さらに産業機器やMRIといった医療でも使用されています。
なかでも「ネオジム磁石」は、幅広い用途で必要とされています。ネオジム磁石は、海底鉱物資源の「レアアース」から取り出した元素で作られています。このため、世界中でレアアースが採掘されているのです。
地球の資源を守るためにレアアースに依存しない新素材の開発が急がれるなか、小嗣研究室は、新しい磁性素材として「L10型 FeNi 規則合金」を人工的に作り出すことに成功しました。この高機能性素材は、ネオジム磁石に代わるものとして期待を集めています。
研究にあたり小嗣研究室は、磁性素材として宇宙からやってきた「隕石」に着目しました。46億年かけて形成された隕石には、鉄が含まれているものがあり、優れた磁性が確認されています。
小嗣研究室は、この鉄隕石の結晶構造を規則的に作れる装置を開発。人工的に高機能な磁性素材「L10型 FeNi 規則合金」を生み出せるようにしたのです。
これまで自動車はガソリンを燃やすことで走行していました。しかし、ガソリンを燃やすとオゾン層を破壊する二酸化炭素や、人体に有害な窒素酸化物を出すため、地球にも人にも優しい電機自動車やハイブリッドカーの開発が求められてきました。
電機自動車やハイブリッドカーには、ネオジウム磁石が使用されています。しかし、ネオジム磁石を作るためには、希少で値段の高いレアアースが必要です。手に入りづらいレアアースに依存していては、電機自動車やハイブリッドカーの普及が難しいかもしれません。そこで、小嗣研究室が生み出した「L10型 FeNi 規則合金」が、今後、電機自動車やハイブリッドカーの普及に貢献する可能性があるのです。
また、「L10型 FeNi 規則合金」は、コンピュータや通信機器、自動制御装置などのさまざまな次世代のモノ作りに大きな変革もたらすといわれています。
さらに、小嗣研究室では「L10型 FeNi 規則合金」の結晶構造を目で見れる情報データにして、AI(人工知能)を使った素材検索・解析システムに提供しています。このことは今後の新素材研究の効率化にも大いに役立つことでしょう。
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主な研究内容