2021.08.10
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地震の破壊現象の数学的な解明を目指す

地震大国といわれる日本では、人が感知しない小さな揺れから、広範囲な地域に被害をもたらす大きな揺れまで、実に多くの地震が観測されています。地震という自然現象に立ち向かうためには、地震のメカニズムについて解明していかなければなりません。

伊藤弘道研究室では、「破壊現象の数理解析」をテーマの1つとして掲げ、地震による破壊現象を数学的に解明する研究が行われています。

最近では、地震によって断層がずれたり、断層に入る亀裂がどのように広がったりしているのかを知るため、その速度を決めるパラメーターの関係性を偏微分方程式を使って解析することに取り組んでいます。同時に、観測された地震波のデータから、断層がどのように動いたかを調べるという逆の視点からの研究も進めています。

物体に負荷がかけられたとき亀裂がどのように伝播していくのかという動的現象を「破壊現象」といいますが、どのように亀裂が進むのかを表現する方程式はまだ確立していません。なめらかな領域で考察することには向いている偏微分方程式は、一方で、亀裂や複雑な形を含む領域では解析が難しいのです。

伊藤弘道教授は、この研究のために長い年月を基礎研究に費やしてきました。その成果として、最近では地震学者との共著論文が専門誌に掲載され、これからの研究の方向性が明確になりつつあります。

さまざまな現象を理解するツールとして数学を活かす

数学には、身の回りで起きている現象を解析するツールという側面があります。近年では、そのための応用数学の研究が盛んになってきています。

そんななか伊藤弘道研究室では、観測網や計算機資源の発達により、多くの経験則が得られつつある地震研究においても、数学を用いて、地震機構の解明に向けて理論面でのサポートとして貢献したいと考えています。

伊藤弘道教授は、「数学が歴史のなかで作り上げてきた知見を、目の前にある現象を解析するために使いたい」といいます。研究室では、さまざまな微分方程式の物理的背景や解明するための基礎理論を研究するなど、学生の興味に応じたテーマを設定しています。

これらの研究により、地震の破壊現象を数学で解明し、被害の予測や軽減に貢献できる日がいつか来るかもしれません。安心して長く住み続けられる街づくりのために、伊藤弘道研究室に大きな期待が寄せられています。

理学部第二部 数学科
伊藤弘道教授

■ 主な研究内容

研究分野は、解析学の偏微分方程式論。水の波、地震、台風など、さまざまな自然現象を数学的に記述しようとしたときに多くの場合に現れる微分方程式を解析し、現象を理解・解明する研究を行っている。「破壊現象の数学解析」を研究テーマに破壊現象の数理モデルの確立を目指す。

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