2026年度第3回理科大サイエンス講座 「豪雨災害から人々を守る科学技術とは」開催報告
東京理科大学科学教育連携センター理数教育研究部門では、高校生・中学生を対象に、第一線で活躍する研究者が研究内容や自身の歩みを分かりやすく紹介する公開講座を実施しています。本講座は、2018年度に開始した「坊っちゃん講座」を前身とし、2026年度から「理科大サイエンス講座」として新たにスタートしました。中学生・高校生の学習意欲や進路選択への関心を高めるとともに、探究活動のヒントを提供することを目的としています。
2026年度第3回となる今回は、9月26日(土)にオンラインで開催し、創域理工学部社会基盤工学科の二瓶泰雄先生を講師に迎え、「豪雨災害から人々を守る科学技術とは」をテーマにご講演いただきました。
二瓶先生の専門は水工土木であり、今年相次いでいる豪雨災害に関して、テレビのニュースで見ない日はないほど、解説等でご活躍されています。
講演の内容は以下の構成で展開されました。
1.近年の豪雨時における人的被害概要
2.屋内浸水時の人的被害発生状況
3.車両流失時の人的被害発生状況
4.建物被害と人的被害発生状況
5.治水対策(流域治水)
6.まとめ
最初に、2026年8月~9月に発生した『千葉豪雨』と『台風25号による印旛沼決壊』を取り上げ、発生メカニズムや調査分析について説明がありました。
二瓶研究室では、豪雨被害のあった地域にて学生と共に現地調査を行い、大型実験装置やソフトウェアを駆使してシミュレーションや分析などを行っています。
今回の講演では、過去の豪雨災害の調査分析から得た教訓を現在の対策に生かし、そして、急激な気候変動に対する未来の科学技術について、多くの気づきや学びを与えていただきました。
主な学びや気づきは以下のとおりです。
・歩行者よりも自動車の方が低い水深で動けなくなる。
自動車が動かなくなるのは水深30㎝程度から。
自動車に乗っているときに豪雨災害が起こったら、もう家に帰るのは諦める。
・家屋の1階から避難できない又は亡くなる人が多いのはなぜか。
実験を行った結果、水位が上がると家具が動いて動けなくなることが分かった。
・建築の世界では、地震・風害対策が話されているが、洪水対策はほとんどなされていないため、
被害が拡大している傾向にある。
・洪水被害を減少させるために大切なこととして、グリーンインフラの活用(ボウフラ対策が必要)や、
都市計画の時点で、ハザードエリアを見直す必要性がある。
・気候変動の影響で、課題だらけになっており、少しでも解決できるような発見を、柔軟な考え方で
見つけていってほしい。また、気候変動によって、テーマの変更が必要となる等、研究にも影響が
出ている。
・AIの活用事例として、SNSに投稿された映像から推移を推定したり、川の水位がどのように変化
するかのシミュレーションに用いていると紹介があった。
最後に中学生・高校生に向けて、二瓶先生より味わい深いメッセージがあり講演を締め括りました。
*理数系の科目はもちろん大事。加えて、国語や社会(地理、歴史)もものすごく重要。多分どこかで
役に立つ。
*色んな社会的問題やニュースに広くアンテナを張ろう。
*必要は発明の母。
*素早く答えを出す「タイパ」と、(マイナーだけど)誰もやっていなそうなことをひたすら追求して
試行錯誤を繰り返す「脱タイパ」の二刀流が大事。
*専門を極めると、世界の見方が変わります。目指せT型人間※
※T字型人間とは
特定の分野における深い専門性と、他分野にわたる幅広い知識や視野をあわせ持った人材。
講演後の質疑応答では、『豪雨災害が起きた際に一番大切な行動や心構えは何ですか?』という質問に対して、二瓶先生からは、『災害が起こった時に考えるのでは少し遅いので、災害が起こる前に、どのようになるかを考えておくことは凄く大事です。マイ・タイムライン※といって、台風が来るときに、例えば三日前だったらこう行動する、当日だったらこう行動するということを事前に決めることが大切です。今では、小学校・中学校に広く配布されています。今回の千葉豪雨のような大雨特別警報の時にどう行動するかを考えておくだけでも全然違うと思います。』との回答がありました。
※マイ・タイムラインとは
マイ・タイムラインとは住民一人ひとりのタイムライン(防災行動計画)であり、台風等の接近に
よる 大雨によって河川の水位が上昇する時に、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に
整理し、自ら考え命を守る避難行動のための一助とするものです。
その検討過程では、市区町村が作成・公表した洪水ハザードマップを用いて、自らの様々な洪水
リスクを知り、どのような避難行動が必要か、また、どういうタイミングで避難することが
良いのかを自ら考え、さらには、家族と一緒に日常的に考えるものです。
詳しくは、国土交通省ホームページをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/tisiki/syozaiti/mytimeline/index.html
講演後のアンケートでは、「建築学科と社会基盤工学科の両方に興味があり、別々に捉えていましたが、本日の講義でどちらも減災を促進する点で深く結びついていることを学べました。もう一度、自分の将来像を考えて学科を考えたいと思います。」「様々な技術の中で、行政などが進めるダムの計画放流の話、堆積物をいかに溜めないようにするかに課題がある話、個人が進める田んぼダムの話や雨水を溜める庭にはボウフラ対策が必要な話など、今ある技術と課題について興味深く拝聴いたしました。」「目の前の勉強をしっかりやる、社会と自分の勉強が何につながっているのかを考えてみる、という言葉がとてもよかった。豪雨が多いため講座の内容も実際の写真がたくさんあり理解しやすかった。」「日頃の備えがやはり重要なことと、科学的な被害の想定を両輪で市民に届かせることが科学者の責務であると思います。自分は中学校で理科を教えていますが、本日のお話を伝え今後ますます科学の輪が生徒たちにも広がることを期待しています。」などの感想が寄せられました。
<講演の様子>










