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2026年度第1回理科大サイエンス講座 「電池の現在・過去・未来」開催報告

 東京理科大学科学教育連携センター理数教育研究部門では、高校生・中学生を対象に、第一線で活躍する研究者が研究内容や自身の歩みを分かりやすく紹介する公開講座を実施しています。本講座は、2018年度に開始した「坊っちゃん講座」を前身とし、2026年度から「理科大サイエンス講座」として新たにスタートしました。中学生・高校生の学習意欲や進路選択への関心を高めるとともに、探究活動のヒントを提供することを目的としています。

 

 2026年度第1回となる今回は、7月11日(土)に開催し、理学部第一部応用化学科の駒場慎一先生を講師に迎え、「電池の現在・過去・未来」をテーマにご講演いただきました。

 駒場慎一先生の専門は電気化学で、特に環境・エネルギー問題の解決に向けた新しい電池材料の研究に取り組まれています。また、2019年から2023年及び2025年の計6回にわたり、Highly Cited Researchers※1に選出された世界的な研究者です。

 

 講演の冒頭では、研究者を志すまでの歩みについて紹介がありました。中学時代の部活動や生徒会長の経験を通じて、自身の得意なことや進むべき方向を見出していったこと、また、中学校時代の先生との出会いが研究者としての原点になっていることなどが語られました。

 

 続いて、「電池の現在・過去・未来」をテーマに、研究経験やメディア出演時のエピソードなどを交えながら、電池の歴史と最先端研究についてお話しいただきました。

 はじめに紹介されたのは、世界初の乾電池である「屋井乾電池」です。1887年、東京物理学校(東京理科大学の前身)で学んだ屋井先蔵が、湿電池を改良して乾電池を発明したこと、その乾電池が寒さに強い無線電源として日清戦争で活用されたことが紹介されました。東京理科大学近代科学資料館には屋井乾電池が常設展示されていますが、今回の講演では、駒場先生が所有されている実物を特別に回覧いただきました。参加者にとって、最古の乾電池を間近で見る貴重な機会となりました。

 その後、二次電池(バッテリー)とエネルギー・環境技術についてご説明いただきました。太陽光発電や風力発電は自然条件によって発電量が変動するため、発電した電気を効率的に蓄え、安定的に供給する技術が今後ますます重要になることが示されました。

 また、私たちの生活に欠かせないリチウムイオン電池についても、実用化までの歴史や仕組みの紹介がありました。リチウムイオン電池は軽量で高電圧という優れた特徴を持つ一方、原料であるリチウムは希少資源であり、日本では産出されないことから、資源確保や地政学的リスクが課題となっています。

 こうした課題を踏まえ、駒場研究室では、リチウムに代わるナトリウムやカリウムを用いた次世代バッテリーの研究を進めています。特に、2009年には世界で初めてナトリウムイオン電池を実証しており、その後、関連研究は世界的に大きく発展しています。さらに、講演会の前々日である7月9日には、駒場先生が研究代表者を務める「ナトリウムイオン電池の技術開発」が、NEDO※2の「革新型蓄電池技術開発・高度解析」事業に採択されたことが発表され、研究のさらなる進展が期待されています。

 研究内容に加え、研究者としての生活についてもお話しいただきました。国際学会への参加を通じて世界中の研究者と交流できることや、大学院生のうちから国際的な舞台で活躍できる機会があることなどが紹介され、大学での学びや研究が世界へつながっていることを実感できる内容となりました。

 

 講演後の質疑応答では、多くの参加者から活発な質問が寄せられました。

 中学生からは、「ナトリウム電池やカリウム電池は宇宙開発に役立つか」という質問がありました。これに対し、駒場先生からは「もちろん役立つ可能性はあるが、宇宙開発では、性能を最優先した電池が選ばれるため、実際に活躍するのは高額で高性能な別の電池になる可能性が高い」との説明がありました。電池研究の可能性と宇宙開発の奥深さを感じさせるやり取りとなりました。

 また、高校生からは、「太陽光発電のパネル廃棄が問題になっているが、太陽光発電は本当にエコなのか」という質問がありました。これに対して駒場先生は、「環境に優しいかどうかは、使うときだけでなく、製造から廃棄までを含めたライフサイクル全体で考える必要がある」と説明され、LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)の考え方を紹介されました。

 さらに、高校3年生からは、「大学でやりたいことがたくさんあるが、どのように時間を作ればよいか」という質問がありました。これに対し、「時間は自分で作り出すものであり、自身のポテンシャル次第でさまざまなことに挑戦できるようになる。しかし、睡眠時間は最低でも6時間は確保してほしい」とのアドバイスがありました。研究の第一線で活躍しながら、多くの趣味も持つ駒場先生ならではの回答であり、参加者にとって大学生活の過ごし方を考えるきっかけになったのではないかと思います。

 

 講演会後のアンケートでは、

・「先生のルーツと電池の歴史を結び付けながらのお話がとても面白かった」

・「資源問題や次世代電池、LCAの考え方について深く学ぶことができた」

・「未来の電池についてさらに調べてみたいと思った」

・「理科大で学び、このような講義をもっと聞いてみたいと思った」

などの感想が寄せられました。

 

 今回の理科大サイエンス講座は、電池の歴史から最先端研究、研究者としての歩み、さらには大学での学びの魅力まで幅広く知ることができる機会となりました。本講座が、参加したみなさまの学習意欲の向上や進路選択、探究活動のきっかけとなれば幸いです。

 

※1 Highly Cited Researchers:高被引用論文(トップ1%論文)を一定数以上発表している研究者

※2 NEDO:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

 

<講演の様子>