2025年度第12回坊っちゃん講座「反粒子の物理学」開催報告
3月14日(土)に2025年度第12回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、137名の参加者がありました。
本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。
今回は、理学部第二部 物理学科 長嶋 泰之 教授に講演いただきました。
初めに自己紹介として、幼少時から理科工作が好きで、ラジオ、望遠鏡、顕微鏡など様々なものを作り、中学時代は数学の問題ばかり解いていました。高校時代に物理学に興味を持ち、予備校の夏期講習会で学んだ物理に感動しました。大学に入学してからは、物理学の様々な教科書を買って貧り読み、『物理学はおもしろい!』と思えたことが、人生を決めたなどのお話しがあったほか、本日(3月14日)は、アルベルト・アインシュタインの誕生日(1879年3月14日)との紹介から、20世紀前半における物理学の大きな発見についてのお話しもありました。
講演では、最初に『陽電子』の存在の予言と発見について説明がありました。
・陽電子の存在の予言(ディラック、1930年):量子力学の基礎方程式(シュレーディンガー方程式)。相対論を考慮するとディラック方程式になる。
負のエネルギー ⇒ 真空状態に空孔が存在 ⇒ 正エネルギーの陽電子の存在
・陽電子の発見(アンダーソン、1932年):霧箱を使って宇宙線を観測。陽子よりも遥かに軽く、しかも正の電荷を持つ粒子を発見。
次に、陽電子をどのようにして作るかについて、東京理科大学の磁場輸送低速陽電子ビーム発生装置や高エネルギー加速器研究機構低速陽電子実験施設における陽電子生成のお話がありました。
さらには、陽電子の利用例として、PET(Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影)の説明がありました。
・ガンの検診が可能
・FDG(陽電子放出核種を含むグルコース)を静脈注射すると、ガンに集まる
・ガンから2本のγ線がほぼ反対方向に放出
・測定を繰り返すと、ガンの位置を特定できる
『ポジトロニウム』について、1934年にステパン・モホロビチッチが存在を予言、1951年にマーチン・ドイチュによって気体中で発見されました。主な性質として、➀電子と陽電子のみからなる「中性原子」である ➁最も軽い「中性原子」である ➂絶縁体の中や表面で生成されることがある ④金属内部では生成されないが、表面では生成される ⑤ポジトロニウムの陽電子は、物質中では周囲の電子と対消減することがある
が挙げられ、半導体や燃料電池など、産業利用が行われています。
『ポジトロニウム負イオン』について、1946年にジョン・ホイーラーが存在を予測、1981年にアレン・ミルズによって発見されました。その後、数多くの理論的研究が行われていますが、実験的研究はほとんど行われていませんでした。(生成率が0.03%以下と低いため)
そこで2008年、長嶋先生の研究グループが、効率のよいポジトロニウム負イオン生成方法を発見しました。
さらに、武村研究室では、ポジトロニウム負イオンを電場で加速してから光をあてて電子を剥ぎ取れば、必要なエネルギーのポジトロニウムビームをつくることを可能にする、エネルギー可変ポジトロニウムビームの生成を行い、研究を発展させています。
最新の研究結果としては、電子の量子干渉(量子力学によると電子は波の性質を持ちます。何の波か? 波の波高値の絶対値の二乗は存在確率を表します。)について、この現象をポジトロニウムで観測することができるかに挑戦し、ポジトロニウムも波として振る舞い、干渉効果が観測されました。この研究成果は、Observation of positronium diffraction(ポジトロニウムの回析の観測)のタイトルで、Nature Communicationsに掲載されました。
最後に視聴者に向けて、『物理学はおもしろい』『研究は楽しい』とのメッセージを送り、講演を締め括りました。
講演後、長嶋先生が研究室にある実験装置を映しながら使用方法などを説明する、オンラインツアーのようなことを実施してくださいました。
その後、参加者から届いた多くの質問に長嶋先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。
参加者からは、「長嶋先生の学生時代のお話が聞けたこと。自身の勉強のモチベーションにつながった。また、研究室の様子を見学できたこと。オンラインで見学できるとは想定しておらずうれしかった。」「説明がわかりやすくて、面白かったです。特に、がんの発見に使われているのがすごいと思いました。また、東京理科大学の磁場輸送低速陽電子ビーム発生装置も様々な役割があって、面白かったです。」「専門的な内容、とくに数式を使って説明したくなるような内容をわかりやすく説明してくださったため、よく理解できた。また、自分の専攻でもポジトロニウムを扱ってみたいなどの関心が持てた。」などの感想が寄せられました。
<講演の様子>











