最新情報

2025年度第5回坊っちゃん講座「決めることを科学する〜データに基づく政策の決定を目指して〜」開催報告

7月19日(土)に2025年度第5回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、120名近くの参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、創域理工学部 経営システム工学科 髙嶋 隆太 教授に講演いただきました。

先生の専門は「政策科学」ですが、理系でも文系でもあるような分野であり、これを「学際的な分野」と呼びます。どのような分野であるのか、先生の研究内容も含め理解いただけるよう説明していきますと最初にお話しがありました。

自己紹介では、中学生、高校生時代のこととして、部活(サッカー部、テニス部)、趣味(小説執筆や漫才を作ること)、好きな教科(中でも数学、物理が好きだったそうです)のこと、大学では物理学、大学院では学際分野である原子力工学を専攻していたこと。助教時代に博士論文を執筆し、働きながらの論文執筆はとても大変でしたが、無事に博士号を取得できたことなどを話されました。

 

髙嶋先生が所属されている創域理工学部経営システム工学科は、2026年4月に新設される「創域情報学部」に移ります。新学部の特徴として、学生と教員、企業が協働、共創する場としての「研究会」に関する授業が行われることや、2つの系と4つのコースがあることなどの説明のほか、髙嶋先生が所属する「社会システムコース」では、「社会システムの問題や課題を把握する」「問題や課題に関する(ビッグ)データを作成する」「問題や課題を分析・評価する」「分析・評価する方法を作る」など、「企業や政府、地方自治体と共同教育・研究を実践」するコースであることの説明がありました。

 

新学部のホームページはこちらをご覧ください。

 

続いて、先生の研究分野である「決めることの科学 政策の決定」と題した講演です。「決めること」は身近にたくさんありますが、これを科学的に「決定」していきます。受講者に向け2つの簡単な問いが出されましたが、その一般的な回答結果の解釈を見ても、価値観やリスクに対する感じ方は人それぞれ違うため、「社会全体で『決める』ことの難しさがある」ことがわかります。

では、「データに基づいた政策の決定方法は?」ということで、「因果効果・関係をみる」「ランダム化比較試験」「金銭的価値に換算」「便益とは?」「便益はどのように計算されるの?」と順を追って詳しく解説されました。

さらに髙嶋先生の研究紹介として、「介護予防政策を市民はどう感じているのか?千葉県野田市の事例」「省エネ住宅の購入を考えている/考えていない人の違いは?」「情報を与えると考えは変わるの?」についても具体的な説明がありました。

 

最後に「政策のための科学」として、「色々なところに『決める』ことは存在」し「最適な解が存在しない可能性」もあります。「科学的に導いた複数の解を提示」して「データを見ながら議論することが」大事と考えます。「これからの『政策の決定』は」、「データに基づいて科学的に」実施していきましょう。ただ、人間の幸福を追求するという最大の目的があるので、人間と人間の「対話をもって」決めていく。科学+人間の対話(熟議)が必要になると考えていますと話され、講演を締めくくられました。

 

講演後、参加者から届いた多くの質問に髙嶋先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「政策科学という分野があるということすら知らなかったため学びになった。」「今年、学校の授業で探究活動があるので、データに関する話を聞くことができて良かった。また、学部学科の話もたくさん聞けたので良かった。」「何かを決定することを科学につなげるという考え方を持っていなかったので、とても面白いことを知ることができました。決定する際に使われる方法や計算のやり方など細かく具体的に教えてくださったのでとても分かりやすかったです。」などの感想が寄せられました。

 

 

<講演の様子>