2025年度第10回坊っちゃん講座「温度センサで守る!建物の安全性を見守るテクノロジー」開催報告
12月20日(土)に2025年度第10回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、120名近い参加者がありました。
本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。
今回は、工学部建築学科 助手 崎山 夏彦先生に講演いただきました。
冒頭の自己紹介では、東京理科大学に学部生として入学してから博士課程まで在学された後に、工学部建築学科の助手になられたことや、東京理科大学を目指すきっかけになったのは、東日本大震災が大きかったと自分では考えていること。東京理科大学には多くの奨学金制度があり、その制度を活用したことで学費にはあまり困ることなく、安心して大学院にも進学することができたことなどを話されました。
工学部建築学科は、意匠・環境・構造の3つの部門で構成され、2年生までは3部門全てを学びます。少しハードではありますが、意欲のある学生は3年生でも全てを学ぶことができます。学生時代の崎山先生は、単位数に関係なく興味のある科目を多く履修していたと述べられました。また、3年生からは座学に加え実験を行うことも紹介されました。
続いて、本日のテーマとなる地震被害の事例に話が進みます。現行の被災度診断として、地震発生後すぐに応急危険度判定が行われます。これは二次的災害の防止のためでありますが、震災後しばらく経ってからは復旧可否を判断する診断として被災度区分判定が行われたり、被害認定調査が行われたりすること等の説明がありました。実際に能登半島地震後に、被害状況を調査した動画を交えて解説されました。
こうした専門家が行う調査を、センサを使って行うことができないかというのが崎山先生の研究になります。
前提となる知識として、「繰返し変形した部材の壊れ具合の評価」の「疲労」や「エネルギー吸収」についての解説や「変形と発熱の関係」「建物の骨組の変形」についても詳細に説明してくださいました。
「温度計測による損傷評価法」「被災度診断の自動化」のイメージとして、環境発電(地震のエネルギー、自然のエネルギー)を活かしたモニタリングができないかと考えることができます。建物が地震によって揺れた際のエネルギーを活かして被災した情報をネット上にアップロードし、その情報にアクセスすることで建物の危険度を通知したり、複数の建物から上がってきたデータに対応して復旧資材や支援物資、作業員をどこに手配したら良いかを検討することができたり、空き巣対策としてもセンサを利用することができるのではないか。また、センサを使うと被災度診断の遠隔化もできるのではないか等と期待していますと力説されました。
各種センサについて発熱から温度を知ることができる「熱伝導解析」とその「逆解析」、「損傷評価のフロー」「損傷評価の検証例」についても解説があり、「地震が起きた時、私たちの身の回りの建物の揺れの程度を温度からも知ることができます。」と述べて、講演を締めくくられました。
講演後、参加者から届いた多くの質問に崎山先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。
参加者からは、「建物のどの部位に対して負荷がかかっているかを温度センサによって調べるという新しい考え方が非常に興味深かった。また質疑応答の際少しだけでも大学について知ることができてよかった。」「建築学科を卒業した先生の講座でとてもためになった。大学で何を学び、その後どのような仕事につくかなど将来の設計ができた。」「とても細かくそしてわかりやすく説明してくださり、楽しんで聞くことができました。 建築は少し興味があったのですが、関係しているように見えなかった温度や熱といったものを利用できることが面白いと思い、さらに興味が沸きました。」などの感想が寄せられました。
<講演の様子>











