2025年度第1回坊っちゃん講座「目に見えない小さな突起でくっきり見える?!」開催報告
4月19日(土)に2025年度第1回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、110名を超える参加者がありました。
本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。
今回は、先進工学部 電子システム工学科 谷口 淳 教授に講演いただきました。
講演タイトルにある「小さな突起」とは昆虫の一部分を指しています。生き物が持っている機能および形態を模倣して、工学的あるいは医学的応用に展開しようとする技術を「生体模倣」と言いますが、蜂の巣のハニカム構造を利用した「ハニカムサンドイッチ構造」や野生ごぼうの実をヒントにした「面ファスナー」の他、「サメ肌」や「ハスの葉」の構造を利用した例などが示されました。
また、「ナノ」の説明後、「さらに小さいもの」としてヤモリの足、モスアイ構造の解説もありました。
ナノメートルサイズを用いた技術を「ナノテクノロジー」と言いますが、1974年、当時東京理科大学教授でいらした谷口紀男先生がICPE(国際会議)で初めて「Nanotechnology」の用語を発表されたそうです。「ナノプリントのはじまり」や「ナノインプリントリソグラフィ」等についての解説後、谷口先生の子ども時代のお話しとなりました。
谷口先生は小学生の頃、昆虫が大好きでいろいろなものを飼っていたことや、ものづくりが好きだったこと。LSI(半導体素子)に興味を持ち始め、中学、高校でも引き続きエレクトロニクスに興味があり、大学は東京理科大学基礎工学部電子応用工学科(当時)に入学したこと。4年生の卒研配属では宮本岩男研究室に所属しましたが、後に宮本先生が谷口紀男先生の弟子にあたることがわかったこと。今経験していることが後々繋がったりすることもあるので、いろいろなことに興味をもってみるのがいいと思いますとお話しされました。
昨今、携帯端末機の普及により映り込みを防ぐ反射防止フィルムが求められることとなり、反射防止構造やその作製方法等について解説がなされました。反射防止構造フィルムの量産方法として、ロールトゥロール ナノインプリント装置の動画も披露してくださいました。
硬い説明が続いたので息抜きとしてと、谷口先生が2014年に在外研究として1年間フィンランドに行かれた際のお話もありました。親日国であるフィンランドの言語について、気候、ムーミン、サンタクロース、在外研究先の施設であるフィンランドVTT、周辺の観光地など、美しい写真と共に紹介されました。
最後に「反射防止構造フィルムの実用化」として、低反射で透過率の高いモスアイ構造フィルムの製造等について説明がなされた他、企業と開発した反射防止+撥水性のフィルムが、水や雪、泥などをはじいた状態となる写真が複数枚示され、すでにいろいろな物に応用されているとのお話しがあり、講演を締めくくられました。
講演後、参加者から届いた多くの質問に谷口先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。
参加者からは、「生体模倣のことやナノについて深く知ることができて良かったです。特に、蛾の目が“反射防止”に役立っていることを知り驚きました。」「生体模倣という概念を知ることができた。自分は生体模倣というものが好きだと気付くことができた。」「参加者が1万人を突破したこと※、おめでとうございます。今後も続けてください。」などの感想が寄せられました。
※ファシリテーターの松田良一先生より、今回の坊っちゃん講座で累計参加者数が1万人を超えたことの紹介がありました。
講演の様子