科学コミュニケーションセミナー「数学を視覚化する-NHK『笑わない数学』プロデューサー 井手真也さんを迎えて-」開催報告
今年度の科学コミュニケーションセミナーが、NHKの人気番組『笑わない数学』を制作した井手真也NHKエグゼクティブ・プロデューサーを基調講演者に迎えて2024年11月30日(土)午後2時から開かれました。会場129名、オンライン179名の合計308名が参加し、会場の神楽坂キャンパス6号館の教室は満席になりました。
「数学を視覚化する」をメインテーマとして、4人の講演者が経験をもとにそれぞれにユニークな視点で語りました。その後の討論会も活発で、大変盛り上がったセミナーになりました。
渡辺雄貴・教職教育センター教授が開会挨拶をしたあと、秋山仁・東京理科大学栄誉教授が登場しました。15分という限られた講演時間のなかで、教具を使いながら球の体積を出す公式を小学生にも直感的に理解してもらえるように解説しました。
井手真也さんは、番組の紹介映像や番組そのものの一部映像を提示しながら、難しい最先端の数学を誰でもが理解できるような形で伝える工夫の数々を披露しました。数学も、絵画や音楽などの芸術作品も、天才たちが生み出すという点では同じなのだから、音楽などと同様に最先端の数学を「鑑賞」する機会が子ども時代からあっていいはずという主張には、多くの人が共感したようです。
清水克彦・東京理科大学名誉教授は数学ソフトウェア「GeoGebra」を実際に動かしてみせて、数学教育にコンピューターを取り入れて視覚化する利点を説明しました。
最後に登壇したのは「サイエンスナビゲーター」として数学の感動を伝える活動をしている桜井進先生です。過去に出演したTV番組のビデオを映しながら、数学は本来「見えない」ものであると位置づけ、その難しさは絵画や音楽とは比べものにならないと述べました。
休憩をはさんで、討論と質疑応答の時間になりました。高橋真理子・理数教育研究センターアドバイザーの司会で、講演者同士の質疑応答のあと、会場からの質問を受けました。オンライン参加者から書き込まれた質問もいくつか読み上げられ、講演者たちはどの質問にも丁寧に答えていました。
最後に、眞田克典・理数教育研究センター長が講演者と参加者に感謝の言葉を述べて、2時間半あまりに及んだセミナーは終了しました。全体の司会は、理学部第一部化学科3年の澁谷心さんが務めました。
終了後のアンケートには「全くの数学下戸ですが、数学を学びたくなる内容で、とてもわかりやすい言葉での説明が良かったです。どの講師からも数学愛を感じました」「とても面白いセミナーでした。教育学的な視点から数学を見つめ直したり、一般大衆向けの数学に関する議論がなされていて楽しかったです」「数学の可視化が、数学をよりよく知る一つの手段として有効であることがよく分かった」といった声が寄せられました。
秋山先生の実演については「分かりにくかった積分をとても感覚的に理解できて非常に面白かったです」「もっと長く聴きたかった」といった感想があり、「数学体験館に行きたくなった」と書いた参加者も複数いました。
井手さんには「芸術は鑑賞するのに数学にはそれがない、というお言葉が刺さりました」「『笑わない数学』を作った意図と苦悩が興味深かったです」、清水先生には「コンピューターを用いることで図形のイメージの涵養を図るというアプローチは今まであまり意識したことが無かったものだったので、とても良い気づきとなりました」、桜井先生には「理路整然とした、かつ情熱のこもった数学論に感銘を受けました」「円周率について、数、数字、数値の違いなど数学を解く以外での面白さに改めて、気づかされました」といった感想が寄せられました。
*科学コミュニケーションセミナーの様子*
東京理科大学 栄誉教授 秋山仁 先生 NHK エグゼクティブ・プロデューサー 井手真也さん
東京理科大学 名誉教授 清水克彦 先生 サイエンスナビゲーター® 桜井進 先生
討論と質疑応答 満員の会場
理数教育研究センター アドバイザー
高橋真理子さんによる司会(左から1番目)
教職教育センター 渡辺雄貴 教授の開会挨拶 理数教育研究センター長 眞田克典 教授の閉会挨拶
総合司会を務めた、理学部第一部 化学科 3年 澁谷心さん