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2024年度第9回坊っちゃん講座「イオンを運ぶセラミックス:未来のエネルギーを担う見えない動きの秘密」開催報告

11月9日(土)に2024年度第9回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、約100名の参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、工学部 工業化学科 田中 優実 准教授に講演いただきました。

はじめに、『自己紹介』として小中学生時代から“紫キャベツを使ってpH試験紙を制作” “エステルの合成に挑戦” “酸素吸収剤を使った光合成の研究”などに親しみ、高校生時代に文系コースを選択するも、化学が好き・ものづくり(特に工作系)も大好きなことから理系に進学しました。学部時代は部活やアルバイトに力点を置きましたが、研究室に配属後から大学院修士時代に周囲が一気にアカデミックな雰囲気になり、このままではまずいと思い勉強(無機化学や固体化学)に集中しました。その過程で、研究関連の勉強やデータ解析が面白く研究が好きなことから、将来、アカデミックに進みたいと思い博士課程に進学したことのお話しがありました。

 

『セラミックス』について、取り扱う元素の種類・組み合わせが多く、研究のおもしろさとして、セラミックスの組成、構造(結晶・欠陥・組織・・・)の制御、イオンの動きの制御(伝導・分極・蓄積)の制御、新たな機能の創成、世の中の役に立つデバイスの開発についてお話しされました。

 

次に、固体の中でイオンが動く現象を扱う『固体アイオニクス』について、“物理学” “化学” “材料科学” にまたがる学際領域学問であり、この言葉を作ったのは、当時、名古屋大学の教授であった高橋武彦先生であり、今でも日本が強い分野であるとの説明がありました。

実際に固体の中でどうやってイオンが動くのか、水酸アパタイト(脊椎動物の硬組織(骨、歯、関節等)の無機主成分)を使い、様々な動画の紹介がありました。固体アイオニクスの特徴として、電荷の移動と同時に化学物質の移動が起こることから、電気的作用と化学変化の橋渡しができることの説明がありました。

 

さらに、『電池と固体アイオニクス』では、リチウムイオン二次電池の説明から正極材料の種類(LiCoO(層状岩塩型)、LiMnO₄(スピネル型)、LiFePO(オリビン型))や特徴、正極材料としての条件についてお話しがありました。

 

これまでのまとめとして、固体(セラミックス)の中でイオンが動く現象・・・、目には見えないこの現象が実はクリーンなエネルギー供給システムや安全で信頼性が高い蓄電システムの開発において、とても重要な役割を果たしていることを伝えました。

 

続いて、『研究紹介』では、最初に振動発電(電気の変換方式)とエレクトレット(双極子形成や空間電荷に起因する安定な静電気により長期間にわたって電界を提供する材料)について説明がありました。続いて、「エレクトレット式振動発電システム」「イオン伝導性セラミックスを用いたエレクトレットの作製」「水酸アパタイト系セラミックエレクトレット」などの研究紹介がありました。

振動発電デバイスの展開は、バッテリー補助システム(スマートフォン、スマートキー)、センサシステム(橋梁・トンネル、設備監視、ロボットアーム、モビリティ)など多岐に渡っています。

 

最後にまとめとして、セラミックスの中のイオンの移動は常にスムーズなわけではなく、イオンを引き留めるトラップもたくさん存在します。イオンの様々な動き(伝導・分極・蓄積)を自在に制御して新たな機能を創り出し、世の中の役に立つデバイスの開発につなげたいとお話し、講演を締め括りました。

 

参考として田中先生から、この楽しい研究分野に興味を持っていただけると嬉しいとのことで、教育系You Tuberのヨビノリたくみ氏と田中先生の学術対談の動画が紹介されました。

 

※高校化学で勉強した「電池」の先の世界

 https://www.youtube.com/watch?v=tVxevP-0tno

 

※振動を電気に変える化学

 https://www.youtube.com/watch?v=as9AtrZadPk

 

ご講演後、参加者から届いた多くの質問に田中先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「身近なリチウムイオン電池についてより詳しく仕組みなどを知ることができ、貴金属などをいかに使わずに、いかに低コストで環境にやさしい電池を作るかというお話が大変興味深く、田中先生の学生時代のお話も本当に面白かったです。」「工学的あるいは応用的な研究の大変さと面白さが伝わってきました。」「生い立ちから今・未来にいたるまで熱くお話される先生でいながら、全く嫌味の無い素晴らしい先生でした。」などの感想が寄せられました。

 

講演の様子         

  

 

  

 

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