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高校生と高校理科教員のための細胞培養講習会 開催報告

 2024年8月20日(火)・22日(木)の両日、神楽坂キャンパスにて、理数教育研究センター主催「高校生と高校理科教員のための細胞培養講習会」(講師: 松田良一   東京理科大学 客員教授(元教授)、東京大学 名誉教授、坂下丈太  東京学館浦安高校 非常勤講師、東京理科大学 理学研究科 科学教育専攻 博士後期課程2年)を実施した。受講者は21名(高校生18名、高校理科教員3名)であった。

 

 私たちの身体は30兆個を超える多くの細胞から成ると言われている。細胞は生物体の基本単位であるが実際に生きた細胞を観た人は多くない。教室で先生に説明され、教科書を読んで細胞の存在を信じるだけである。 

 その生きた細胞を実際に観ることは生物学教育の第一歩だが、高校の教育現場で生きている細胞を観察することは難しい。培養や観察に必要な炭酸ガス培養器や倒立位相差顕微鏡は高額で、さらに細胞の扱いに技術を要するからだ。そこで私たちは、特殊な恒温器ではなく実習室にある恒温器でpH緩衝剤が入ったL-15培養液と培養フラスコを用いて細胞を培養し、倒立位相差顕微鏡の代わりに高校生にとって身近なスマートフォンのセルフィ―レンズ部に DVDプレイヤーから取り出したレンズを貼り付けるだけで簡単に細胞を観察・撮影できる方法を開発した。 https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s11626-024-00906-2.pdf 参照)

 この方法を高校生や高校理科教員に普及させることを目指して、「高校生と高校理科教員のための細胞培養講習会」を開催した。 

 第一日目(8月20日):参加者たちは雑菌の混入に気を付けながら、孵卵12日目のニワトリ胚胸筋を摘出し、組織片を生理食塩水の中でパスツールピペットの吸引排出を繰り返す(ピペッティンク)ことで細胞を解離させた。それを培養液中で1000倍程度に希釈し、ゼラチンコートした培養フラスコ内で38℃培養した。 

 第二日目(8月22日):スマホ顕微鏡の作製法について説明し、各自のスマートフォンと CDレンズを配布し、それを用いてスマホ顕微鏡を作った。培養中の細胞をスマホ顕微鏡を用いて観察し、撮影した。講習会終了後、参加者は細胞が生えている培養フラスコとCDレンズを持ち帰り、自宅や学校でさらに観察を続けた。(細胞は運搬の振動に耐えて培養フラスコに接着し続けた。以下の写真のスマホ倒立顕微鏡で撮影したニワトリ胚の骨格筋細胞の様子を参照) 

 

 受講した生徒や教員から次の感想が寄せられた。 

「最初ニワトリの胚を卵から取り出すことに抵抗がありましたが、やってみると楽しくて、そこから取った筋細胞を観察すると今まで見たことのないものが見えて有意義な時間でした。(生徒)」 

「自分のスマホとレンズのみで実際に細胞を観察できることが何よりも感動した。本当に有意義な時間を過ごすことができ、より細胞培養に興味を持つようになったと思う。(生徒)」 

「自分の細胞培養が上手くいかず、残念な気持ちにもなったが、それでも「なぜ、うまくいかなかったのか、また、上手くいったものとの違いは何か」と考察するきっかけになった。実際に目で観て考えるという座学にはない魅力を実感できた。いろいろな土地から理科大まで集まってきた人と交流し、いろいろな夢のある人がいるのだな、と思えた。成功させたいので、冬の講習会にも参加したい。(生徒)」 

「培養の講習会ということなので、無菌操作などをしっかりやらなければいけないと思っていたが、工夫した培養液を使い、顕微鏡の代わりにスマホで細胞を観られるなど身近で感じられる体験ができて、生きたままの細胞を持ち帰ることもでき、感動した。学校でも生物の先生方と共有し、授業でも活用できそうです。(教員)」 

 

 

 細胞培養講習会の様子➀

 

 

 細胞培養講習会の様子②

 

 

 細胞培養講習会の様子➂

 

 

 スマホ倒立顕微鏡で撮影したニワトリ胚の骨格筋細胞の様子(培養2日目)

 山形東高校  渋谷  律  先生撮影 

 

  

 スマホ倒立顕微鏡で撮影したニワトリ胚の骨格筋細胞の様子(培養4日目)

 都立第四商業高校  山本  智義  先生撮影

 

 https://youtu.be/jrXTFuX4_5E

 ニワトリ胚由来心筋細胞の培養10日目のスマホ倒立顕微鏡による動画

 

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