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2024年度第5回坊っちゃん講座「計算によって創られる音楽」開催報告

7月20日(土)に2024年度第5回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、200名を超える参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、本学 創域理工学部 情報計算科学科 大村英史 講師に講演いただきました。先生は現在、在学研究員制度(サバティカル)を利用し、タイのNECTEC(National Electronics and Computer Technology Center)に客員研究員として在籍しているため、この日はバンコクからの配信となりました。

 

最初に自己紹介として、子供の頃から楽器(バイオリン、ドラム、ギター、ピアノ)やプログラミングに親しみ、大学ではオーケストラに入団、大学院では人工知能や認知科学を研究し、最初の就職先も楽器の製造・販売会社でした。好きなことばかり考えていたら、現在の職業・専門分野になったとの話がありました。

 

講演では、“音楽とはなにか”から始まり、ゴーストライター事件、S氏がもしAI作曲家に代作させていたら、地下鉄構内演奏実験、John Cageの沈黙の曲「4分33秒」、Musicking(音楽に関係するすべての活動)という造語の紹介など様々な例を取り上げました。

 

“音の要素”では、音の三要素、音の大きさ(波の揺れの強さ)、音色(波の形)、音高(波の周期)について様々な音を視聴者に聞かせました。上記以外の重要な要素として音がいつ発音されるか(タイミング)について話されました。

続いて、数学者のピタゴラスが発見した12音階(ドレミファソラシド)の話から、先生の研究である音程による音高の格子空間について、音の要素の関係を格子空間に表現すると楽譜のようになるとの説明がありました。

 

“どこからが音楽?”では、オドボール課題、エントロピーの話から20世紀の音楽家が挑戦した価値のある音、価値のない音の紹介、不確実性と情動(Berlyneの逆U字関数)、12音・五度圏で確率分布を与える、2次元の正規分布などの説明がありました。

 

“システム実装”では、実際に計算によって音楽を創るデモンストレーションがありました。

詳しくはこちら ⇒ http://ohmura.sakura.ne.jp/sc/music2/

 

まとめとして、①音楽は物理的な音の構造 ②音だけが音楽ではない、背景や環境も重要 ③音楽を聴取するときに考えてみよう ④音楽を情報として考えてみると...

上記から、音楽の何が楽しいのかを考えてみると、いつもとは違う視点で音楽が楽しめるではないかと話され講演を締めくくりました。

 

最後に中高生への進路アドバイスがあり、音楽に関わる分野として、科学(なぜ人間は音楽を楽しめるのか?)、工学(音楽はどうやって作るのか?)、芸術(未知の音楽とはどのようなものか?)の説明がありました。

 

講演後、多くの質問に大村先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「音楽演奏が大好きで待ち望んでいた講演でした。大変分かりやすく、単なる音楽とは何なのかの講演ではなく、多方面からのアプローチや確率を用いた曲など、楽しんで学習できました。」「音楽は感覚的なものだと思っていましたが、数学、計算によって目に見える形で表されることを直に見せていただいたことが大変興味深く面白かったです。」「講座のタイトルに魅かれ、身近に溶け込んでいる音楽は数学とどのようなつながりがあるのかを知り、またいろいろな切り口で既成概念に捉われない音楽との接し方にも気づけたことが良かった。」などの感想が寄せられました。

 

講演の様子