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2024年度第4回坊っちゃん講座「高校数学からマシンラーニングへ」開催報告

6月22日(土)に2024年度第4回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、130名を超える参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、本学経営学部 ビジネスエコノミクス学科 安藤 晋 教授に講演いただきました。安藤先生は、東京大学及び大学院においては工学系に所属し、就職も国立大学の工学部、理工学部でしたが、東京理科大学では経営学部に着任し、現在はビジネスエコノミクス学科に所属されています。専門は人工知能(ディープラーニング)、機械学習、データマイニングであると自己紹介されました。

「本日は『高校数学からマシンラーニングへ』というタイトルでお話ししますが、中学・高校で学習している数学と『AI』や『マシンラーニング』といった実用的な技術とのつながりをお伝えすることで、みなさんが数学を学習していく上でモチベーションとなることを期待しています。」と前置きがあり、講演がスタートしました。

 

「AI(人工知能)」とは人間が行うような「タスク(仕事)」をコンピュータやロボットに行わせますが、人間以上に高性能で、コストのかからない効率的なものが実現できればとても役に立ちます。自動運転のAIや画像・文書生成AIなどが有名です。「マシンラーニング(機械学習)」はほぼAIと同じようなタスクを行いますが、カメラで撮影する際に顔を認識するのは、自動運転で人を認識するのと非常に近いタスクであり、他にスパムメールを検出するフィルターの役割などの技術もあります。マシンラーニングはAIの要素技術、部品のような技術、Narrow AIと呼ばれることもあると説明されました。

 

現実の世界には「観測可能な現象や行動」があり、それを記録したものが「データ」となりますが、似たような言葉に「情報」があります。コンピュータ科学の用語で、コンピュータに記録するために形式を整えたものをもともとは「データ」と言っていました。一方、たくさん観測されたものの中から内容によって選別したものが「情報」で、情報やデータと一緒に使われる言語に「知識」がありますが、計算機で扱う「知識」は「モデル」や「簡略化したルール」になります。例として、アイスクリームを食べるという観測できる現象を、「年月」「支出金額」に「平均気温」の「情報」を加えた表を作成し、これを使った「モデル」(グラフとそれを表す式)についての説明がありました。現実とは完全に同じではないが、使いやすく現実を模した式などが「モデル」であり、マシンラーニングのモデルは数式や規則になることもお話しされました。

続けて、「AIとマシンラーニング」が行うことはなにかというお話しです。「マシンラーニング(機械学習)」は知りたいことに関連する情報を集めて、それを使って式(知識のモデル)を作ります。知能は知識を使う能力であり、「AI(人工知能)」は状況に合わせて知識を活用・選択・更新し、それを使って現実の問題に対処しています。データはコンピュータに保存する形式であり、「表現」は計算に使う形式、一番よく使われるのが「ベクトル」となります。人や商品をベクトルで表現することにより、様々な数学のツールが使えるようになります。「データから学習する」とは、モデルが現実(の観測)に合う、予測できるようにすることであり、マシンラーニングが行うことであると説明がありました。マシンラーニングで使われる表現として、アヤメの特徴をベクトルで表す方法、人の好みをベクトルで表す例を具体的に説明いただきました。

 

「サポートベクトルマシン」は種類を予測する方法であり、種類を予測する問題を「分類問題」と言います。過去に観測したデータ(ベクトルと種類)が与えられ、それを基にモデルを作り、新しく与えられたデータの種類を分類(予測)します。先ほどのアヤメのデータを用いて「問題設定」をし、「分類のモデル」や「学習(観測したデータを使ってモデルを作る過去のデータの境界になる直線を決める(傾きと切片))」、「予測の難しさと原理」などについて詳細な説明がありました。さらには、「境界の決め方」や4点以上の場合の「サポートベクトルの選択」「サポートベクトルマシンの解法」などの解説があり、実際に例題を解いていきました。

 

最後に安藤先生の進路選択のお話しがありました。東京大学理科一類に入学された安藤先生は、3年次進学の際に学科を選択することとなりますが、1、2年時に物理、化学、生物の様々な実験をする中で、プログラミングの授業が楽しかったことから電子情報工学科を選択されたそうです。進化的計算の研究室に配属された際、ディープラーニングの基礎の勉強を少ししていたことが役立ったことや興味のある本を多く読んでいたことも研究室選択に役立ったこと、修士課程の時に国際会議の発表を多く経験させてもらったことから、博士課程に進学した際には大学に就職したいと考えていたこと、最初に工学系に就職したが、後に理科大の経営学部に転職した際も、マシンラーニングは人の行動などモデルがきちんと決まってないデータを扱うので経営学部でもやっていけるだろうと考え、思い切って着任したことなどのお話しがありました。

また、経営学部のオープンキャンパスが開催されることのご紹介もあり、お話しを締めくくられました。

ご講演後、参加者から届いた質問に安藤先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「先週学校で習ったばかりの高校数学が、どのような分野で実際に使われるのかがわかり有意義だった。」「数学が好きなのですが、こういう進学先もあるのだとわかりとても興味深かったです。」「すごく複雑なことをやっているイメージでいたが、実際に話を聞いてみると単純な数学であったので意外に思った。」「経営学部に対するイメージが変わりました。」などの感想が寄せられました。

 

講演の様子