2024年度第1回坊っちゃん講座「みんなが知りたいエネルギーと環境のお話」開催報告
4月20日(土)に2024年度第1回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、120名を超える参加者がありました。
本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。
今回は、本学理学部第一部 物理学科 川村康文 教授にご講演いただきました。
SDGsとして17項目ある中で、本日は川村先生の専門であるエネルギー分野について講演を進めていくにあたり、「講演後に自分には何ができるのか。こんなことをアクションしてみたい。など、いろいろ考えてもらえると嬉しいなと思います。」と前置きをして講演がスタートしました。日本のエネルギーは主に石油、石炭、天然ガスなどの「化石燃料」に頼りがちですが、量に限りがあったり環境に害を及ぼしたりなどの問題があります。「原子力」はみなさんも「3.11」の記憶が多くあると思いますが、コントロールすることが大事であり、高度な科学技術力が必要となります。「自然エネルギー(再生可能エネルギー)」は、太陽光などの比較的安全で環境にやさしいエネルギーです。今このオンラインの講座も電気があるから実施することができます。夜も電気があるから生活できます。私たちは多くの電気を使用します。そのためには電気を生み出すシステムが必要となりますが、どのように発電するのかを考えていくことが重要です。
2011年3月11日に未曽有の震災および原子力発電所の事故を経験しました。ライフラインが途切れることがどれほど不便であるか身をもって体験しましたが、そのことを受けて「ライフラインがつながる」「やさしさや思いやりをもって人と人の心がつながる」ことを目的に、「つながる思いプロジェクト」を立ち上げ、特に東北地方で出前授業を実施するようになったそうです。
自然エネルギーによる発電には例えば「風力発電」があります。「つながる思いプロジェクト」の一例として、久慈市立久喜小学校で実施した「実験教室」で、子どもたちと共に風車を作り下足箱の辺りに置いたことのお話しがありました。子どもたちが下校する際、夕方暗くなった下足箱の辺りを電力不足のため電気が使用できず懐中電灯で灯していると聞き、風車で発電して電気を灯そうとしたものです。子どもたちには、動物や植物の世話する様子を日記につけるように、「風車日記」を毎日書いてFAXをしてくださいとお願いしました。子どもたちに寄り添う趣旨に賛同した研究室の大学院生が、毎日送られてくる「風車日記」にコメントを書いて送り返すということがしばらく続けられたそうです。
その他、理科大の前で風車点灯式を実施したことの紹介もありました。明かりを灯して参加者の心を和ませることができ、エネルギーや環境のことを一緒に考えることもできます。街の風景に溶け込んだ風車が、街中を抜ける風で回る。川村先生は「つながる思い」というテーマソングも作られたそうで、ギターを奏でながら美声を披露してくださいました。
「電球1個からの省エネ!!」と題して、高校教員だった頃に省エネ電球デモンストレーション実験器を作ったことや、2005年の世界物理年に、ノーベル賞を受賞される前の中村修二先生と長野県で「実験教室」を開催しLED電球について実験したことのお話しもありました。「サボニウス型風車風力発電」では、風向きを気にせず回り、騒音が少なく、微量な風で起動可能な都市環境に適した未来型の「サボニウス風車」について紹介がありました。1個でのパワーは弱いが数多く同時に使用することで大きなパワーが生まれることの例として、実際に700個の「サボニウス型風車」が設置され「サボニウス型風車と太陽電池のハイブリット型発電装置」として稼働している様子が紹介されました。「リサイクル7」では、ペットボトルで繊維をつくることはよく知られていますが、綿菓子を作る機械とはた織り機で作成する方法の紹介や、リサイクルマークの説明等がありました。「地球環境を守る宇宙船にっぽん号」は研究室の学生と共に行ったサイエンス・ライブ・ショーであり、地球温暖化をたくらむ悪役に対し、会場の子どもたちと一緒にどうしたら二酸化炭素、温室効果ガスを減らすことができるかを考える内容の舞台であり、200公演以上行ったこと。「実験教室」は子どもだけでなく大人も一緒に参加し全員で二酸化炭素について考えることができるものだとお話しされました。「世界平和のために!」として、今日講義を聞いてくれたお友達も大人も地球を愛し人類を大切にし、世界平和を大切にする。小さいお友達が、科学が楽しいと感じて科学者や技術者を目指してくれるかもしれません。地球の上で人々が心豊かに暮らすことができ、これからは宇宙開発の時代でもあるので宇宙のことも考えていきながら、みなさんが世の中のリーダーとして率先して引っ張っていってくれたらいいなと思いますと述べ、講演を締めくくられました。
ご講演後、参加者から届いた質問に川村先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。
参加者からは、「自然科学を勉強しようという強い動機付けになる。」「自然エネルギーの詳しい内容について、学校で習わない部分を写真や図を交えて教えてくださったので面白かった。」「改めて普段使っている電気を大切にしなければならないと感じることができた。」「身近なものを題材に、考えさせられる内容でとても興味を持って講座を受講できた。」などの感想が寄せられました。
講演の様子