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2023年度第9回坊っちゃん講座「ソリトン・非線形数理の楽しみ~スケール不変な自然現象たち~」開催報告

11月11日(土)に2023年度第9回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、100名近い参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、本学創域理工学部 先端物理学科 澤渡信之 教授に講演いただきました。最初に、創域理工学部先端物理学科の各研究室について、丁寧な解説がありました。自己紹介では、幼いころからピアノや柔道を習い、熱心に取り組んでいたことや東京理科大学理工学部物理学科(当時の名称)に入学され、大学院に進学、教員になってから現在に至るまでずっと理工学部(現・創域理工学部)に在籍し野田キャンパスに通っていること。学生の頃に自分は英語と外国人が苦手で、研究室に外国人の客が来ると相手をするのが苦痛なあまり、大学に来なくなるほどであったが、ある時から苦手とは感じなくなり積極的に対応することができるようになった。その時にこんな自分もいるのだなと気付いたこと。自分はこうだと決めつけることはあまり意味のないことなのだなと感じたこと等、実体験をお話しくださいました。

 

本題に移り、まず、「自然を理解する際のいくつかの典型的な考え方」には「推測(Speculation)、不変性(Universality)、普遍性(Transversality)」の3つがあることについて述べられます。中でも「Transversality」がこれからのScienceを進めていく上で有力な武器となるのではないかと考えていることや、「推測(Speculation)」の悪い例として、当時考えられていた「自然発生説」についての解説。「物理学の歴史の概観」の図を用いながら、ちょうど20世紀を境に「推測(Speculation)」から「不変性(Universality)」の世界に移り替わったこと等の説明もありました。

 

素粒子論の歴史として物質の構造に関する研究を見ていくと、分子、原子、原子核、陽子、中性子、超弦理論、それぞれの大きさやそれが発見されるまでの年数、発見者等についての解説がなされ、素粒子間の相互作用は4つしかないことやその力の違い、素粒子論の考え方に基づいた膜宇宙論という考え方について、わかりやすく解説されました。

 

「ソリトン:粒子的性質をもつ(形の壊れない)孤立波」を最初に発見したのは造船技術者であったこと、KdV(コルトヴェーグ・ドブリース)方程式によりKdVソリトンの波形の解が得られること。このような現象、このような数理がこの世に存在することに、先生ご自身が非常に興味を持たれ面白いと感じたこと等のお話がありました。時間が一つ、空間が一つで起こる現象について説明してきましたが、空間が二つになるとさらに面白い現象が起こるとして、高次元のソリトン解についての解説もありました。

 

また、木星の大赤斑が約400年以上も存在することや「流体力学における非線形数理とソリトン」について、さらには、「素粒子の質量はどのようにして決まるか」「トポロジー」「磁気スキルミオン」についても、非常に分かりやすく解説してくださいました。

 

最後に先生ご自身が「影響を受けたさまざまな言葉」としてピアノの先生や亡きお父様からのお言葉、先生ご自身が尊敬する数学者や作曲家の言葉の紹介があった後に、「普遍性」を目指すには、みなさんが自分の好きなこと、信じることを掘り下げていくとそのことが必ずどこかで役に立つことがあったり、新たな自分を発見したりすることがある。自分が見つけたものを信じて掘り下げて、いろいろなものを見つけてくれたらいいかなと思うとメッセージをくださいました。

 

ご講演後、参加者から届いた多くの質問に澤渡先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。

 

参加者からは、「講義の内容は難しく感じましたが、先生のお話はとても楽しく興味深かったです。」「ある現象に対して考える際に一つの分野、視点から考えるのではなく、まったく異なった分野、今回でいうところの木星の大赤斑についてプラズマの分野から考えることで問題解決の糸口を掴むことができたというその姿勢というものが学べたことが良かったと思います。」「とてもわかりやすいお話をいただき、ありがとうございました。ソリトンというテーマを軸に、トポロジー、非線形、スキルミオンといった興味深いテーマが次々と頭の中で繋がりました。」「素粒子論の歴史やソリトンとの関わりなどを知ることができ、また研究する上での様々な見方、考え方を知ったことで、将来の職業や研究についてイメージが広げられたので良かったです。」などの感想が寄せられました。

 

講演の様子

 

   

 

 

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