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2023年度第7回坊っちゃん講座「量子コンピュータって何だろう!」開催報告

10月7日(土)に2023年度第7回坊っちゃん講座をオンラインで開催し、150名を超える参加者がありました。

 

本講座は最先端の研究や応用研究において世界をリードしている研究者が研究の面白さを高校生、中学生および大学生に伝え、勉学意欲の向上と進路選択に資するために開講しています。

 

今回は、本学理学部第二部 物理学科 堺和光 教授に講演いただきました。最初に自己紹介として、自身は大学院生の頃から現在まで、統計力学や場の理論における可解模型の研究を行っているが、2020年頃から研究室の大学院生のアイデアがきっかけで量子計算に関連する研究も行っているお話がありました。

 

講演は、「量子コンピュータって?」で始まり、実用的な量子コンピュータが完成したとすると、スーパーコンピュータでもシミュレーションが難しい、新材料の開発や化学物質の設計が可能となり、最適化問題、金融、暗号など、様々な分野に応用できる可能性がある。しかし、その実現のためには、乗り越えなければならない課題がたくさんあり、情報科学、工学、物理学、数学など、多くの分野から研究者が研究・開発に参入していることの紹介がありました。

 

次に、「量子力学の不思議」として、古典力学から量子力学の完成までの歴史的変遷について、ニュートン、プランク、アインシュタイン、ハイゼンベルク、シュレーディンガーの理論について説明がありました。量子力学特有の性質として、①重ね合わせ ②干渉 ③エンタングルメント(量子もつれ)の3つがあり、この性質をコンピュータに応用しようというファインマンのアイデアが提出されたのは量子力学完成から50年以上経ってからという話でした。

 

「古典計算 vs. 量子計算」では、1古典ビットは0と1の二つを表せるが、一度に表せるのは0と1のどちらか一方、1量子ビットは0と1の二つを同時に表せる。3量子ビットでは、000、001、010、011、100、101、110、111の8つを同時に表せる。現在までの世界最高記録(IBM)は、433量子ビット(2.2×10130)までの数を同時に扱える(ちなみに、観測可能な宇宙中の原子の総数は1080くらいと言われている)。

しかし、多くの状態を同時並列的に処理できたとしても、測定(観測)すると、波束が収縮してしまって、一つの状態が確率的でしか得られない。すなわち、高速になるのは、重ね合わせ性質を巧妙に利用できる問題に対してのみ(例:素因数分解や探索問題など)であり、何でもかんでも量子コンピュータに置き換わることは、少なくとも近未来ではありえないと思うとの説明がありました。

 

また、量子コンピュータのタイプ(超電導量子ビット型(現在の主流)、イオントラップ型、光子型、量子ドット型)について説明があり、世界初の固体素子量子ビットの制御に成功(1999年)した、東京理科大学の蔡兆申教授と東京大学の中村泰信教授の紹介もありました。

 

最後に、「実用化へ向けての主な課題」として、①量子ビットの堅牢性 ②エラー耐性 ③適切なアルゴリズムの開発の3つをあげ、誤り耐性をもった、実用的な万能量子コンピュータの実現には、少なくとも10~20年はかかりそうであるとお話しされ、講演を締めくくりました。

 

講演後、多くの質問に堺先生が1つ1つ丁寧に回答してくださいました。今回の講演では、量子コンピュータの基礎的な原理について、難しい概念を分かりやすく説明していただき、参加者の科学技術への関心を高められたことと思います。

 

参加者からは、「今まで知らなかったが聞いたことのあった量子力学について非常に奥の深いもので、まだまだ課題がたくさんあるとても面白い分野だということが分かり、勉強してみたいと思いました。」「量子コンピュータという言葉は聞くが、基本的なことを分かっていないことが多い。基礎的な原理の説明に取り組まれたのが良かった。」「講師が非常に気さくな方で、親しみやすく思いました。説明も分かりやすかった。」などの感想が寄せられました。

 

講演の様子

 

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